2011年12月31日

『世界経済「大動乱」を生きのびよ』藤巻健史・著 Vol.2719

【来年の日本経済は?】
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本日の一冊は、かつてモルガン銀行時代「伝説のトレーダー」と呼ばれ、当時、東京市場で唯一の外銀日本人支店長に抜擢された著者が、2012年の日本経済を予言した一冊。

「週刊朝日」の連載をまとめ直し、最新動向を加味した内容ですが、ここで描かれる日本経済の未来は、あまりにも悲惨です。

もっとも直感的にわかる部分を引用してみましょう。

<国債未達から起きる第二の敗戦でも同じ程度の衝撃が走ると思うのです。今までの世界はガラガラポンでしょう。1千兆円という国の巨額負債がインフレ税でほぼチャラになる。当然、今まで皆さんが貯めた銀行預金も実質的に価値はなくなります。預金が蒸発するのです。IMF(国際通貨基金)が入ってきて、財政を立て直すでしょう。48兆円しか歳入がなければ48兆円しか使えない、すなわち歳入にあった歳出しかできないことになります。考えてみれば当然のことですが、年金支給も介護保険の諸手当も大幅カットです。当面、今の生活とは様変わりの貧乏な生活です。失業者も街にあふれます。暗い時代です>

以前から、増税とインフレのダブルパンチのリスクは叫ばれてきましたが、本日報道された「税制抜本改革案」によると、2014年4月に8%、2015年10月に10%の消費税となる見通し。

いずれにしろ、増税はほぼ確定と言っていいでしょう。

とすると、後の懸念は、インフレ。

本書では、われわれがいかにしてインフレを避けるべきか、著者の考え方と、具体的金融商品が示されています。

やや米国に寄り過ぎの感もありますが、2012年以降の日本経済の見通しと、その対処法を示している、という点で押さえておきたい一冊だと思います。

高齢者や富裕層は、資産防衛のヒントとして、若いビジネスマンはキャリアのヒントして、ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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米国は00年に比べて、名目GDPが1・5倍に膨れあがっています。日本が同期間に500兆円から480兆円に縮小してしまっているのとは大違いです

資産効果こそが景気を左右する

米国では、政治家も経済人も資産効果の重要性を認識している上に、時価会計が徹底していますから、プラスの資産効果を受けやすい状態にあります

米国債は高い価格を維持しています。11年11月に入って、ギリシャがユーロ圏救済策を受け入れるという期待感から、資金の避難先としての米国債の需要は一段落し、価格はわずかに下落しました。しかし、世界経済に何か不安定要素が発生すると米国債が買われる、という構造は崩れません

米国は格差を是認していることが強さの源泉の一つ

ギリシャ問題を解決するには(1)デフォルト宣言(2)ユーロからの離脱(3)国土売却、または以上の併用が考えられます

為替は国にとってきわめて重要な事項なのです。それを理解している政治家がいないのが日本の不幸だと思います

今の中国は巨大な人口を抱え、完全雇用からは程遠く、米国の圧力をはねつけるだけの軍事力もあります。ですから、当面、急激な人民元切り上げを避けるでしょう。したがって、中国は世界の工場であり続けます

ウォンの大幅安により韓国は国際競争力を回復し、国力を取り戻した

ここで注意を喚起したいことがある。日本はもう「貿易立国ではない」という点だ。黒字額は「貿易収支」と「サービス収支」を合計すると6・5兆円なのに対して、「所得収支」が11・6兆円と、よほど大きい。数年前からの事象だ。所得収支とは、過去に貿易黒字などで貯めた資金を海外に投資して得た配当金や利子の収支である

少し先のことを考えると不動産投資はとてもいいのですが、不動産を裸で買うのは危険で、ぜひ「外貨投資」を保険として同時に行う必要がある

財政破綻になれば、日本は社会的混乱に陥り、国民は財産を失い、年金も実質パーになる、と今までに書いてきました。しかし大きな被害を受けるのは、我々高齢者です。幸か不幸か若い人たちは、失うべき財産がなく、年金の掛け金もほとんど払い込んでいません。経済学者シュンペーターが言うところの「創造的破壊」が起きて、若い人たちが活躍する頃には、歳入と同じ額しか支出をしないまともな国ができあがっていると思うのです

実際に海外で働くか働かないかを問わず、将来の日本は円安を武器に世界に飛び込んでいくのです。ですから「若者は英語を学ぶ必要がある」と強く私は言いたい

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『世界経済「大動乱」を生きのびよ』藤巻健史・著 朝日新聞出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/402250921X

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◆目次◆

I 2012年の世界経済を読む
II 大増税時代の日本
III これからの資産防衛術
IV 資本主義国・日本の再生
V 未来を見据えて

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