2006年9月16日

『論理で人をだます法』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022500840

本日の一冊は、論理学を専門とする著者が、一見論理的に見えて、
じつはそうではない悪用例150を紹介・解説した一冊。

例として取り上げられている会話やセリフ、文章には、有名な企業
の広告や日常ありがちな議論が含まれており、いかにわれわれが普
段いいかげんな議論をしているか、思い知らせてくれます。

逆に言えば、多くの人はこの本に紹介された「いいかげんな論理」
に騙されているわけで、扇動家たちはこれをうまく使って人心を掌
握しているわけです。

そういう意味では、以前にご紹介した『影響力の武器』同様、使い
方次第では危険な本と言えるでしょう。

※参考:『影響力の武器』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4414302692

報道であれ、議論であれ、広告であれ、コミュニケーションである
限り、そこには、必ず何らかの動機や意図があります。

本書はまさにそこを正しく読むための本であり、ここで紹介されて
いる論理の悪用例は、大人のコミュニケーションの作法として、学
んでおくべきものだと思います。

情報化社会における処世術として、ぜひ読んでみてください。

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■ 本日の赤ペンチェック
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同情へのアピールと密接に結びついているのが、罪悪感へのアピール

恐怖への訴えは、人を脅して、ある行動を取らせたり、なんらかの
考えを受け入れさせたりする。「XをしないとYが起こりますよ」
というわけ

「みんなやってる」は、人々の、何かに帰属したいというニーズへ
の感情的なアピールでもある。人は仲間はずれになりたくない

人々は勝ち組につきたがるし、自信たっぷりな態度は、人を勝ち組に見せる

扇動家はあれこれ統計を持ち出すけれど、その統計の背景について
はほとんど語らない

事務員ではなく、事務屋と呼ぶ。役人でなく、宮仕えと呼ぶ。医者
と言わずに先生と呼ぶ。このような含みのあることばは、ただ事実
を述べているようなふりをしつつ、実は何かについて評価を下している

2つの発言が行われる。両者の関係は説明されない。でもその発言
が内容的に近いので、両者は関係があるとほのめかされる。
たとえばこんな新聞の見出し。
「市長、第3期の出馬を断念」
そしてキャプションには
「破産に瀕す市財政」
市の財政悪化が、市長のせいだとはどこにも書かれていないけれど、
読者はまちがいなく、そう推測するよう仕向けられている

論証が有効であるためには、(1)前提が真でなくてはならず(2)
結論が前提から論理的に導かれなくてはならない(妥当)

「平均」ということばが出てきたら、算術平均とモード(最頻値)
を区別すべきだ。そしてメジアン(中央値)や度数分布、範囲まで
わかればもっとよろしい

類似性を証明しようとしたり、ただ類似性を示しただけで同一性を
証明しようとするとき、アナロジーは乱用されている

最初に考えるべきなのは「なぜ自分は論争しているんだろう」とい
うことだ。そして同時に、論争相手の動機も見極めようとすべきだ

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『論理で人をだます法』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022500840
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■目次■

日常は意味のない会話にあふれている
感情的表現(1)―人を丸め込む
感情的表現(2)―人を扇動する
感情的表現(3)―ほのめかしをうまく使う
番外編 論理のごまかしを見分ける
無関係な話を持ち出す
話をそらす
あいまいさと不正確な推測
混乱と不正確な推測
原因と結果の混同
単純化しすぎる
まちがった比較や対比
はぐらかし
番外編・何のための議論か、を考えよう
誤解を招きやすい表現
番外編・三段論法について
最後に

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