2010年10月3日

『文章術 読みこなし、書きこなす』工藤順一・著 vol.2265

【「話すように書く」は間違い?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121020731

先日、弊社の看板講座『10年愛される「ベストセラー作家」養成コース』の卒業プレゼンテーションがありました。

この講座には、毎回、「話すのは上手だけれど書くことができない」人が何人かいらっしゃるのですが、そのおかげで話し言葉と書き言葉の違いは一体何だろうか? と考えるようになりました。

最近は、「話すように書く」ことを推奨する本やセミナーもあり、ますます話すことと書くことの境界がなくなっているような気もしますが、やはりそこには厳然とした違いがあるような気がする。

そう思って本日の一冊を読んだところ、この話すことと書くことの違いが明確にわかりました。

つまり、<話し言葉は「今、ここ、私」というフレームが共有されるときに使う言葉である>ということです。

マキアヴェッリの『君主論』のように、長年にわたって残る本を作ろうと思ったら、読者とフレームを共有するために、テーマにある種の普遍性を持たせなければならない。

一方で、芥川賞作家の平野啓一郎氏がおっしゃっていたように、最近はコミュニティの影響で、ますます言葉が少数の限定されたものになりつつあるのです。

だから私たちは、意識して書き言葉を学ばなければならない。

そのために役立つのが、本日ご紹介する工藤順一氏の『文章術 読みこなし、書きこなす』なのです。

著者は、立命館大学を卒業後、学習塾の講師などを経て、97年に「国語専科教室」を開講。以来、子供たちに正しい読み書きの技術を教えて続けている人物です。

文章を書くために必要となる事実の整理法や、フレームを共有する方法、世界をどう捉えるかという問題。

文章を書く際に欠かせない基礎的な力を、練習問題を通じて学習できる、まさに文章力アップのためのワークブックです。

伝わる文章を書くために、またそのベースとなる「読む力」「捉える力」を養うために、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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◆本書で示されている文章作成のための4つのポイント
1.事実にのっとって「書き言葉」で書くこと
2.事実を整理して書くこと
3.その上に自分の意見や発想を加えること
4.最終的に型を意識し、理解されるように書くこと

発話者がどんな状況に置かれているか、そしてどんなことを主張し、どんな人に伝わってほしいと考えているかで、同じ意味内容でも言葉の表れ方はかなり異なってきます。逆説的ですが、発話ではなく、沈黙が最高の主張や雄弁となりうるのはこのことに関係しています

家庭でも社会でも、自分が持っている情報を誰かに伝えるときには、状況を共有していない第三者に伝わる言葉(=「書き言葉」)で話さなければ、「何を言っているのかわからない」という状況を引き起こしがちです

話し言葉は「今、ここ、私」というフレームが共有されるときに使う言葉である

読み手に実感をもってわかってもらう文章を書くには、五感を通じて得られた感覚を言葉にしていくのは欠くことのできないステップ

説明文や論説文では対立部分の読み取りが大切ですが、四コママンガ「コボちゃん」の多くは、その対立構造からある種のユーモアが生じています。それを文章の中にきちんと反映させて書く練習は、他の文章を読んでいく際にも、そしてトレーニングを離れて実際の生活の中でもとて役に立つはずです

世界を観察すると実にさまざまの関係性が見えてきます。たとえば、規則性、相関性、相補性、対称性、対照性、相同性、類似性そして、矛盾などのルールです。関係性を表す言葉を知ることで、同時に現実が整理されて見えてくるものです

多くの論文や本のタイトルを見てください。「AとB」というタイトルのものがかならずあるはずです。そこにはまぎれもなく比較が隠れています

わかりやすい文章を書くには、具体的なことを抽象的な言葉でまとめることができるように、そして抽象的なことは具体例を挙げて説明できるようにする

抽象的なものを具体例で代表させることがあり、それが「象徴する」こと

「文を書く技術」は、「世界や現実や対象をどう捉える(=読む)」のかと直結しています

世界を知覚することは、自分自身を同時に知覚することである

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『文章術 読みこなし、書きこなす』工藤順一・著 中央公論新社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121020731

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◆目次◆

第1章 話し言葉と書き言葉
第2章 観察・分類・比較
第3章 考えるとはどういうことか
第4章 型とは何か
第5章 世界を読み書きする私

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