2011年11月27日

『実戦ボトムアップ・マーケティング戦略』 アル・ライズ、ジャック・トラウト・著 Vol.2685

【ひさびさの本格マーケティング書!】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4820718274

本日の一冊は、世界的マーケティング戦略家、アル・ライズ、ジャック・トラウトによる待望の邦訳。

戦略を考えた後で戦術を考える、というのはビジネスの世界では常識中の常識ですが、この『実戦ボトムアップ・マーケティング戦略』では、その常識に真っ向から異議を唱えています。

著者らの主張は、「戦術が戦略を決定する」。

なぜかというと、戦略に固執した結果、ビジネス上、次のようなデメリットがあるから。

・失敗を受け入れることを拒絶してしまうこと
・成功を利用することを渋ってしまうこと

ビジネスの現場では、うまく行かない商品・戦略をひっくり返してしまうようなアイデアやネーミング、コンセプトが生まれることが多々あります。

本書では、その「戦術」を拾い上げ、一貫性のある戦略として昇華させることを提案。

眠くなるという副作用を逆手に取り、「世界初!夜飲む風邪薬」として成功したヴィックス社の「ナイトクル」や、宣伝担当者のひとりが雑誌広告で使ったキャッチコピーを巧みにネーミングに活かし、成功したレナウンインクスの「通勤快足」など、さまざまな事例を紹介しながら、「ボトムアップ・マーケティング戦略」の要諦を説いていきます。

訳者の丸山謙治さんのご尽力によるものだと思いますが、適宜、日本の事例をはさみ込んでおり、じつに充実した内容。ひさびさの本格マーケティング書ということで、マーケター、経営者は必読です。

お客様に媚びることがマーケティングと勘違いしている最近のSNSマーケティング本に疑問を感じた人は、ぜひ読んでみてください。

————————————————————
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
————————————————————

コミュニケーションの戦術がマーケティングの戦略を決定すべきだ

コロンブスはインドへの近道を発見したかった(戦略)ので、東ではなく西に向かって航海した(戦術)。その結果、探し求めていたインド大陸はついに発見できず、失敗者と自分を卑下する中で最期を迎えた。もし彼が、戦術が戦略を決めることを容認していたら、アメリカ発見という、インドへの近道を発見することよりも遥かに大きな偉業を成し遂げたことを理解したかもしれない

唯一の確実な戦術とは、最初に顧客の心の中に入っていく方法を見つけ出すことだ

戦術とは、顧客の心の中で競合に対して優位性と知覚される斬新な切り口である

ドミノ・ピザのトム・モナハンがとった戦術は、ピザの宅配だけに集中することであった

戦術によって戦略が決定し、その後に戦略が戦術を動かすのである

戦術が戦略を決定するのであれば、マーケティングプロセス全体において欠くことのできないステップは、「現場に出向く」ことである

現場に出向く前に、自問すべきことが一つある。情報を探しているのか、あるいは裏づけを取っているのか、ということである

クアーズは大規模な広告キャンペーンでビール市場の中にライトというカテゴリーを他社に先駆けて創り出すことができたのに、そうはしなかった。そうしたのは、ミラーだった。それにより、ミラーは、クアーズとクアーズライトの二つのブランドを合計してもそれを上回る販売を達成した

マーケティング戦略における勝者と敗者を観察すると、成功した製品の多くが市場の主流に逆行したものであることがわかるはずだ

「圧倒する量となるように常に軍隊を集中せよ。これが原則である。何よりもまず可能なかぎり、狙いを定めることを常にせよ」とクラウゼヴィッツは述べている

「直火で焼きます。揚げません」は優れた競争志向の戦術である。素早く、そして経済的に真似できないからだ

今日のマーケティングはコンセプトの戦いであり、製品ではない

もし戦況が有利でないならば、戦場を変えることだ

コミュニケーション戦術上のターゲットは必ずしも市場と同じである必要はない

————————————————
『こんな時代でも伸び続ける「営業マンの秘訣」』トム・ホプキンス・著 日本経済新聞出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4820718274

————————————————-

◆目次◆

第1章 戦術が戦略を決定する
第2章 現場に出向く
第3章 時流を観察する
第4章 焦点を絞る
第5章 戦術を見出す
第6章 戦略を構築する
第7章 変更を加える
第8章 戦場を変える
第9章 戦略を試す
第10章 戦略を提案する
第11章 経営資源を獲得する
第12章 実施計画を始める
第13章 軌道に乗せる
第14章 損失を断ち切る
第15章 正々堂々と戦う

この書評に関連度が高い書評

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー