2012年11月9日

『ひつまぶしとスマホは、同じ原理でできている』理央周・著 vol.3034

【名古屋に学ぶ、ビジネスのヒント】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532261740


独立して初めて講演をしたのは、じつは名古屋でした。

現地で活躍する経営コンサルタントの方に言われたのは、「名古屋でうまくいったら、商売はどこでもうまくいくよ」というひと言。

「なぜですか?」と聞いてみたところ、「名古屋人は、渋ちん(=物や金を出し惜しみする)だから」という答えが返ってきました。

実際、東京で成功した会社やお店が、名古屋をスルーして大阪へ進出することはよくあるそうです。

では、どうすればそんな手強い名古屋人の心をつかめるのか?

そのキーワードが「お値打ち」です。

ジュピターテレコム、アマゾンジャパンなどでマーケティングに従事し、現在名古屋で活躍するコンサルタントが書いた、『ひつまぶしとスマホは、同じ原理でできている』によると、「お値打ち」とは、以下のような意味だそうです。

<名古屋でよく使われる「お値打ち」という言葉は、単に安いとか値引きしてあるという意味だけではなくて、「値段の割にお得感がある」、つまり「費用対効果が高い」という意味を含めて使われることが多い>

では、この「費用対効果」の効果とは何なのか? 人が思わず費用のことを忘れて熱狂する商品には何が共通しているのか?

『ひつまぶしとスマホは、同じ原理でできている』は、まさにその商品開発のヒントを教えてくれる一冊です。

タイトルにもあるひつまぶしや、手羽先の唐揚げ、かの有名な喫茶店の「モーニング」など、名古屋特有の商品やサービスを紹介し、そこからイノベーションのヒントが学べるよう工夫した、ライトな読み物に仕上がっています。

プランにマッサージまで含んでしまった刈谷市の「引越一番」、名古屋3大喫茶チェーンのひとつ、「コメダ珈琲店」、台湾ラーメンを開発した「味仙」など、事例もローカル色いっぱいで、新鮮味があります。

どちらかというとエッセイ風の読み物で、深く学ぶには物足りない部分もありますが、マーケティングのヒントとして、楽しく読むことができます。

名古屋に出張するビジネスマンは、ぜひ新幹線のなかで読むことをおすすめします。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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名古屋でよく使われる「お値打ち」という言葉は、単に安いとか値引きしてあるという意味だけではなくて、「値段の割にお得感がある」、つまり「費用対効果が高い」という意味を含めて使われることが多い

よく「思いつきとひらめきの違いは?」という問いを耳にする。私は、その違いは、心の奥底に課題解決したいという思いがあるかないかによるのだと思う

名古屋めしの多くはゼロから創り出されたというよりも、以前からあるおいしいものを組み合わせてユニークな味を創り出している。いわば、リミックス=Remixと言える

意外なコンビネーションを発想し生み出した商品は、十分にイノベーティブ

ひつまぶしも3つの機能を1つにまとめている

シュンペーターは、生産とは労働力やモノなどの生産要素を結合することだとして、動態的変化の原動力になる新しいものを生み出すには、当然と言えば当然であるが、モノや力の新しい結合によるべきだと述べ、これを「新結合」と呼んでいる

◆刈谷市に本社を置く「引越一番」の「ほっこり荷心プラン」10大特典として、梱包や開梱のお手伝いにとどまらず、引っ越し後の家具の無料配置換えに加え、なんと癒しのマッサージを用意したのである

もうけたいなら、もうけを考えすぎない

東京では、カット、シャンプー、ブローでセット料金になっているらしく、髪を巻いてほしければ、客が「巻いてください」と依頼するのだそうである。だが名古屋では、「巻き」もセット料金に含まれていた。さらに、髪を巻くためのカーラーなども、店内を一見しただけでわかるほど東京の美容院よりも多かったらしい

「おお、そう来たか」を実現させるには、なにより柔軟な発想、一直線上でないものの考え方を受け入れる発想や度量が必要

会議などで、参加者が自由に発言できる雰囲気をつくるコツとして、参加者の意見を聞いたり、表明させたりする際には、まず経験値の低い人から順に指名していくと成功する

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『ひつまぶしとスマホは、同じ原理でできている』理央周・著 日本経済新聞出版社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532261740

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◆目次◆

序 章 すべてのヒントは名古屋めしにある
第1章 ひつまぶしとスマホは、同じ原理でできている
第2章 名古屋の喫茶店が、長居をしてほしい理由
第3章 人気商店街の秘密は、嵐を見ればわかる
第4章 台湾ラーメンは、何を破壊したのだろう
第5章 日本そば屋は、なぜコーヒーを出さないのか
第6章 ビジネスの成果は、ハンコの数と反比例する

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