2010年12月12日

『世界経済を破綻させる23の嘘』ハジュン・チャン・著 vol.2335

【ノーベル賞に最も近い経済学者、衝撃の提言】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198630682

「知性とは、疑うこと」。これは、何の分野にせよ、学習者には常に求められることではないでしょうか。

本日の一冊は、経済学の未開拓分野を切りひらいた者に与えられる「レオンチェフ賞」を41歳で受賞し、現在「ノーベル賞に最も近い経済学者」と目される著者が、世界経済の通説を覆した一冊。

市場は自由でないといけない、企業は株主の利益を第一に考えて経営されなければいけない、インターネットは世界を根本的に変えた、世界は脱工業化社会に突入した、マイクロクレジットで貧しい国の人々は救われた、教育こそ繁栄の鍵…。

いずれも、ここ十数年、まことしやかに語られてきた主張で、なかにはノーベル賞を受賞した理論、主張も含まれています。

本書では、これらの主張を真っ向から疑い、マクロ統計などを用いながら、検証。

これまで信じられてきた多くの主張を斥け、真に取るべき政策とは何か、企業経営はどうあるべきか、重要な示唆を与えてくれます。

ここに一例を挙げるだけでも、本書を読むべき理由がわかるのではないでしょうか。

・自由市場政策はほとんどの国で経済成長の減速、貧富の差の拡大 をもたらしたが、それを信用拡大が覆い隠してしまった
・株主の利益を最優先する企業は発展しない
・インターネット革命の影響は、洗濯機以下
・生産性向上のスピードが遅いサービス部門のほうが優勢になった
経済では、全体の生産性向上のスピードも落ちてしまう
・マイクロクレジットの問題点がどんどん明らかになってきている

通常、こうした経済本は、単なる教養と捉えられがちですが、本書は、すべてのリーダーが読むべき実践の書だと思います。

なぜインターネット革命が進行中なのにわれわれは豊かになれないのか、なぜ産業のサービスによって先進国が豊かになれないのか、社会起業家の活動が理想に終わってしまうのか。

本書には、その答えのすべてが書かれています。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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政府はつねに介入しているのであり、自由市場主義者にだって誰にも負けないほどの政治的動機がある

専門経営者と株主の同盟、実は会社の他の利害関係者からしぼりとった金によって成立していたのであり、“邪悪な同盟”と呼ぶにふ
さわしいものだった

富める国と貧しい国で賃金格差が生じる最大の理由は、個人の生産性のちがいではなく、移民を抑える政策のせいである。もし誰もが自由に移民できる状況なら、富める国の労働者のほとんどが、たぶん、いや、きっと、貧しい国の人々に取って代わられることだろう。要するに、賃金はおもに政治的に決定されるものなのである

インターネット革命は(少なくともいまのところ)、洗濯機をはじめとする家電製品が起こしたほど大きな経済的・社会的変化をもたらしていない

人間を最悪と設定してしまうと、最悪の結果しか得られない

インフレ抑制政策をやりすぎると、投資が減り、それによって経済成長も削がれる

わずかな例外をのぞけば、イギリスやアメリカをも含めた富裕国のすべてが、保護貿易、補助金などを組み合わせた政策によって富を手に入れた

アウトソーシングされたとたん、それはサービスに分類され、サービスの生産量が実際には増えていないのに統計上増えてしまう

生産性向上のスピードが遅いサービス部門のほうが優勢になった経済では、全体の生産性向上のスピードも落ちてしまう

なぜ、国がちがうと同額で買えるもの(購買力)がこれほど違ってしまうのか? それは基本的には、市場為替レートがおおむね貿易財・サービスの需給によって決まるのに対し、購買力のほうは輸出入されるものだけでなく、その国のすべての財・サービスの価格によって決まるからである

今日のような景気停滞時には、富を下方へと流すことが景気を押し上げる最良の方法となる。貧しい人々のほうが、消費へまわす所得の割合が高いからである

貧しい国を貧しくしているのは、個人レベルでの起業家精神の欠如ではなく、生産技術や発達した社会組織(とくに現代的企業)の欠如のせいである。マイクロクレジットの問題点がどんどん明らかになってきているのも、個人レベルでの起業家精神の限界を示している

富裕国では、高等教育へのこだわりすぎが緩和されないといけない。このこだわりすぎで不健全な学位インフレが発生し、多くの国で高等教育への過剰投資がおこなわれることになるからだ

車を高速で運転できるのは、ブレーキがあるからである(中略)失業のリスクがあったり、ときどきスキルの学び直しが必要になったりしても、それで生活が破壊されないとわかっていれば、人々はそうしたことを受け入れることをいとわない。だからこそ、大きな政府は人々を変化にたいして前向きにさせることができ、それによって経済を活性化させられるのである

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『世界経済を破綻させる23の嘘』ハジュン・チャン・著 徳間書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198630682

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◆目次◆

はじめに 経済の「常識」を疑ってみよう
第1の嘘 市場は自由でないといけない
第2の嘘 株主の利益を第一に考えて企業経営せよ
第3の嘘 市場経済では誰もが能力に見合う賃金をもらえる
第4の嘘 インターネットは世界を根本的に変えた
第5の嘘 市場がうまく動くのは人間が最悪(利己的)だからだ
第6の嘘 インフレを抑えれば経済は安定し、成長する
第7の嘘 途上国は自由市場・自由貿易によって富み栄える
第8の嘘 資本にはもはや国籍はない
第9の嘘 世界は脱工業化時代に突入した
第10の嘘 アメリカの生活水準は世界一である
第11の嘘 アフリカは発展できない運命にある
第12の嘘 政府が勝たせようとする企業や産業は敗北する
第13の嘘 富者をさらに富ませれば他の者たちも潤う
第14の嘘 経営者への高額報酬は必要であり正当でもある
第15の嘘 貧しい国が発展できないのは起業家精神の欠如のせいだ
第16の嘘 すべては市場に任せるべきだ
第17の嘘 教育こそ繁栄の鍵だ
第18の嘘 企業に自由にやらせるのが国全体の経済にも良い
第19の嘘 共産主義の崩壊とともに計画経済も消滅した
第20の嘘 今や努力すれば誰でも成功できる
第21の嘘 経済を発展させるには小さな政府のほうがよい
第22の嘘 金融市場の効率化こそが国に繁栄をもたらす
第23の嘘 良い経済政策の導入には経済に関する深い知識が必要

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