2011年2月19日

『わたしが芸術について語るなら』千住博・著 vol.2404

【感動の一冊】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4591122727

土井は大学時代、ギリシアに留学し、そこで古代ギリシア人が希求していた「美」について学びました。

商売の本質が、人々が求めているものを提供することにあるならば、ビジネスパーソンはすべからく、「美」を学ぶべきだと思っています。

なぜなら「美」は、人が求めるもののなかでも、最上に位置するからです。

人は、「美」のために、命や愛までも捨てることができる。

「美」のない生き方や愛、富が嫌われることからも、それがわかると思います。

では、その「美」とは一体何なのか。

それについて、もっともしっくり来る答えを与えてくれたのが、本日の一冊です。

著者は、日本画家として知られ、現在は京都造形芸術大学学長も務める千住博氏。

本書では、その千住氏が、美とは何か、芸術とは何かを論じた一冊。

自身の体験や古今東西の芸術家の話を交えながら、この難しいテーマに真っ向から取り組んだ、じつに読み応えのある一冊です。

本書はもともと児童向けに出されていた本のようですが、正直、読んでいて感動しました。

「美」が生命と直結しているという感覚や、コスメティックと宇宙、日本画の結びつき、そして出自の違うピアノとバイオリンのハーモニーの話…。(ちなみに「コスモス」には、「人間」という意味もあります)

本書が書いているのは、人間の欲求の根源の話であり、その表現の話であり、そしてマネジメントの話でもある。

さらに、ビジネスのヒントとして見ても、

「秩序ある混沌は必ず人を立ち止まらせる」「すぐれたデザインはもっとも無個性なものだ」(グロピウス)

など、珠玉の言葉が満載で、いろいろと気づきがあります。

もしみなさんが、単なる金儲けを超え、人々の心に資する仕事をしたいと願うなら、ぜひ本書を読んで欲しい。

きっと仕事をする上で、生きる上で、とても大切な何かを教えてくれるはずです。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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羊が大きいと書く「美」は、「豊かさ」と関係がある

「美」というのは、生きていくことに大きくかかわっているのです

自然の中に身を置き、筆を持ったときに五感に訴えかけてきた、風の音、温度、匂いなどの目には映らないものを、目で見えるような形にして描いている。これがクロード・モネの作品なのです。クロード・モネの作品を通して、わたしたちが教えられることは、「美術とは、見えないものを見えるようにすること」なのです

メスのくじゃくは、オスが大きく広げてアピールする羽を見て、「力強くて、生きる力に満ちている」「堂々としていて、羽を虫に食われたり病気になったりしていない」などと思うのではないでしょうか?

わたしは、この見返りなどまったく期待せず、惜しみなく降り注がれるもののことを「神」というのではないかと感じました。そして、これこそが美」なのだと、感じることができたのです

お化粧のことを英語で「コスメティック」といいますが、この「コスメティック」の語源はなんだと思いますか? 実は「コスモス=宇宙」なのです。いったい、宇宙とお化粧にどのようなつながりがあるのでしょう。太古の昔、原始の人々は、天然のミネラルや石や粉を身体にぬることで、自然と同化しようとしていました。また、災いから逃れたり、自然のパワーをもらえるといった意識もありました(中略)実は、日本画の絵の具は、このように宝石やおしろいのようにしていた天然の粉なのです。それを、そのままそっくり画面に貼り付けるのが日本画の技法です

美は混沌にある。混沌の中から、あるルールや規律、序列、そういうものを見つけだすときに、美が発見されるのです

秩序ある混沌は必ず人を立ち止まらせる

「すぐれたデザインはもっとも無個性なものだ」(バウハウス創立者、グロピウスの言葉)

画家は見たものを見たとおりにそっくりに描けなくてはお話になりません

東京芸術大学で平山郁夫先生から教わった一番すばらしいことは、とにかく描けても描けなくても毎日アトリエにいなさい、ということでした

ものすごく大切なものを、便利と裏腹に失うのが、文明なんです

ピアノとバイオリンは、用途もちがえば性格もまったくちがう。生まれも育ちもちがうし、だいたいお互いに相手のことを知らずに生まれた楽器たちです。音の大きさも違う。片一方は力いっぱい弾けば本当に遠くまで音が響く、それがピアノです。バイオリンはどんなに力いっぱい弾いて、その音が広がる範囲には限界があります。このふたつが合奏するということは、どういうことなのか。お互いがお互いの音を聴きあうことによって、お互いの引っ込み方、お互いの強調の仕方、お互いの譲り合い、このようなことを考えることによって、そこに調和が生まれる。そして、それぞれひとつずつの楽器が演奏していたのでは到達できなかったような、とても美しい音を奏でることができる

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『わたしが芸術について語るなら』千住博・著 ポプラ社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4591122727

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◆目次◆

第一章 美とは何か
第二章 出会い
第三章 学びから知る
第四章 序列をつける
第五章 混沌から生まれる美
第六章 芸術とは何か

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