2022年2月17日

『完売画家』中島健太・著 vol.5941

【夢を叶えるためのビジネス視点】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484212234

本日ご紹介する一冊は、これまでに描いた700点の絵画がすべて完売の通称「完売画家」、中島健太さんによる一冊。

著者は、その活動が注目され、テレビ朝日「徹子の部屋」はじめ、数多くのテレビ番組に出演しています。

「食えない」と言われる絵描きの世界を変えようと奮闘する著者が、どんな仕組みで夢を叶えたのか、そのビジネス視点が勉強になる一冊です。

業界の仕組みをハックし、理詰め+情熱に従って写実絵画を手掛ける著者の、マーケティング目線が読ませてくれます。

もし、読者の夢が「食えない」と言われている業界、あるいは斜陽産業であれば、この視点は参考になるに違いありません。

プロならではのアートの見方も注目で、なぜフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が350年の時を経て愛されるのか、その理由を「眉毛」がないことに求める見方には驚かされました。

また、徹底したお客様(コレクター)目線も勉強になるところで、作品に長く接するコレクターが、どうすれば作品を長く愛してくれるのか(愛してもらえれば中古市場に出ない)、その戦略も勉強になりました。

「アート界の話でしょ」と、敬遠することなかれ。これは立派にビジネス書であり、ビジネス思考を身につけるのにピッタリの一冊です。

ヒット商品、ロングセラー商品を作りたい人にとっても、ヒントになること間違いなしです。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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当時、モデルをきちんと選んでいる作家は僕くらいだった

僕の認識では、いまの日本での号単価のピーク、つまり高額な絵の号単価は、10万円から20万円ぐらいの範囲にあります。20万円と考え、10号を年間50点描いていくと、20万円×10号×50点で1億円です。作家の取り分はだいたい3割ですから、1億円売れると、取り分は約3333万円です。つまり、3333万円が、いまの日本の業界における作家のひとつの限界点

ただでさえ、卒業後社会になじむストレスに耐えなければならず、その疲れを残したまま制作しなければならないのです。それならいっそのこと、大学1年生のときから奨学金を借り、それを貯金していけばいい

絵描きにとって大切な筆は、使っていると状態が常に変わります。絵がうまくなりたいのであれば、自分がいちばんいい状態だと思うものを使う(中略)「もったいない」という理由でいつまでも使い続けるのは、上達を阻むことになる

人間は怠惰な動物で、パレットに出した色しか使いたがりません。パレットに出すのは、色数も少なく、しかも少量。それを少しずつ使うため、絵がこじんまりしたものになってしまいます

自分の作品の価値を上げるには、どうすればいいのか? それは、「自分の作った作品がどうして価値があるのか」、そのストーリーづけを丁寧にやっていくことです

画家が見落としがちなことですが、多くの場合、作者が作品を描くためにかけた時間よりも、できあがったその作品を持つ人とその作品とが共有する時間のほうがはるかに長くなります。だから、その作品を所有し、見る人と作品の距離が深まることを意識します。女性像であれば、あまりにも笑っている絵やあまりにも泣いている絵よりも、どちらともいえない表情を描くことが多いです

ヨハネス・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」がなぜ350年の時を超えて、いまでも愛されるのか。それにはひとつ、明確な理由があります。あの少女像には、本来女性のメイクに欠かせない「眉毛」が描かれていません。女性の眉毛ほど、時代を反映するパーツはない

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著者が実際に描いた絵が冒頭に載っており、作品を見ながらそこに込められた戦略が学べて、ワクワクしました。

アーティストであれ、何であれ、好きなことでメシを食いたい人には、ぜひ読んでほしい一冊です。

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『完売画家』中島健太・著 CCCメディアハウス

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◆目次◆

第1章 職業「画家」
第2章 芸術の世界で生きる
第3章 画家の価値を高める
第4章 才能を持続させること、さらなる高みを目指すこと

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