2012年4月11日

『「解」は己の中にあり』高井尚之・著 Vol.2821

【老舗企業ブラザーはどう変わったか】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062175347

本日の一冊は、「カンブリア宮殿」にも登場して話題となったブラザー工業の代表取締役社長、小池利和さんの経営哲学を、経済ジャーナリストの高井尚之さんがまとめた一冊。

ブラザー工業といえばミシンの老舗ですが、実際には、100年を超える歴史の中で、少しずつ事業をミシン専業から編み機やタイプライター、プリンターなどの情報機器、複合機や通信カラオケなどにシフトしてきています。

グローバル化に成功した日本企業の事例というのは、コマツをはじめ、ぼちぼち出てきていますが、こういった老舗メーカーの変革ストーリーは、低迷する日本企業を奮い立たせる、良い刺激になると思います。

ミシン全盛時代のライバルが軒並み消え、なぜブラザー工業だけが生き残ったのか。

そこには、同族企業の中で異彩を放つ小池社長の采配があったわけですが、本書はその小池社長の生い立ち、人となり、経営の実際に迫った一冊です。

ブラザーの変革エピソードと、それを支えた社長の哲学、さらに数多くの経営者をインタビューしているジャーナリストの視点が盛り込まれており、ケーススタディとして参考になる一冊です。

ビジネス書としては、もうちょっと突っ込んで欲しかった部分もありますが、これだけでも十分、経営の参考になります。

現役の経営者・経営幹部はもちろん、将来起業を考える方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「世の中で生き残る者は、身体の大きい者でも、強い者でもなく、変化に対応できた者のみです―私はブラザーグループを変化対応力に優れ、価値を生み出すチームにしたいと考えています」

産業機器の分野では小型工作機械が現在、中国にある大手製造請負企業などに向けて伸びています。急拡大する携帯電話やスマートフォンを含むモバイル端末の加工に欠かせない機械として取引が急増したのです。この分野での拡大はめざましく2010年3月期に152億円だった売り上げが、11年3月期には一気に423億円となったほどです

アジアは日本からの生産の移管は早かったのですが、これからは「生産地」の位置づけに加え、「巨大消費市場」としてビジネスを拡大していかなければなりません

理論が求める基準が高くて、組織スタッフの理解力や実行力に差がある場合は、消化不良に陥るだけ

リスクを将来に持ち越さない

ファンド側が強調したのは「中核の情報機器事業に集中して他の事業を売却しろ」というものだ。だが小池は受け入れなかった。過去の歴史や歴代経営者の経営手法も勘案すると、異なる事業を持つことがリスクヘッジにつながると判断したからである

国内事業でも、80年代になると長く同社の売り上げを牽引してきたミシン事業に陰りが出た。かつては専業主婦に人気でどこの家庭にもあったミシンだが、働く女性の増加、安価で品質のよい既製服の普及、それに比例する家庭での洋裁や和裁の衰退といった複合要因で売れなくなっていく。ブラザーの家庭用ミシン事業を支えた「訪問販売」という手法も、昼間の在宅率が下がったり、量販店が増えたりするにつれて機能しにくくなった

未知の分野での失敗は、「会社の授業料」

綿密な調査よりも試作品の投入

「お値打ち感」を出し続ける

ブラザーの小型複合機は、資金や仕事スペースが限られるSOHO層から大きな支持を得た

ずば抜けた技術に頼るよりも、組み合わせの妙で勝負

「これだけ変化の激しい時代なので、何かのキッカケで違う業界にパッと入れるチャンスもある。そこで自分たちのやっている領域はここだからと、制限しないほうがいい」

先進国に比べて人件費が安く、「世界の工場」を担う国に向けて工業用ミシンの拡大もめざす

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『「解」は己の中にあり』高井尚之・著 講談社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062175347
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◆目次◆

第1章 「交流によるチーム一丸」は、世界の共通語
第2章 心は熱く、判断は冷静に
第3章 米国仕込みの「展開力」
第4章 時に軽佻になり、バランス感覚を保つ
第5章 「ブラザーらしさ」とは何か
第6章 前進なくして未来なし

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