2008年6月8日

『グーグルに勝つ広告モデル』岡本一郎・著

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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334034527

本日の一冊は、大手広告代理店を経て、外資系コンサルティングファームでメディア企業、エンターテインメント企業のコンサルティングに従事、その後独立した著者が、今後のメディア変容とそこからもたらされるビジネスチャンスについて語った一冊。

極端なメディア悲観論が多いなか、インターネットをはじめとするニューメディアの実際を踏まえ、極めて理性的に今後のメディア/コンテンツビジネスを論じた、読み応えある論考です。

冒頭で著者は、マスメディアの本質は「大衆の注目の卸売り」と指摘し、グーグルが売っている「インタレスト」との違い、そしてメディアビジネスが今後売っていくべきものと、売り方の戦略について論じています。

本書を読むと、なぜ現在、出版の世界で過去の名作がブレイクして、新刊の売れ行きが鈍いのか、なぜテレビのビジネスモデルが行き詰っているのかが、じつによくわかります。

インターネットと4大メディアの違いをその本質から読み解き、実際に食い合うのがどことどこなのか、テレビが直面している本当のリスクは一体何なのか、事例とともに解説したくだりは、今後のビジネスチャンスを見据える上でとくに参考になるでしょう。

本書から読み解けるのは、ジャンルを限定したニッチメディアの可能性と、ローカル情報に特化した地域メディアの可能性。

インターネットを礼賛する向きも、本書のウィキペディア悲観論を読めば、無料コンテンツが潜在的に抱える問題点、そしてそれが今後引き起こすインターネットメディアの凋落の可能性に、目を見張るに違いありません。

タイトルにある「グーグルに勝つ広告モデル」についての具体的提案は正直見つかりませんが、メディア/コンテンツビジネスで明日の勝者となりたい方には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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近年騒がれている21世紀メディアとしてのグーグルが依拠する経済
は、インタレスト(能動的な興味・関心)です。グーグルは、アテ
ンションではなくインタレストの卸売りをするビジネスモデルです

一日24時間のうち、メディアやエンターテインメントは、残りの5
時間を奪い合うという構図になっている

メディア/コンテンツビジネスは「過去」と競合するビジネス

社会全体が、膨大になりすぎたコンテンツや情報を整理することに
対して、高い付加価値を見出している

ゼロサムゲームを脱却するキーポイントは、「ゲームの単位を変え
る」と「サムの総量を増やす」の二つです

インターネットとマスメディアの代替性は、1.提供情報 2.情
報の消費シチュエーション 3.アクセススタイル の三つのポイ
ントを分析することで、判断が可能ではないか

BMWのブランドエッセンスを伝達するのにもっとも適したメディ
アは、動画メディアである、ということです。動画メディアといえ
ば、従来はテレビということになるわけですが、じゃあなぜBMW
はこれまでテレビ広告を積極的にやってこなかったのか? これは
ターゲット含有率の問題です。BMWは、決して普及価格のクルマ
ではありません

著作権や著作隣接権というのは、結局のところ「おこぼれをどう分
けるか」の議論ですから、結果的に儲かればみんなダマル

家族以外の誰かとつながっている感覚を得たい、もっと踏み込んで
いえば、親をバイパスして世界を見てみたい、夜の社会を覗いてみ
たい、という気持ちがわいてくる。そんな彼らの気持ちに応える、
開かれた一つの窓としてラジオが機能していた

キルゴアは、当時低迷していた「WSJ」を、「ニューヨークタイ
ムズ」や「ヘラルド・トリビューン」といった強力な競合と差別化
し「すべてのビジネスマンにとって二つ目に選ぶ新聞になる」こと
を目指しました

年功序列や終身雇用といった社会制度が崩壊しつつある中で、ビジ
ネス関連情報の価値がこれまでより相対的に高まっている

要するに人間は、与えられた情報に対して、その情報のソース、平
たくいえば「誰がそのニュースの発信者」か、ということによって
態度を変えるのです

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『グーグルに勝つ広告モデル』岡本一郎・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334034527
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◆目次◆

はじめに
1章 マスメディアの本質は「注目=アテンション」の卸売業
2章 アテンションのゼロサムゲームから脱却できるか?
3章 マスメディアの競合としてのインターネットメディア分析
4章 4マスメディアvs.インターネット
5章 テレビvs.インターネット
6章 オンデマンドポイントキャスト事業の提言
7章 ターゲットメディアとしてのラジオの確立
8章 情報のコモディティ商戦から新聞は抜け出せるか
9章 ネットとの差別化に特化する雑誌
10章 合従連衡によってプレイヤーの数を減らす
11章 なぜ、それでもマスメディアは必要なのか
12章 コンテンツ論
13章 マーケッターに求められるパラダイムシフト

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