2006年8月22日

『アディダスvsプーマ』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4270001275

本日の一冊は、もともと同じ会社で事業を営んでいたというアドル
フ・ダスラー(アディダス創始者)とルドルフ・ダスラー(プーマ
創始者)、そしてこの兄弟の確執が生み出したスポーツ・ビジネス
の歴史を、ジャーナリストである著者が追った、衝撃の話題作です。

本書によると、アディダスとプーマはもともとは一つの会社で、職
人気質の弟アドルフと、天性の営業センスを持つルドルフの対立に
より、二つの会社に分裂しました。

われわれ一般人には知る由もないことですが、この兄弟の対立はそ
の後も熾烈を極め、その結果、選手の買収が相次ぐ、金まみれのス
ポーツビジネスが出現したようです。

サッカー、陸上、バスケットボール、テニスなどの話が中心で、話
のなかにはペレやベッケンバウアー、マイケル・ジョーダン、ボリ
ス・ベッカーなど、著名な選手のエピソードがいくつも登場します。

かつてカリスマと呼ばれたスター選手までもがスポーツマーケティ
ングに飲み込まれていく様は、そこだけを読んだら、ファンにとっ
てはとても耐えられないかもしれません。

しかし見方を変えれば、本書は優れたビジネスの教科書であり、マ
ーケティングのヒントとして、またビジネスを維持・拡大する秘訣
として、じつに示唆に富んでいます。

アディダスとプーマ、そしてそこに挑んだナイキ、リーボック…。
さまざまなプレイヤーの活躍と繰り広げられる人間模様は、ノンフ
ィクションとしても読み応えがあります。

刺激的なノンフィクションとして、また生きたビジネスの教科書と
して、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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■ 本日の赤ペンチェック
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プーマとアディダスは長年にわたり火花を散らしてきた。両社は、
ヘルツォーゲンアウラッハというドイツの小さな村で、反目しあう
二人の兄弟、ルドルフ・ダスラートアドルフ・ダスラーによってそ
れぞれ設立された

二人の確執が、スポーツの世界に金銭をもちこんだのである

反目するダスラー兄弟がライバル会社を設立して以来、オリンピッ
クとワールドカップは最も過激な対決の場となった。ロッカールー
ムでは、さりげなく選手のシューズに札束が入れられたりする。確
執は法廷に持ちこまれることもしばしばで、ときには懲役刑がくだ
ることすらあった

ダスラー兄弟商会にとって、ナチは強力な後押しとなった。ヒトラ
ー政権は彼らの理念を性急に実現化しようとし、急務の一つとして
スポーツの振興を掲げたのだ

オリンピックは、シューズの売り上げを伸ばすまたとない機会であ
る。オーナーの息子がただで配ってしまっては、売れる望みがなく
なるではないか。ホルストはしかし、無料供与がいかに賢明な投資
であるか、店主のハートリーを説得した。スリーストライプを履い
た選手がゴールのテープを切ること以上に、効果的な宣伝などある
はずがない

ペレとの提携は、プーマに計り知れない恩恵をもたらした。開幕が
近づいたある試合で、ヘニングセンとペレは宣伝効果を高めるちょ
っとした仕掛けを考えついた。キックオフの直前にペレが審判に話
しかけ、ちょっと待ってくれるよう頼む。それからペレは膝をつき、
おもむろに靴紐を結び直す。数秒の間、世界の何百万というテレビ
画面いっぱいにペレの靴が映し出されるというわけだ

ホルスト・ダスラーはどこにいても、あらゆる機会を使ってスポー
ツ関係者との友情を深めたり、新たな友人を作ろうとしたりした

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『アディダスvsプーマ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4270001275
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■目次■

ダスラー・ボーイズ
兄弟の不和
決別
オリンピックでの無料配布
アルザスの計略
メキシコでの大当たり
手に負えない息子
頭からつま先まで
ペレ協定
スポーツポリティックス〔ほか〕

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