2009年12月10日

『ザッポスの奇跡』石塚しのぶ・著 vol.1970

【アマゾンが屈した「ザッポス」とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862234054

本日の一冊は、過去5年間で1300%の成長、リピート顧客率75%、創業10年足らずで年商10億ドルを突破した奇跡の企業、「ザッポス」のサービスの秘密に迫った一冊です。

日本ではまだまだ知名度の低い企業なので、簡単に紹介すると、ザッポスは、当時不可能と言われた靴のネット販売に挑み、大成功した小売業。

このザッポスを恐れるあまり、あのアマゾンが規模にモノを言わせた低価格戦略でつぶしにかかったという話もあるのですが、結局は顧客がザッポスを支持し続けたため、アマゾンは買収を検討することに。

では、なぜこの企業が顧客からの熱い支持を集め続けられるのか。

じつはその秘密は、企業文化と「コンタクトセンター」(カスタマーサポート)にあったのです。

母親が亡くなり、そのごたごたで靴の返品を忘れていた顧客に対し、宅配の集荷サービスを送るばかりでなく、お悔やみの花束まで贈る。

最長4時間という時間を費やしながらも、顧客への対応にトッププライオリティを置き、電話の処理時間さえも測らない。

とにかく徹底したサービス重視の姿勢と、それを支える制度、採用・教育が本書の読みどころ。

ザッポスの企業文化に合わない候補者には、2000ドルの「採用辞退ボーナス」を提示する「オファー」制度など、とにかく個性的なやり方に驚くばかり。

何度も話が重複する点や、地味な装丁、わかりにくいタイトルが残念ではありますが、内容は必読です。

新規客へのマーケティングが効きにくく、見せかけのブランディングはすぐにメッキが剥がれてしまう今日。

「社員と顧客の触れ合いこそ、『ブランディング』なのである」と説く著者の主張に、今こそ真剣に耳を傾けるべきだと思います。

地味な本ながら、値千金。

これを見逃す手はありませんよ。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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傷心の女性は、やっとの思いでザッポスにEメールで返信する。病気の母親のために靴を購入したが、母親が死んでしまったこと。亡くなる前後のごたごたで、靴を返品し損ねてしまったこと。だが、必ず返品するので、今しばらく待ってもらいたいことなど。直ちにザッポスから返ってきた返答は、宅配の集荷サービスを送りますから、ご心配なく」というものだった。正規のポリシーでは、返品する場合、料金は無料だが、顧客自身が荷物を集荷場まで持っていかなければならないことになっている。そのポリシーを曲げて、自宅に集荷に来るように手配してくれたのだ。この「企業らしからぬ」心のこもった対応に、女性は驚くとともに、いたく感謝した。だが、話はそこで終わらない。翌日、女性の玄関先に届けられたのは、色も鮮やかなお悔やみの花束。添えられていたメッセージ・カードの封を開けてみると、それはザッポスからだった

ザッポスのコンタクトセンターには、マニュアルがない

社員に、顧客に、幸せを届けること。それが、会社を長期的繁栄に導く最強の戦略なのだと、ザッポスは宣言して憚らない

ザッポスにとって、サービスとは、むしろブランドを築くため、そして、顧客ロイヤルティを築くための投資なのだ。ザッポスで、電話の処理時間を測らないのはそういう理由からだ(中略)創業以来今までの最長記録は、四時間だという

ご存じのように、アマゾンをはじめとする従来的な「ネット通販会社」は、コンタクトセンターの電話番号をわざと見つけにくくしているようなところが多い。それにひきかえザッポスのサイトに行くと、どのページを見ても、その左肩にでかでかとフリーダイヤル番号が表示してある。「ザッポスでは、心から、お客さんと話したいと思っている。その表れです」とトニーは言う

ザッポスのリピート顧客率は七五%(中略)リピート顧客は年に二・五回以上ザッポスで買い物をし、一回あたり初回顧客の一・三倍近い金額を購入する

ザッポスの経営フォーカスは、企業文化にあります

多くの企業がコールセンター業務を「中核事業を営む上でやむを得ない必要悪」と見做し、労働力の安い海外市場へのコールセンターの移転や、サードパーティへの委託に走る中、ザッポスはそのコンタクトセンターをすべて正社員で賄っている

ザッポスでは、顧客についてできるだけ深く知ろうとします。もし電話越しに犬の吠える声が聞こえたら、「どんな犬ですか?」と聞きます。そうすることが奨励されているんです

会社、社員、ブランドが三位一体になるようなカルチャーを築くことが必要なのだ。そうすれば、いつ、どの接点にあっても、一貫性のあるブランド・エクスペリエンスを提供することができる

今日では、社員と顧客の触れ合いこそ、「ブランディング」なのである

「個」を活かす企業には、「施しもの」を待っている社員はいない。「会社が、自分に何をしてくれるか」を期待しているのではなくて、「自分は、会社という共同体に、どう貢献できるか」を常に考えているのだ

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『ザッポスの奇跡』東京図書出版会 石塚しのぶ・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862234054
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◆目次◆
第一章 競争の本質が変わる 流通におけるサービス革新
第二章 サービスを超える企業、ザッポス
第三章 感動サービスを培養する、企業文化の土台
第四章 経営戦略としてのサービス文化
第五章 企業は働く人がすべて
第六章 「個」を活かすサービス ザッポスから学んだこと
第七章 変革の火種になる ザッポスから学んだ、リーダーの心得

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