2006年2月6日

『イノベーションパラドックス』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4903241084
本日の一冊は、化学・材料化学分野で博士号を持ち、日本のイノベーション企業の事情にも詳しい著者が、イノベーションへの新しいアプローチ、「分散型イノベーション」を論じた一冊です。

著者が本書で提唱する「分散型イノベーション」とは、これまでのイノベーションの境界線を見直し、他部門、社外にまで広げていくアプローチのこと。

自社をネットワークの中心にすえ、ネットワーク内部の協力者とともにイノベーションを進めていく、新しいやり方が提示されています。

また、上手く行かない場合に、プロジェクトを売却するなど、撤退戦略に関しても、斬新な議論が展開されています。

事実や現象にばかり着目して、洞察に欠ける点が不満と言えば不満ですが、他社の豊富な事例はやはり参考になります。

著者によると、「企業の生き残りと成長には技術的イノベーションが重要だと、経営陣、株主、金融機関など、すべての利害関係者が口を揃えるが、経営トップが真にこの優先課題に注力することはあまりない」のだそうです。

明日のメシの種を蒔くためにも、競争優位の源泉を見つけ出すためにも、そしてまた、技術者にやりがいを与えるためにも、ぜひ本書を読んで、真剣にイノベーションに取り組みたいものです。
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■ 本日の赤ペンチェック
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経営効率のみに依存していると、収益が次第に縮小していく。効果的にイノベーションを実践すれば、この下方スパイラルから逃れる道が企業に提示される

R&Dを分類する場合、これまでの「基礎研究」と「応用研究」に区分するよりも、「好奇心」と「営利」のどちらが原動力となっているかで分ける方が望ましい。なぜなら、後者の方がより明確に資金源の違いを反映できるからだ

「『正気か?』と言われたことは、やった方がいい。『それはいい』と言われたら、それはすでにだれかがやっている」(御手洗肇)

イノベーションは市場、ビジネスモデル、技術の三種類の不確実要素から構成されている

知識労働者の意欲が引き出されるのは、やりがいのあるプロジェクトへの参加に起因する部分が大きい。そうはいっても、彼らにとって給与水準は一番目とほぼ同等の二番目に大きい動機づけの要因となる

最も望ましいのは、できるだけ初期の段階で、先行きの明るい要素を持つ多彩なプロジェクトが揃っていることだ。この意味において早期落第は歓迎される

一つ明らかなことがある。それは多くのテクノロジー企業とともに仕事をした筆者の経験にもとづくと、どの期間を見ても進行中のプロジェクトの数が多すぎることだ

イノベーションの発展の一過程として、社外の協力者の力をプロジェクトに利用する傾向がますます強まっている

企業はこう自問すべきだ。「このプロジェクトが当社に適していないとしたら、この一部または全部から利益を生むためにわれわれは何ができるだろうか」「このプロジェクトの買収に興味を持ち、この開発への投資の回収に手を貸してくれるのはだれだろうか」

専門技術者のビジネスセンスを磨き、彼らのなかから起業家の道に進む人材を一人でも多く送り出すことを、企業経営の最重要課題にする必要がある
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『イノベーションパラドックス』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4903241084
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■目次■
日本語版への序文
序文
第1章 イノベーションはサバイバルだ
第2章 CEOのリーダーシップがイノベーションを推進させる
第3章 イノベーションはマネジメント可能か
第4章 多様な手段を通して技術的イノベーションを活用する
第5章 イノベーション・マネジメントの再定義
第6章 起業家精神が分散型イノベーション・システムを活性化させる
第7章 カギを握る人的要素
第8章 結論──分散型イノベーションによる価値創造と成長
監訳者あとがき
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