2010年9月22日

『大ヒットの方程式』吉田就彦、石井晃、新垣久史・著 vol.2254

【口コミは実は効かない?】
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本日の一冊は、ポニーキャニオンで「チェッカーズ」や「おニャン子クラブ」、「だんご3兄弟」等のヒット作を手掛けた吉田就彦氏と、物理学の研究者である石井晃氏、デジハリ大学院のヒットコンテンツ研究室客員研究員を務める新垣久史氏が、クチコミの数理モデル化に挑んだ、画期的な一冊。

大ヒット映画を主な題材とし、『おくりびと』や『ALWAYS 三丁目の夕日』『アバター』などを数理モデルで分析、その結果、得られた洞察をまとめています。

土井はアマゾン時代、400冊ほどのベストセラーを分析し、その売れ方にどんな特徴があるのか、グラフや数値を用いながら分析しましたが、本書で示された数理モデルには、あらゆる商品に通じる「ヒットの法則」が隠されています。

なぜ「コアなファン」だけでは売れないのか、仕掛けられたクチコミが機能しないのか、商品説明だけでは売れないのか…。

理論よりも雄弁に、本書のデータがその理由を物語っています。

本書によると、大切なのはクチコミよりも人が話題にしているのを見聞きする「間接コミュニケーション」であり、また、商品説明よりも大切なのは「周辺話題性」です。

やや著者らの主観を抜けきれない記述もあり、またもっと突っ込んで欲しかった箇所もありますが、これからのネットマーケティングの参考書として、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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人間は自分が知らないことに対する知りたい知りたい願望が強く、特にマスコミの人間ではなおさらです

人々の関心は、公開日あるいは発売日に向けて急激に高まり、そして公開あるいは発売とともに、徐々に減衰していきます

「コアなファン」だけで大ヒットになるのは不可能

「コアでない人たち」がどのようにして観る映画を決めるのかを知ること、それが映画を大ヒットにするために必要なこと

◆人が映画を観に行くのには3つの要素がある
1.広告やテレビ番組での紹介情報
2.知人から薦められる
3.街中で評判・街中の噂

人々の心に長く残る広告・宣伝を狙うなら、1つ1つは1日か2日で効果が消えてしまうので、時系列的にどのように広告・宣伝を続けていくかが宣伝戦略上重要

映画の超大ヒットなどを見ると、間接コミュニケーションが決定的な役割を果たしていて、場合によっては従来から「クチコミ」と言われている部分の効果はそれほど大きくない例もあります

売る側からクチコミを仕掛ける「クチコミマーケティング」には限界がある

売る側が仕掛けるクチコミはどうしてもソースが1つになってしまいますから、その意味では大規模な間接コミュニケーションとして盛り上がりにくい

メッセージの一貫性がヒットの鍵を握る

1つはいかに同じことを語らせるかという「共鳴性」という軸です。それともう1つは「周辺話題性」という軸です。映画作品だけを語るのではなく、その周辺にある「語りたくなる要素」をいかに発生させるかがポイント

「映画自体の評価は決して悪くないこと」と「エリカ様という強烈な個性による周辺話題性」を考慮すれば、映画を成功させるためには沢尻エリカは謝罪するべきではなかった

「言いたい病」「聞きたい病」の本質をとらえて、その病気を味方につけることがCGMマーケティング成功の必須事項

話題を切らさないマーケティング施策が重要

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『大ヒットの方程式』吉田就彦、石井晃、新垣久史・著ディスカヴァー・トゥエンティワン
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◆目次◆

序章 大ヒットを数式で予測する大胆な試み
第1章 ヒット現象を数理モデルで数式化する
第2章 映画の分析と予想シミュレーション
第3章 ヒットの話題共鳴分析で観客インサイトをつかむ

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