2010年8月16日

『大前研一の新しい資本主義の論点』大前研一・編著vol.2217

【来るべき社会変動(チャンス)をとらえる】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478013721

著名人の名を冠して、まったく関係のないコンテンツを売るというのは、出版業界ではよくあることですが、それによって読み手が得をする場合もあります。

本日ご紹介する一冊は、大前研一さんが序文を40ページほど書き、残りを、ダン・アリエリー、ダンカン・ワッツ、ポール・R・クルーグマン、ロバート・B・ライシュ、ジェフリー・R・イメルトといった世界の頭脳たちの論文で構成した、知的刺激あふれる一冊。

序文は、大前さんが『民の見えざる手』で述べた内容と重複しており、今後有望な国と経済圏の話が中心ですが、それ以外の「ハーバード・ビジネス・レビュー」の論文のなかには、まだあまり論じられていないテーマ、トピックが数多くあり、目を引きます。

※参考:『民の見えざる手』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093798125

行動経済学の権威として知られるダン・アリエリーが書いた「仕返し」の心理メカニズムや、「六次の隔たり」で有名になったネットワーク科学研究者のダンカン・ワッツの提案、新興市場の未来を論じたアナンド・P・ラマンの論文、アフリカ投資についてまとめたポール・コリアーとジャン=ルイ・バーンホルツの論文、セマンティック・ウェブの未来について論じたトム・イルベの論文…。

大前さんとハーバード・ビジネス・レビュー編集部がタッグを組んで編纂したというだけあって、どれも読み応えのある内容ばかりです。

本書を読みながら、ウェブで各トピックについて調べれば、可能性あふれる未来に、ワクワクすること間違いなし。

閉塞感ただよう日本のビジネスにうんざりした人にこそ、読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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急激な発展が見込まれる新興国の多くに共通しているのは、人口が五〇〇〇万人以上で平均年齢も二〇代後半と若く、豊富な労働力があることだ(大前研一)

富裕層セグメントから、ウォータフォール型に中間所得層のセグメントに参入しようとすると、どうしてもコスト競争力の面で勝てない。そのやり方は避けるべきだ(大前研一)

人間は、自分ではほとんど気づかない「認知バイアス」によって動機づけられる(ダン・アリエリー)

一人きりで仕事をしている状況で、もしチャンスがあれば、たいていの人が不正行為を働くことがわかった(ダン・アリエリー)

ある自動車保険会社では、ほとんどの人が、年間走行距離を記入する際、実際より少なく申告する傾向があることを発見した(ダン・アリエリー)

そもそも、大きすぎて潰せないほど、企業が大きくなるのを許すべきではない(ダンカン・ワッツ)

ひたすら株主の富が追求された時代ですら、株価重視に逆らい、ステークホルダーを尊重する企業のほうが優れた業績を上げていた(ジェフリー・フェファー)

水資源は、人口の増加、工業化、および気候変動の影響から、徐々に逼迫しつつある。実際、その需要が供給を上回る地域が、二〇三〇年までに、世界GDP(各国のGDPの合計)の四〇パーセント、世界人口の八五パーセントを占めると予想される(エリック・ベインホッカー、イアン・デイビス、レニー・メンドンカ)

ゴールドマン・サックスのリポートによれば、二〇五〇年までに、南アフリカの一人当たりGDPは、ブラジル、ロシア、インド、中国のそれを上回るという(アナンド・P・ラマン)

政府のインフラ支出に便乗するのは、開発途上国において効果的な戦略(アナンド・P・ラマン)

IMF(国際通貨基金)が二〇〇八年一〇月に発表した『世界経済見通し』によれば、二〇〇九年におけるサハラ以南諸国の予想経済成長率は六・三パーセントで、なかでもウガンダ、タンザニア、ナイジェリアのそれは八パーセントを超えるという(ポール・コリアー、ジャン=ルイ・バーンホルツ)

アフリカで最も成功している事業として、建設会社、コール・センター、ITサービスなどが挙げられる(ポール・コリー、ジャン=ルイ・バーンホルツ)

不況にもかかわらず、購買意欲の高い未開拓顧客が存在する。それは、世界に約二億人いるといわれる移民たちと、母国で暮らす彼ら彼女らの親族である。その数は、実に五億人に上るという(マルセロ・M・スアレス・オロスコ)

一新された世界では、一般ユーザーはオープンな標準技術であるRDFを用いて、フェースブック、マイスペース、リンクトインなどのソーシャル・ネットワーキング、サービス(SNS)の機能性や柔軟性を簡単に複製できるようになる。そしてセマンティック・ウェブの世界では、仲介者は不要となり、個人情報の管理もその持ち
主であるユーザーの手に戻される(トム・イルベ)

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『大前研一の新しい資本主義の論点』大前研一・編著 ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478013721

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◆目次◆

序 ポスト金融危機の経営戦略 大前研一
第1部 経済と金融
第2部 企業
第3部 グローバリゼーションと新興経済
第4部 技術と環境

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