2011年6月20日

『世界一大きな問題のシンプルな解き方』ポール・ポラック・著 Vol.2525

【2000万人の貧困をなくした大胆な方法】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862761062

「自腹を切らなければ、人は真剣に取り組まず、発展は望めない」

どうやら、発展途上国においても、同じことがいえるようです。

本日ご紹介する一冊は、途上国の農家に安価な足踏みポンプや灌漑システムを販売し、世界中の貧しい小規模農家を救った著者が、その問題解決の手法を明らかにした一冊。

これまでに出された多くの自己満足系社会起業本とは異なり、ビジネスの基本に根ざした、きわめてまっとうな問題解決の書となっています。

本書から学べるのは、現場を見ずに問題解決はできないということ(東日本大震災に関しては、現場を見てもいない人々がいろいろと論じている)、現状に立脚した現実的な問題解決法が求められるということ、大きく考えなければ解けない問題があるということ。

最初から数百万人、数千万人の問題解決を考えるという著者のスケール感には驚きますが、本書の事例からは、相手のためを徹底的に考え、ロジカルに解を導くことの大切さが実感できます。

そして、人が貧困から脱却するには、やはり自分で投資するしかないという現実。

本書では、寄付やその他の慈善活動がいかに成果につながらないか、その事実と理屈を紹介しています。

現在、多くの日本人は「お金のあるところ」を求めてビジネスを考えていますが、大事なのは、「顧客の創造」。

本書は、ビジネスマン・起業家に、未来の市場を育てることの大切さを教えてくれています。

問題を解決するために、立ち上がること。

やや書き方には冗長な部分がありますが、起業家の原点を感じられる、とても刺激的な一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「イチゴ摘みで一日に一〇ドル稼げるのなら、イチゴ畑の主人はいくら稼げるのだろう」私はこのとき、イチゴ事業を始めようと決心したのだ

さまざまな病気の発生と流行において、貧困が大きくかかわっている(中略)貧困と、それを終わらせる方法を学ぶことは、すべての医学部と精神科のカリキュラムに基礎として採り入れられるべきだ

◆著者が農村の貧しい人たちから学んだ四つのポイント
1.貧しい人たちが貧困状態にある最大の理由は、十分なお金を持
っていない、ということだ
2.世界で極度に貧しい人たちのほとんどは、一エーカーの農場か
ら収入を得ている
3.高付加価値で労働集約的な作物を育てる方法がわかれば、貧し
い農民たちはもっとお金を稼げる。たとえば、シーズンオフの
果物や野菜を育てるのである
4.そのためには、非常に安価な灌漑装置、良い種子と肥料を手に
入れる必要がある。利益の出る価格で作物を売れる市場にもア
クセスできなければならない

◆現実的な解を導く12のステップ ※一部紹介
1.問題が起きている場所に行く
2.問題を抱えている人と話し、その話に耳を傾ける
7.すでに誰かがやっているかどうか調べる
8.目に見えて良い影響をもたらし、大規模化できる手法を採る
(少なくとも一〇〇万人が活用できる大きな生活改善につながる手法)
9.具体的な費用と価格目標を決める
10.現実的な三カ年計画に基づいて実行する
11.顧客から学び続ける

貧困から抜け出すには、人は自分自身のお金と時間を投資しなければならない

「私が貧しいのは、もっとお金を稼ぐ方法を見つけ出せないからですよ」

◆安くデザインするためのガイドライン
1.道具の重量を厳しくダイエットさせる
2.余分なものは付けない
3.時代をさかのぼってデザインすることで、未来へ進む
4.最先端の材料で昔のものに色を添える
5.レゴ・ブロックのように、無限に拡張できるものにする

農村に住む貧しい人々のほとんどが、現金は不足しているが労働力には余裕があるので、お金の代わりに労働を活用できるチャンスがあればどんなものにでも飛びつく

足踏みポンプを求める小規模農家の顧客は、七年使える製品よりも二年使える製品のほうを好む。価格が安いからだ

ムハマド・ユヌスと彼が取り組んだマイクロクレジットの革命により、資金の借り入れは強力な武器となることがわかった。だが、どんな事業においても、資金の借り入れは事業の成功要因のほんの一つに過ぎない

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『世界一大きな問題のシンプルな解き方』ポール・ポラック・著 英治出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862761062

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◆目次◆

日本語版への序文 遠藤謙(マサチューセッツ工科大学 D-Lab講師)
序章 答えは単純で当たり前のこと
第1章 現実的な解を導く12のステップ
第2章 3つの誤解
第3章 すべては「もっと稼ぐこと」から
第4章 残りの九〇%の人たちのためのデザイン
第5章 新たな収入源を求めて
第6章 水問題を解決するイノベーション
第7章 一エーカー農家から世界が変わる
第8章 主役は貧しい人たち
第9章 スラムの可能性
第10章 貧困と地球
第11章 私たちには力がある
第12章 バハドゥ一家、ついに貧困から抜け出す
日本語版あとがき
解説 槌屋 詩野(日本総合研究所ヨーロッパ)

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