2008年12月15日

『間違いだらけの経済政策』榊原英資・著

【ミスター円が語る今後の世界経済と投資チャンス】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532260256

本日の一冊は、ハーバード大学客員准教授を経て、大蔵省国際金融局長、財務官を歴任、「ミスター円」の異名をとる著者が、今後の世界経済と日本の政策を論じた一冊。

マクロ経済の話ではありますが、説明がわかりやすく、また今後の投資チャンスにも触れているため、ビジネスマンの教養として読むにはピッタリの内容です。

なぜ、日本の賃金が下がり続けているのか、今後、資源価格はどうなって行くのか、マクロの経済政策は有効なのか…。

ちょうど本日、マーケットが急激な円高にふれているため(なんと一時88円!)為替の専門家である著者の主張には注目したいところです。

個人的に勉強になったのは、安易に原理主義、歴史信仰に偏らない著者の現実的かつ客観的な目線。

今後は、製造業も金融化の波に対応し、原材料の仕入れに腐心しなければならない、という著者の主張は、モノ作り大国ニッポンの経営者に意識変革を迫る、鋭い見解だと思います。

ほかにも、今後のエネルギー政策や農業政策など、今後の日本の課題がてんこもり。

マーケットを読むための教養書としても、おすすめです。

————————————————————
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
————————————————————

「価格革命」を背景に、インフレとデフレが共存する不況

マクロ経済的には雇用と賃金の変化は、物価の場合と同じように、経済統合の結果であり、東アジア、特に中国との収斂の結果なのです。貿易と投資がオープンになればなるほど、つまり、経済統合が進めば進むほど、物価や賃金がお互いに接近することは、経済理論上、よく知られています

供給能力が急速に増加し、明らかに需要を超えていくと思われる製造業の製品、特にハイテク製品の価格は傾向的に下落し、需要が供給能力を超えていくことが予想される資源価格は上昇し続ける可能性が高い

「これからの社会科学は、むしろ人間という観測主体の存在も考慮に入れた判断・決定、つまり予測・価値を含んだ科学の方法をとり入れることが必要となるのではないか」(ノーベル化学賞受賞者、イリヤ・プリコジンの考え方)

マクロモデルの有効性が下がってきた現在、経済分析にとってより重要になってきているのは構造分析であり、構造変化に対する読み」

アメリカの消費者物価の上昇率はすでに四%を超え、ヨーロッパも同様です。アジアでも、インドの物価上昇率は卸売物価で一一%を超え、中国の消費者物価上昇率も八%を上回ってきました。ベトナムにいたっては三〇%近いインフレに陥り、経済危機の状況に入っています

今、必要なのは、消費者庁をつくることではなく、資源エネルギー庁と食糧庁を合体させてエネルギー、食糧、原材料などすべての資源を担当する資源省をつくることでしょう

現在、石油価格を決めているのは、かつてのように石油メジャーでもOPECでもありません。カルパース(カリフォルニア州の職員組合の年金基金)などの投資家の動向が原油価格を大きく左右するようになったのです

高い技術力を持っている限り、製造業の優位は確保できるとしても、稀少商品化した原材料を調達しなければ事業は継続できません。製造業についても、金融化に対応してどう原材料を買っていくのかに腐心しなければならない時代になってきたのです

そろそろきめの細かいミクロ政策を積み重ねて政府の政策の構造をしっかり示すべきでしょう(中略)この国の姿かたちを明らかにしないで、総量や平均の議論を続けてもらちがあきません。大きく世界が変わっている今、日本をどういう国にしたいのかを、まず示すことが政治と行政に求められているのです

————————————————
『広告も変わったねぇ。』 インプレスジャパン 天野祐吉・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532260256
————————————————

◆目次◆
序章 世界同時不況と経済政策
第一章 遅れた日本シンドローム
第二章 時代遅れの経済理論
第三章 構造デフレと構造インフレ
第四章 円安バブルは崩壊へ
第五章 展望なき資源政策―マクロからミクロへ
第六章 金融化の流れは止められない
第七章 経済政策の大転換を
注・参考文献

この書評に関連度が高い書評

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー