2006年2月4日

『私の嫌いな10の人びと』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4104397032
本日の一冊は、シニカルかつウィットに富んだ語り口が魅力の哲学博士、中島義道さんによる、注目の一冊です。

目次を見ていただいてわかるように、本書で取り上げられている「私の嫌いな10の人びと」とは、日本社会では一般的に「いい人」と思われている典型です。

それを著者は、「物事をよく感じない人、よく考えない人」として批判しているのです。

金言というのは、人々を思考停止に陥らせる代表的なものですが、本書で取り上げられている人間像や、生きる姿勢というものも、また同様のものです。

「感謝の気持ち」や「けじめ」「前向きな生き方」など、耳障りの良い言葉を無批判に肯定するのではなく、それによって傷つく人がいる、ということを本書は教えてくれるのです。

おそらく多くの人にとっては、苦痛極まりない一冊。自己否定のできない人は絶対に読んではいけない、禁断の書です。
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■ 本日の赤ペンチェック
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この国では個人のむき出しの感情を嫌う。とくに、悲しいときに涙を流すこと、暗い気持ちのときに暗い顔をすることを禁じる。自分のマイナスの感情をそのまま表現するのは、失礼なのであり、社会的に未成熟なのです

感謝の気持ちを忘れないことはもちろん大切なことです。でも、おうおうにして現代日本では、これを知能指数ならぬ「人間的指数」とみなし、すべての人に高飛車に強制し、これが欠如している者、希薄な者を欠陥人間とみなす風潮がある

この国では、何もかも定型化されるのですが、感謝の気持ちも、あっという間に定型化される

小学校の卒業式以来、厭というほど「はなむけの言葉」を聞いてきたが、すべて忘れてしまった。いましみじみ思うのは、そのすべてが自分にとって何の価値もなかったということ。なぜか? 言葉を発する者が無難で定型的な(たぶん当人も信じていない)言葉を羅列しているだけだからである

「みんなの喜ぶ顔が見たい人」とは、マジョリティの喜ぶ顔だけが見えて、マイノリティの苦しむ顔が見えない人

「いつも前向きに生きている人」にとって、そばにめそめそくよくよしている人がいると、結局は自分が不愉快だから

困ってしまうことに、けじめを大切にする人は、「けじめ」という言葉の意味を追究しない

どんな思想をもってもいいのですが、当人がその思想をどれだけ自分の固有の感受性に基づいて考え抜き鍛え抜いているかが決め手
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『私の嫌いな10の人びと』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4104397032
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■目次■
1.笑顔の絶えない人
2.常に感謝の気持ちを忘れない人
3.みんなの喜ぶ顔が見たい人
4.いつも前向きに生きている人
5.自分の仕事に「誇り」をもっている人
6.「けじめ」を大切にする人
7.喧嘩が起こるとすぐ止めようとする人
8.物事をはっきり言わない人
9.「おれ、バカだから」と言う人
10.「わが人生に悔いはない」と思っている人
あとがき――私の嫌いな人とはどんな人か
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