2010年11月21日

『経済古典は役に立つ』竹中平蔵・著 vol.2314

【偉人たちの「問い」を知る】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334035922

『経済古典は役に立つ』と聞くと、「どうせ古臭い経済理論の話が登場するんだろう」と思う方が多いと思いますが、いつの世も、偉人たちが立てた「問い」は、輝きを失わないもの。

本日ご紹介する一冊は、その優れた「問い」に触れられる一冊です。

「社会の秩序はどのように保たれるのか」と問い、「見えざる手」という考えに行き着いたアダム・スミス、消費・貯蓄を決めるのは何か、投資を決めるのは何か、そして利子率は何で決まるかと問うたケインズ、資本主義社会における経済発展の原動力は何かと問い、イノベーションに答えを求めたシュムペーター…。

現在の経済学に多大な影響を与えた偉人たちの「問い」と、そこから生まれた理論、そして彼らが目指した理想の社会を知ることは、じつに知的刺激あふれる体験です。

著者の竹中平蔵氏の本は、毎回わかりやすく要点を伝えてくれますが、本書もまた、それぞれの学者の人柄や理念に触れつつ、難解な経済理論をわかりやすく説明しています。

目の前の不況という現実に右往左往するのではなく、どうすれば問題が解決できるのだろうかと真剣に考える。

偉人たちの思索の断片に触れることで、運命論者から、問題解決マインドを持つ人間に変われる、貴重な一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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人間が社会のなかで生きているということは、人間の強みであると同時に、きわめて厄介な問題を内包している。それは、いったい社会の秩序はどのように保たれるのか、という問題である

堂目卓生『アダム・スミス―「道徳感情論」と「国富論」の世界』(中公新書、2008年)には、アダム・スミスとほぼ同時代を生きたウィリアム・ホガースの1枚の銅版画が紹介されている。「ビール街とジン横丁」と題する絵で、まさに当時の貧富の格差の問題を象
徴的にとらえている

実は、アダム・スミスは当時から、分業こそが技術進歩の源であることを認識していた

分業をすすめるためには、ある程度の生産規模が必要であり、分業によって生産性が高まる

「自分の利益を追求する方が、実際にそう意図している場合よりも効率的に、社会の利益を高められることが多い」(『国富論』)

結論からいえば、アダム・スミスは植民地貿易の自由化を徹底的に主張する。植民地が自由な貿易を行えれば、マーケットが拡大し、
結果的にイギリスに良い効果をもたらすということになる

歴史は直線的に発展するのではない。何か一つの支配的なテーゼができると、それに対するアンチテーゼが生まれ、双方が争い合って総合的なテーゼ(ジンテーゼ)になる。しかし、それが支配的になると再びアンチテーゼが現れることになる。そういう弁証法的な発展が歴史の避けられない道なのであって、その基礎にあるのが経済=物質的なものであるという考え方が「弁証法的唯物論」である

現実には、マルサスやリカード、あるいはマルクスが想定したように、子どもの数を増やしていくのではなく、豊かになればなるほど
子どもの数を減らしていったのである。これは、まさにいま日本で起こっていることであり、国民の所得が増えるとともに子どもの数
は減少したのである。都道府県別に見ても、全国平均で見て所得がいちばん低い沖縄県で最も出生率が高く、所得が最も高い東京都で出生率が低い

いまの日本で最も重要な資本は何かといえば、それは「人的資本」である。地方と都市を比べてみればよくわかる。都市の産業は圧倒的に労働集約的であり、資本集約的なのはむしろ地方産業である

不況のときに財政を出動するのは簡単なことだが、景気がよくなってきたときに財政を引っ込めることはむずかしい

シュムペーター理論の真骨頂は、「不況なくして経済発展なし」という考え方である

「だれでも『新結合を遂行する』場合にのみ基本的に企業者であって、したがって彼が一度創造された企業を単に循環的に経営していくようになると、企業者としての性格を喪失するのである」(『経済発展の理論』207頁)

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『経済古典は役に立つ』竹中平蔵・著 光文社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334035922

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◆目次◆

第1章 アダム・スミスが見た「見えざる手」
第2章 マルサス、リカード、マルクスの悲観的世界観
第3章 ケインズが説いた「異論」
第4章 シュムペーターの「創造的破壊」
第5章 ハイエク、フリードマンが考えた「自由な経済」

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