2012年10月31日

『オープン・サービス・イノベーション』ヘンリー・チェスブロウ・著 vol.3025

【「コモディティの罠」を避けるコンセプト】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484121131

本日の一冊は、オープン・イノベーションの父として知られる、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス教授、ヘンリー・チェスブロウによる一冊。

グローバル競争の時代にあって、どの企業も持続的な競争優位性を保つことができなくなってきていますが、それは、著者に言わせると、単に製品中心のイノベーションを行っているから。

どんなに良い製品を作っても、それが単に製品である限り、優位性は長続きしません。

著者はその例として、2004年秋に発売された、モトローラの大ヒット商品「Razr」(レーザー)の例を挙げています。

<二〇〇四年秋にこの機種が発売されたとき、かつてないほどスリムな超薄型で、かっこいいデザインが話題になった。販売総数は五〇〇〇万台以上。誰もが認める大ヒットで、モトローラは携帯電話のトップメーカーとなった。ところが三年後、レーザーのニューモデルとなる後継機種はあまり注目されなかった>

著者によれば、この失敗は製品の失敗ではなく、<製品中心のイノベーションを考えたから>。

大切なのは、<ユーザー体験が広がるようなアプリケーションやサービスに対するイノベーションに力を入れる>こと。

<製品を内部・外部のイノベーションを取り込むプラットフォームへと変換し、そのプラットフォームを中心に幅広い付加価値サービスを加える>ことで、企業は価格競争から抜け出せる、というのです。

著者いわく、<勝者となるのは、かっこいい機種をデザインした者ではなく、いちばん多くのサポートを手に入れて、ユーザーに最高の体験を提供できる者>。

そういう意味で考えると、先頃のiPhone向け自社製地図アプリの不具合は、アップルらしからぬ、手痛い失敗だったと言えるでしょう。

本書には、顧客の体験を広げるために、どうやって企業がオープン・イノベーションを起こせばいいのか、その方法論が事例とともに書かれています。

競争が激しくなり、ビジネスモデル転換を考えている企業経営者には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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製品中心からサービス中心へ、つまりモノづくりからコトづくりへとシフトしていく中、我々はビジネスをサービスとして捉えなければならない

コモディティ・トラップを回避して、成長への解決策をみつけるにはサービス分野でのイノベーションがキー

先進国の成長をこれまで牽引しつづけてきたのは実は、サービス分野だ、という事実に目を向けよう。米国では、一世紀前には経済のほんの一部だったサービス分野が、今や国内総生産の八〇%以上を占めるまでになった。OECD加盟の上位四〇カ国のうち三五カ国の国内総生産の六〇%以上がサービス産業だ

サービス・イノベーションは、ビジネスを発展させ、コモディティ化のプレッシャーを払いのけるための明確かつ持続可能な手段だ。製品を内部・外部のイノベーションを取り込むプラットフォームへと変換し、そのプラットフォームを中心に幅広い付加価値サービスを加えることで、企業は容赦ない価格競争から抜け出せる

勝者となるのは、かっこいい機種をデザインした者ではなく、いちばん多くのサポートを手に入れて、ユーザーに最高の体験を提供できる者なのだ

自動車の移動サービスの多様な形態を知ることで、製品中心からサービス中心のビジネスアプローチへの変換で大きな役割を果たす「稼働率の差」という未知の要素が明らかになる。固定費用を減らし、利益を増大し、投資に対する高いリターンを促すために稼働率を管理することは、これまであまり知られていなかった。実は資産をもっと有効に活用することで、低価格で良質なサービスを提供しつつ利益を上げられるのだ

エル・ブリの場合、利益は追求しない企業の研究開発部門のような役割を担っている。利益をもたらすための知識を探求しているわけだ。そうすれば自店の資源を誰かと共有することで利益となる(中略)わずか数社との、提携品目を限定した、深い関係のパートナーシップを基にしたエル・ブリの共同ブランド提携が、エル・ブリというブランドの維持を可能にした

ライセンス許可を与えなければ、他社が同じように優れた技術を開発する可能性が高い。一人勝ちにならないなら、ライセンス収入を得たほうがいい(P&Gのスティーブ・バジェット)

ビジネスモデルをイノベートする最後の方法は、より大きなビジネスネットワーク、つまりはエコシステムにつなげて、理想的には自社のネットワークを構築することだ

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『オープン・サービス・イノベーション』ヘンリー・チェスブロウ・著 阪急コミュニケーションズ

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484121131

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◆目次◆

第1部 イノベーションと成長を促すフレームワーク
第2部 オープン・サービス・イノベーション

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