2022年7月21日

『人はなぜ戦争を選ぶのか』トゥキュディデス・著 ジョハンナ・ハニンク・編 太田雄一朗・訳 茂木誠・解説 vol.6043

【『戦史』に学ぶ。危機を考えるヒント】
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本日ご紹介する一冊は、最古の歴史書『戦史』のなかから、演説部分を抜粋し、解説を加えたもの。

※参考:『戦史』
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繁栄を極めた古代アテネが、なぜ無謀な戦争に向かい、ペロポネソス戦争で敗北するに至ったのか、その経緯がよくわかる記述で、戦争の危機に直面している現在のわれわれが読めば、いろいろと示唆が得られる内容です。

<新興国家が台頭し覇権国家の不安が増大すると両者は必ず軍事的に衝突する>

これは、「トゥキュディデスの罠」と呼ばれる法則ですが、近年アメリカでは、覇権国家スパルタと新興国家アテネをアメリカと中国になぞらえて米中衝突を避けるべく、「今こそ『戦史』に学ぼう」という声が高まっているそうです。(アメリカがスパルタとは限りませんが)

なぜ人は戦争に向かうのか、そしてどんな要因から戦況が不利になっていくのか、単純ではない、複合要因が見えてきます。

・なぜ中立の立場だけではダメなのか
・なぜ財産よりも国や自由を守るべきなのか
・民主主義の危険性はどこにあるのか

中立国だったメロス島は頼りにしていたスパルタの援護なしにアテネに滅ぼされ、成人男性は皆殺し、女性と子どもは奴隷として売り飛ばされましたが、なぜ中立なだけでは危ないのか、その理由がよくわかります。

巻末には、世界史に詳しい予備校講師で、歴史系YouTuberとしても知られる茂木誠氏の解説が付いており、こちらも勉強になると思います。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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新興国家が台頭し覇権国家の不安が増大すると両者は必ず軍事的に衝突する

トゥキュディデスでは紀元前431年にペロポネソス戦争が勃発した原因として、巷でその説を唱える者は皆無であるものの、最も真実に近いのは「アテネがあまりに強大になり、スパルタがそれを恐れたから」だとしている

たえず自らの力を増大させ、行使することを求めるのが人間や国家の本性

隣国が、対等な国家を相手に手続きを無視して要求を突き付けてくるとき、要求がなんであれ、その目的は相手の隷属化にほかならない

所有する土地や家屋のことは忘れ、海と都市を守ることだけに専念するのだ

幸福とは自由で、自由とは勇気なのだから、戦争の脅威を前に尻込みしてはならない

至高の犠牲とは、守るべきものがある者が、その幸福な生活を懸けて戦うことだ

卓越さに対して最高の報酬が約束されている都市には、最高の市民が集まるのだ

個人が繁栄していても、都市そのものが瓦解しようとしているのであれば、いずれは個人も道連れとなってしまうだろう。反対に、個人が窮状におちいっていても、国家そのものが繁栄しているのであれば、個人が浮上する機会はいくらでもある

多少の犠牲を払っても「自由」さえ担保できれば、失ったものは容易に取り戻すことができる。一方、相手に服従してしまえば、現在手にしているわずかなものまで失ってしまうだろう

仮に両者の運が同じだとすると、勇気の安定した基盤となるのは、知識の優越性から生まれる自信である

正義とは、対等な相手に求めるものである

国家が弱さを見せたとき、戦争は起こる(茂木氏)

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本来BBMは、ビジネス書を紹介するメルマガなので、政治色の強い本はあまり紹介しないポリシーですが、ビジネスパーソンといえど、今は有事に備える時代。

何が起こっても対応できるように、原理原則ぐらいは押さえておきたい、ということでご紹介しました。

ぜひ、読んでみてください。

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『人はなぜ戦争を選ぶのか』トゥキュディデス・著 ジョハンナ・ハニンク・編 太田雄一朗・訳 茂木誠・解説

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◆目次◆

序章 ペロポネソス戦争と『戦史』
第1章 戦争の正当化
第2章 国のために死ぬこと
第3章 戦争の責任
第4章 正義と実利
第5章 強者と弱者
第6章 リスクと楽観
日本語版解説 茂木誠
訳者あとがき
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