2011年4月28日

『海賊の経済学』ピーター・T・リーソン・著 vol.2472

【ルフィーもビックリ!海賊の経済学とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/475712242X

本日ご紹介する一冊は、三省堂書店本店で見つけた、掘り出し物、『海賊の経済学』。

ジョージ・メイソン大学経済学部教授で、小さな頃から海賊好き、右腕には需要供給曲線の刺青を入れているという一風変わった人物、ピーター・T・リーソンによる一冊です。

海賊といえば、大人気マンガ『ワンピース』を連想しますが、本書を読めば、あのマンガの登場人物たちの行動原理が、じつによくわかります。

トップが利益の大半を奪う、専制的な資本主義のもとで働いていると、つい海賊たちの民主主義的、友愛的平等主義に惹かれてしまいますが、じつは海賊たちは、単に利潤を追求した結果、平等主義に至っただけなのです。

では、なぜ海賊たちはそのような文化を築いたのか?

その答えが、本書に書かれています。

商船船長に傷めつけられた人々が、その100倍、1000倍もの報酬を得られる海賊となり、暗躍する。

海賊のリクルーティングに一役買ったインセンティブのしくみと、海賊船を秩序正しいものにした権力の分割、いまに伝わるしゃれこうべのブランドロゴ、さらにはクチコミのしくみまで…。

海賊条項から明らかになった海賊のマネジメントや、利益配分のしくみなど、さまざまな事実を、気鋭の経済学者が斬る本書。

資本主義への不満から、感情的な議論が巻き起こっている今日ではありますが、だからこそ本書の、「あらゆる場合に最高の効率を発揮するようなマネジメント組織形態なんてものは存在しない」という言葉が、意味を持つ。

やはり経営においては、経営者が自分で考え、自社に最適なしくみを作るしかないのです。

ただ、現在の企業を取り巻く環境、プロフェッショナル集団が増えた現状を考えると、海賊たちの決めたルールやしくみは、きっと参考になると思います。

読み物としても面白いので、ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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権威に対する民主的なコントロールを強化するには、社会は権力の分割を必要とする

船長を選ぶとき、海賊たちは「休暇を投票で選ぶ」、あるいはもっと正確にいうと、自分たちに休暇をくれるような甘い船長を選出しようとするインセンティブはなかった

船長とクォーターマスターは獲物の取り分二人分を受け取る。主甲板長と砲手は一人半分、他の士官は一人と四分の一(その他全員は一人分)

◆統治(ガバナンス)を作り出すときの費用
・意思決定費用
・外部費用

効果的なシグナルの鍵は、それを発信するのがある種の人にとっては他の人よりも高価になるということだ

「しゃれこうべを描いた黒旗は(中略)自分たちが慈悲も情けもかけないことを知らしめるための信号なのである」(ある目撃者の言葉)

海賊の残虐さは口コミ頼みだったから、要求に逆らったらどうなるかを伝え、残虐さの噂を広めてくれる生存者は必須だった

暴力的な商船船長を処罰することで、海賊たちは商船の船乗りの間によい評判を広めた。これはリクルートにも役立つし、商船の船員たちは海賊の攻撃に降伏しやすくなり、そしてお宝のありかを教えるなど、他の面でも船員たちが海賊に協力しやすくする効果もあった

一部の海賊は一味の選抜を非常に厳しく行った。たとえばネッド・ロウは、既婚者を一味には加えなかった。「妻子などという強力な魅力の影響下にある人物など受け入れない、仕事中に里心がついて船を離れ、故郷の家族の元に戻りたくなりかねないからである」

海賊船は、こうした正規の船よりはずっと黒人比率が高く、上述の通り、ときには白人同僚と同じ権利を享受した

市場のすばらしさは、個人のどん欲さを取り入れて、他の人々の欲望に奉仕するようにさせることだ

ものすごく大きな企業の場合、労働者民主主義による意思決定費用は大きくなりすぎて、費用の効率が悪すぎる

あらゆる場合に最高の効率を発揮するようなマネジメント組織形態なんてものは存在しない

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『海賊の経済学』ピーター・T・リーソン・著 NTT出版
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◆目次◆

第1章 見えざるフック
第2章 黒ヒゲに清き一票を―海賊民主制の経済学
第3章 アナーキー―海賊の掟の経済学
第4章 髑髏と骨のぶっちがい―海賊旗の経済学
第5章 船板を歩け―海賊拷問の経済学
第6章 仲間になるか、それとも死ぬか?―海賊リクルートの経済学
第7章 獲物が同じなら払いも同じ―海賊は平等主義者?
第8章 海賊に教わるマネジメントの秘訣
エピローグ 経済学の普遍性

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