2009年5月6日

『東急ハンズの秘密』和田けんじ・著

【なぜ東急ハンズはダメになったのか?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822247252

本日の一冊は、三和銀行、ロック、ジャズ専門店を経て東急ハンズで活躍した著者が、東急ハンズで学んだ商売の秘訣を説いた一冊。

アマゾンが証明しているように、小売店が成功するための第一要因は「品揃え」にありますが、本書はその基本をしつこいまでに追求した東急ハンズの物語です。

「手の復権」というコンセプトのもと、職人集団が徹底した品揃えを展開する。

湯たんぽのゴムパッキンから水道ホースの切り売り、1万円の檜の風呂イス、オリジナルで作ったソープディッシュまで、要望があれば何でも揃える勢いで、東急ハンズは急成長を遂げました。

一時はヘリコプターを仕入れる、という話もあったそうで、本書にはその辺のエピソードが事細かに書かれています。

ほかにも、使用感を確かめてから仕入れる、個性的な品揃えをするため取引先を開拓し続けるなど、小売に携わる人にとっては、貴重なアドバイスがいくつも盛り込まれています。

もちろん、明確なコンセプトほど時代の波に乗りやすいわけですから、原点回帰したらすべて良くなる、というわけでもありませんが、小売業に携わる人が、持っておくべき心構え、という点では一読の価値があると思います。

ネットもPOSも、所詮は過去のデータ。未来を切り開く品揃え、店作りを実現するために、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「売れる」ことが見込める商品を仕入れ、POSシステムによって仕入れを管理し、従業員のマンパワーに頼らず、業務のマニュアル化を進め、効率第一のコンセプトを掲げて多店舗化を推進していきます。その結果として、全ての小売りは「巨大なコンビニ」と化してしまうのです。それでは、店舗としての「アイデンティティー=存在理由」は確立できません

過剰な品揃えこそが、東急ハンズの「個性」であり「本質」

どういう店舗にするか検討を重ねた結果、不動産会社らしく住宅関連商品を中心に扱うことになりました

「手の復権」というコンセプトのもと、お客さまに提案し、需要を開拓するのが東急ハンズの使命……。そんな考え方が固まっていった

「これは、今のお客さまのニーズに合っている」と判断したら、すぐ商品の導入に動きます。商売という観点から見れば、「はっきりとした需要が確認できない商品」、言い換えると「売れるという確信がない商品」を仕入れるのは冒険です。しかし東急ハンズでは、「お客さまの求めているものは、これでは」という「提案」こそが
重要と考えられているので、躊躇はしません

売るためには、「売り上げ」を目標にしてはいけません。こう言うと、「え?」と驚かれそうですが、売り上げを目標にするのではなく、「売れる売り場作り」を目指してほしいのです

お客さまとよく話す店員は不良在庫を作らない

いつ来ても同じようなものしか並べていないお店に、お客さまが頻繁に訪れてくれると思いますか?

わずか1人のお客さまから問い合わせがあっただけの商品だからと、メーカーから取り寄せるだけで済ませてしまうのではなく、ちゃんと仕入れて定番品として扱う

「買った」「持っている」ではなく、ハンズの店員がよく使う言葉があります。それは、「使ったことがあります」とか「使っています」です。こう言うことによって、お客さまは店員の説明をよく聞いてくれます。お客さまにとって、「使った経験のある消費者の情報」はありがたいものだからです

◆東急ハンズが従業員を評価する3つのポイント
1.何を仕入れたか
2.どれくらいの種類を仕入れたか
3.新しい取引先をどれだけ開拓したか

◆陳列に必要な2つのストーリー
1.担当者がその商品をどうとらえているか
2.商品をどのような位置関係で並べるか

どのような取引先と取引しているかによって、お店の売り場は決まると言っても過言ではありません。それほどまでに取引先は重要なのです

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『東急ハンズの秘密』日経BP社 和田けんじ・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822247252
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◆目次◆
はじめに
1章 30年前からロングテール
2章 1人のために仕入れる
3章 店員の過剰な知識が店の個性
4章 人の「手」だからできる提案
5章 小売の復活、ハンズの復活
あとがき

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