2012年9月1日

『愛されるアイデアのつくり方』鹿毛康司・著 Vol.2965

【エステー式ヒットCMの法則とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4872905660

本日の一冊は、広告業界で常識外れの「連続ドラマCM」を展開し、殿様が出てくる「消臭プラグCM」、緑色のとぼけた熊が出てくる「ムシューダCM」、支店長が踊る「消臭ポットCM」(売上前年比164%、好感度ランキング生活雑貨部門で1位に輝いた)などでヒットを飛ばした、エステーの鹿毛康司さんによる一冊。

<「愛されるアイデア」をつくる「11の法則」>を紹介したものですが、「ものすごいノウハウ」を期待したら肩透かしを食らいます。

本書で学ぶべきは、著者の視聴者・消費者への配慮と、彼らの本音を見極める洞察力。

視聴者と本気で共感し合うために、どう考え、悩めばいいか、その指針が得られる内容です。

それもそのはず、著者はあの「雪印事件」の際に謝罪広告を作った経験があり、被害者に直接会って謝罪をしたこともあるのです。

また、エステーに入ってからも、作ったCMの内容が原因で身体障害者からクレームを受けたり、東日本大震災時の難しい広告活動を成功に導いたり、数々の修羅場を経験しています。

津波を連想させないために「水を映さないこと」、震災の現場で苦しむ人に配慮するため、撮影している人が「斜め上から撮影しないこと」など、実際の広告作成現場で著者がどんなところに腐心しているか、リアルに伝わってくる内容です。

そして、もっとも感銘を受けたのは、苦しい状況下で部下を責めず、チャレンジさせたエステー経営者の度量。

<その会社の「広告力」は、「社長力」を超えることはできない>とは、蓋し至言だと思います。

企業活動とは、突き詰めて言えば、社会とのコミュニケーション。

そういう意味で本書は、多くの気づきを与えてくれる一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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多くの人々が、競合と大差ない「差別化」をつくろうとして「心」を忘れた戦いをしているのではないだろうか。しかし、もしもお客様に、会社や商品を愛していただけたらどうだろう?きっと、「差別化」といった戦略よりももっと強い「価値」を生み出し、競争力を手中にできるに違いない

「テニスのCMを拝見しました。私、身体障害者手帳を持っております。特に何かが言いたいわけではありません。ただ、悲しい思いになりました」

その会社の「広告力」は、「社長力」を超えることはできない

あの「ムシューダ~テニス篇」の放映を中止したときのことだ。あのとき、僕は憔悴し切っていた。そして、社長室にお詫びに向かった。あの件で、社内でいちばん傷ついたのは僕ではない。社長だ。社長こそが最終責任者なのだから、当たり前のことだ。だから、僕はいたたまれない気持ちだった。社長は、じっと僕の話に耳を傾けていた。そして、静かにこう言った。
「わかった。お前は反省するな。お前はギリギリのボールを投げて、これまで成功してきたんだ。反省したら、もうボールが投げられなくなる。いいな?」
言葉もなかった。ただ、もう二度と、この人を傷つけるようなことをしてはいけないと思うばかりだった

現場を取り仕切る石井監督にふたつのお願いをした。ひとつは「水を映さないこと」。もちろん、津波を連想させるからだ。
もうひとつは「斜め上から撮影しないこと」。なぜなら、津波の様子を伝える報道映像は、必ず高台から俯瞰した構図になるからだ。もちろん、それはやむを得ないことだ。しかし、その構図は、撮影している人が「安全地帯」にいることを表現していることにもなる

ひととおりの調査が終わって会場から出てきた調査マンに、こう頼んだ。「帰り際に、好きな商品をもって帰ってもらってください」(中略)いちばん人気だった「A商品」を手にする人はだれもいなかった

企業人は、絶対にお客様と同じ「目線」をもつことはできない

「どのくらいの期間、液はもつのかしら?」という疑問には、「60日!」というシンプルな言葉が響いた。
「電気ってどれくらい使うのかしら?」には、「1か月約20円!」がヒット

何百のコピーをつくっただろうか。ついに、ひとつのコピーがお客様の合格を得たのだ。「つけっぱなし安心設計」

「コンセプト」「インパクト」という言葉は使用禁止

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『愛されるアイデアのつくり方』鹿毛康司・著 WAVE出版

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4872905660
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◆目次◆

プロローグ 少年が歌い出した瞬間
第1章 「奇策」こそ王道だ
第2章 とことんお客様と向き合う
第3章 アイデアが生まれる「場」をつくる
第4章 アイデアとはドラマである

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