2005年12月28日

『経済学的思考のセンス』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121018249

本日の一冊は、労働経済学を専門とする著者の大竹文雄さんが、身近な経済格差・不平等を題材に、経済学的思考を養うための考え方を指南したものです。

サブタイトルには「お金がない人を助けるには」とありますが、述べられているのは、具体的な施策ではなく、あくまで問題を経済学的にどう考えられるか、という点です。

著者によると、経済学的思考とは、「社会におけるさまざまな現象を、人々のインセンティブを重視した意思決定メカニズムから考え直すこと」。

本書のなかで著者は、まさに人のインセンティブにフォーカスし、問題をどうとらえるか、どうしたら制度がうまく機能するのか、などという点についてコメントしています。

経済学的思考に慣れていない人が読むと、一見、へ理屈の塊ですが、厳密な議論をするためには、極めて重要な話だと思います。

論理的思考を身につけたい方、経済学の基本的な考え方を学びたい方に、ぜひおすすめしたい一冊です。
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■ 本日の赤ペンチェック
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「本当に貧しい人をどうやって見つけるのか」、「どのくらいの金額を貧しい人にあげればいいのか」という問題は、なかなか難しい問題

身長による賃金格差は、人種間賃金格差や男女間賃金格差に匹敵

アメリカ男性のマリッジ・プレミアムは大きく、さまざまな個人属性を揃えた上で、結婚している男性は、結婚していない男性よりも10パーセントから50パーセントも賃金が高い

政府をはじめとする公共部門や規制産業では、このような価格に対する人々の当然の行動を理解していないことが多い。これはもともと政府などが提供するサービスには、代替的なものが存在しなかったために、どのような価格を設定しても需要量はあまり変わらないという前提があったためであろう

死亡時期でさえも、経済的インセンティブによって変わってしまうという分析結果を示したスレムロッド教授たちの研究は、金銭的インセンティブ設計の重要さを示してくれている。しかし、実務的な制度設計においては、人々の価格、賃金、税に対する感応度がどの程度大きいのかという点が重要である

スポーツにおいては結果が予測できない場合に、観客動員や球団の利潤が最大になる

選手の年俸が高すぎるかどうかは、ある選手が球団から出ていった時、球団の収入の減少がその選手の年俸より大きいかどうかで判断できる

ダートマス大学のバーナード教授とカリフォルニア大学のビューズ教授は、オリンピックのメダル獲得数がどのような要因で決まるか計量経済学的に分析し、シドニー・オリンピックの前に、予測されるメダル獲得数を発表した。彼らの分析によれば、メダル数の獲得を決定する要因は、一人あたりGDP(国内総生産)と人口の両方

企業の情報公開が正しく行われていて、資本市場が正しく機能しているなら、その時点の年齢構成と真の意味の人件費は無関係

少年犯罪の発生率が、労働市場の逼迫度と関連をもつ

「経済学的思考のセンス」がある人とは、インセンティブの観点から社会を視る力と因果関係を見つけだす力をもっている人
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『経済学的思考のセンス』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121018249
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■目次■
プロローグ お金がない人を助けるには?
I イイ男は結婚しているのか?
II 賞金とプロゴルファーのやる気
III 年金未納は若者の逆襲である
IV 所得格差と再分配
エピローグ 所得が不平等なのは不幸なのか
あとがき
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