2012年10月23日

『地域をプロデュースする仕事』玉沖仁美・著 Vol.3017

【地域プロデューサーというお仕事】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/486276133X

地方出身者であれば、誰しも「地元のために貢献できる仕事があればやってみたい」と、一度は思ったことがあるはず。

じつは、あるんです。そんな仕事が。

本日ご紹介する一冊は、リクルート在籍中、地域活性部の「地域プロデューサー」として活躍した著者が、「地域プロデューサー」の仕事の全貌と、プロジェクトを進める上での問題点、エピソードなどを述べた一冊です。

著者の玉沖仁美さんは、有名な島根県海士町の「さざえカレー」プロジェクトをはじめ、高知県「目指せ!弥太郎 商人塾」、ブランドジャガイモ「インカのめざめ」を使った沖縄県座間味村のプロジェクトなど、数多くのプロジェクトを成功に導いた人物。

しかし、その成功への道のりは、決して平坦なものではなかったようです。

まず大変なのは、一般のプロジェクトリーダーが予算、人事権などを握っているキーパーソンなのに対し、「地域プロデューサー」は、あちこちに分散する権限をまとめて交通整理・進行管理をするのがメインのお仕事だということ。

つまり、完全な黒子であり、さまざまな関係者の間で板ばさみにあう、厳しいお仕事なのです。

本書には、著者が「さざえカレー」プロジェクトで当初失敗し、非難されたエピソード、選んだアドバイザーにハメられかけたエピソード、コンサル批判の洗礼を受けたエピソードなど、数多くの失敗エピソードが登場し、「地域プロデューサー」の大変さを教えてくれます。

しかし、関係者と力を合わせてプロジェクトを成功させる感動、その地域への貢献の度合いなどを考えると、やはりやりがいのある仕事と言えそうです。

ノウハウなどはほとんどなく、ビジネスヒントを求める向きにはおすすめしませんが、「地域プロデューサー」の仕事に興味を持っている方には、その実体が垣間見える興味深い一冊です。

「第2の人生は地域のために貢献したい」と考えるビジネスパーソンに、ぜひおすすめしたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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一九七〇代に起こった二度のオイルショックによって経済が停滞すると、地域振興は次第に地場産業の育成や観光などソフト重視へシフトしていきます。ここで代表的なのが、大分県の「一村一品運動」です。当時の平松守彦知事の提唱により、一九八〇年から地域の特産品を自主的につくる運動が展開されました。これによってシイタケ、カボス、ハウスみかん、豊後牛、関あじ、関さば、大分麦焼酎など、三〇〇以上の特産品が生まれ、これらの生産額は二〇年後には年間一四〇〇億円を超えるまでになったそうです

再び地域振興の主流は地域固有の資源(モノ)を活用した地場産業創造など、ソフト重視の路線に戻ってきています

◆地域プロデューサーの役割
1.チームをつくる
2.地元の人を主役にする
3.事務局機能をつくる

商品づくりの参考として、あちこちのご当地カレーを取り寄せて食べていた中に、広島の「かきカレー」がありました。パッケージを見ると、製造するのはジャムなどで有名なアヲハタの子会社でした。その「かきカレー」は、パウチに入っていてもかきがプリプリしていてとてもおいしいのです。「ここはすごい技術を持っているはずだ」と考え、人をたどってその会社の方を紹介してもらいました

昼間に各所を見て回り、一日目の夜に住民の方とディスカッション、二日目の夜に梅組内でディスカッションをしてその地域のキーワードを集め、最後に梅原さんがそれを集約したワンフレーズを決めます。たとえば、青森県津軽半島では「ストーブ列車で雪の中へ」というものになりました。個人的に印象に残っているのは、秋田県男鹿半島の「なまはげに叱られたい旅」

長い人生の中の数年ぐらい上司が「行ったほうがいい」という場所に行くのもいいのではないか、そう思えるようになった

この頃からなぜかシイラが採れなくなり事業はストップ。海産物、特に天然の魚を使う特産品の開発は難しいことを知りました

次に、具体的なモノづくりの段階です。私はここでは、「どうして(想い)+いつ、どこ、誰、どう」という風に分解することをお勧めしています

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『地域をプロデュースする仕事』玉沖仁美・著 英治出版

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/486276133X

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◆目次◆

chapter1 地域振興の課題と地域プロデューサーの役割
chapter2 大失敗を超えて生まれたヒット商品
     ──島根県海士町「さざえカレー」プロジェクト
chapter3 全国23の半島行脚で知った地域の底力
     ──旧国土庁「半島地域交流条件整備モデル事業」
chapter4 柔軟な方向転換で成果を生む
     ──沖縄県座間味村「インカのめざめ」&「エコツ
     ーリズム」プロジェクト
chapter5 ヨソ者だからできること
     ──沖縄県国頭村「国頭ツーリズム協会」プロジェクト
chapter6 任せて育てる人づくり
     ──沖縄県「沖縄県キャリアセンター」プロジェクト
chapter7 座学と実践で磨く産品開発
     ──三重県「三重ブランドアカデミー」と
     高知県「目指せ! 弥太郎商人塾」
chapter8 地域をプロデュースする「姿勢」と「スキル」
おわりに 幼稚園とリクルートで学んだこと

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