2006年1月27日

『ロウアーミドルの衝撃』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062129930
本日の一冊は、現在さまざまな方面で話題となっている「所得階層の二極化」を、日本を代表する論客、大前研一さんが論じたものです。

これまでにも、二極化することの問題や、今後の傾向について論じた本はありましたが、本書の特徴は、二極化にともなう、個人、企業、政府、それぞれの視点で、今後どうすればいいのかを具体的に論じた点でしょう。

特に、今後有望と見られる「ロウアーミドル」をターゲットにして成功を収めた「ナチュラルキッチン」「ZARA」「アイリスオーヤマ」の例は読み応えがあります。

冷静に数字を分析し、富裕層よりも「ロウアーミドル」に注目したという点が、いかにも著者らしいアプローチ。

ビジネスに関する内容以外でも、フローからストックへの課税を提案したり、「お金よりも時間」の教育の必要性を訴えるなど、なかなか読み応えがあります。

今後の社会経済の動きを考える上で、また企業や個人の戦略を考える上で、興味深い視点を提供してくれる一冊です。
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■ 本日の赤ペンチェック
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今の日本では、お金がジャブジャブになってもモノが流通していない。経済がカネを吸収しない時代なのだ。その理由は三つ。モノをあまり必要としない高齢者の増加、在庫を必要としないジャスト・イン・タイムの生産方式への転換、将来への不安からモノよりカネを握っておこうとする消費者心理である

◆新しい経済という見えない大陸の4つの空間
1.「実体経済」の空間
2.金や情報が国境を越えて自由に流通する「ボーダレス経済」の空間
3.さまざまな通信技術から生じた「サイバー経済」の空間
4.自己資本の100倍、1000倍というマルチプルの資金が動
  く「マルチプル経済」の空間

新しい経済では、企業は「将来の期待」をお金に換えていくことが可能

成長を続けていた企業も、「将来への期待」が失われたとたんに「突然死」してしまう

「センスはアッパーミドル、価格はロウアーミドル」に合わせたコンセプトが消費者に受け入れられている(なんちゃって自由が丘)

高品質でセンスの良い商品やサービスに対して、「頑張れば手が届く」範囲の価格であれば、消費者は喜んでプレミアムを払う

◆ロウアーミドル市場を見据えたマーケティング戦略
・低価格業態にプラスアルファの要素を取り入れる
・「ステータス性」よりも「実用性」を重視
・ストック消費をフロー化する
・ITを活用する

”世間並みに”という総中流時代の固定観念を外して考えれば、誰でも自分に合った生活スタイルを選択していけるはず

社会の成長期にはフローに課税するのが当然の考え方で、増加するフローにともなって税収を増やし、さらなる成長に必要なインフラの整備と、やがてくる成熟社会への準備を進める必要があった。しかし成長期を終えて成熟期に入ると、どんな経済大国もフローが減り、それまでに蓄えた資産によってストック大国になっていく。この時期にフローへの課税に頼るのでは、成熟した社会を支えることは不可能だ

二一世紀は国よりも地方、地方よりも企業、企業よりも個人、が主導権を取る時代
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『ロウアーミドルの衝撃』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062129930
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■目次■
はじめに
序章 本質が見えない理由
第1章 日本の構造変化と「M字型社会」
第2章 ロウアーミドル時代の企業戦略
第3章 ロウアーミドルの意識改革
第4章 生活者大国への処方箋
第5章 本当の構造改革はこれだ
第6章 新しい繁栄の法則
まとめ
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