2006年5月8日

『デスマーチ』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282716

本日の一冊は、ソフトウエア開発のコンサルタントとして知られる
エドワード・ヨードンの名著の待望の改訂版です。

内容的には、なぜ多くのソフトウエア開発プロジェクトが失敗に終
わってしまうのかを解き明かした内容ですが、トピックがソフトウ
エア開発というだけで、知識労働全般に役立つ、不変の真理を説い
ています。

プロジェクトを失敗に導く政治的要素、人的要素、プロセスをシニ
カルな語り口で笑い飛ばし、それに対する解決策や心構えをを示し
ているのが特徴です。

クリティカルチェーンや時間管理に関しては、ゴールドラット博士
やコヴィー博士の書籍が詳しいですが、プロジェクト管理に必要な
あらゆる知恵を必要最低限まとめた、という点で重宝する一冊です。

あと、これはおまけですが、本書で挙げられている参考文献は秀逸
なものが多いため、文献リストとしても役立つでしょう。

最終的なアウトプットが何であれ、プロジェクトの問題は最終的に
「人」の問題に行き着きます。

ロジックだけでは片付かない問題にいかに取り組み、成果を出すか。
すべての知識プロフェッショナルにおすすめしたい一冊です。

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■ 本日の赤ペンチェック
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◆デスマーチ・プロジェクトの定義
開発日程、予算、人員、その他開発資源が通常の50%~100%少ない
プロジェクト

信じたくない気持ちはわかるが、どんなソフトウエア開発プロジェ
クトにも政治的要素がある

プロジェクト・マネジャーが、長時間、強制的に働かせようとして
も、深夜や土日には、私用電話をかけたり、家族に手紙を書いたり、
コーヒーの自動販売機のまわりにたむろして、馬鹿話に興じるのだ

顧客や会社上層部との交渉結果、見積もったパラメータの一つを変
えろと言われ、その幅が10%以内なら、他のパラメータをその分増
やして相殺する。たとえば、日程を10%短縮せよと言われたら、プ
ロジェクトの人員を10%増やす

一つのパラメータの変更幅が10%を超えると、他のパラメータに対
し「1/n2の法則」の影響が出る。上のシナリオで、上層部から日程
を12カ月から半分の6カ月にせよと言われた場合、プロジェクト・
チームの人数は2倍ではなく4倍にしなければならない

プロジェクトが必要な技術を備えることは大切だが、お互いに助け
合う精神的な土壌を育成するほうがもっと重要だ

デスマーチ・プロジェクトでは金が物をいう。金銭的要素は、他の
すべてに優る場合が多い

最終納期があと数週間後に迫ると、ユーザーは、以前は絶対に必須
であると言っていたいくつかの要求項目が、結局それほど必須では
ないことを、認めざるをえない

全力で100メートル突っ走るのもいいが、プロジェクトはマラソンだ。
最初の数キロ飛ばした後で燃え尽きないためには、持続できるペース
で走らねばならない

重要なことは、「クリティカルチェーン」を見つけること、すなわ
ち、資源の制約と、タスク自体に必要な作業量の両方を考慮して、
プロジェクトの最長パス(期間的に)を洗い出すこと

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『デスマーチ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282716
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■目次■

第1章 はじめに
第2章 政治
第3章 交渉
第4章 デスマーチ・プロジェクトの人々
第5章 デスマーチ・プロセス
第6章 プロセスのダイナミックス
第7章 クリティカルチェーンと制約条件の理論
第8章 時間の管理
第9章 進捗の管理と制御
第10章 デスマーチのためのツールと技術
第11章 シミュレーションと「戦争ゲーム」

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