2022年1月24日

『プロダクト・レッド・グロース』ウェス・ブッシュ・著 八木映子・訳 vol.5924

【プロダクトが自らをセールスする時代】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4799327844

本日ご紹介する一冊は、シリコンバレーで注目の、新しい成長戦略PLG(=プロダクト・レッド・グロース)を本格的に紹介した、初めての本。

プロダクト・レッド・グロース(=製品主導の成長)がなぜ今注目されているのか知りたい方は、監訳者の以下の言葉を読めば、直感的に理解できるでしょう。

<サブスク型サービスやアプリなど、試したい時にすぐに試せる環境に慣れてしまった私たちは、「いかに早く、プロダクトの価値を感じることができるか?」が当たり前になっている>

<ユーザーにフリクション(摩擦)を与えて、個人情報を取得する、商談に持ち込むという旧来の考え方は、こうしたユーザーマインドの変化に置き去りにされているといっても過言ではない>

<セールスがプロダクトを売る時代は終わり、プロダクトでプロダクトを売る時代へと一気にパラダイムシフトが起きた>

著者のウェス・ブッシュ氏は、プロダクト・レッド・インスティチュートの創業者・学長で、どのようにすれば旧来の営業手法から離れ、プロダクト・レッド・グロース・メソッドを使ってSaaSビジネスの成長エンジンに火をつけることができるかを教えている指導者であり、コンサルタントです。

もし、読者がオンライン上で完結するサブスクリプションモデルのビジネスを展開しているなら、本書は注目の一冊です。

どうやってプロダクトを改善するか、どうやって有効なバリューメトリクスを発見するか、どうやってアップセルするか、どうやってトライアル段階のユーザーを脱落せずに成約に導くかなどが書かれており、内容は詳細です。

なかでも注目なのは、有効なバリューメトリクスを発見する方法と、トライアルユーザーを脱落させないためのボウリングレーン・フレームワーク。(成約までの道のりをボウリングに例え、ガーターにならない(脇道にそれない)ためのサポートをする考え方です)

ウェルカムメッセージやアカウントをできるだけ早くセットアップできるよう支援するプロダクトツアー、進捗を示すプログレスバー、何をする必要があるのか示すエンプティステートなど、ユーザーサポートのためのツールの作り方や案内文の事例が詳細に書かれています。

理論的かつ体系的に書かれているのに、内容は実践的で細部にまで及んでおり、いわゆる「使える」一冊です。

読者がSaaSビジネスをやっていなくても、商品の改善や、購入率の改善、ウェブサイトの設計、カスタマーサクセスの実現に役立つ内容だと思います。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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今の時代、強いブランド力と社会的信用だけでは、消費者からの信頼を勝ち取ることはできない。購入してもらう前に、プロダクトを試せる権限を与える必要がある

多くのSaaSビジネスは、より高いプライシングを実現するために、機能の差別化に注力する。だが、それだとより高い解約率を招きかねない。キャンベル氏も忠告するように、バリューメトリクスを設定する方が、機能を差別化するより、75%低い解約率が実現できる。対価ベースのバリューメトリクスだと、さらに40%低い解約率を可能にする。

フリートライアルやフリーミアムモデルを体験してみようというユーザーのほとんどは、事前に料金ページを確認している

有料プランにアップグレードする必要性を感じないような無料プランはつくらない

プロダクト主導型ビジネスでは、次のマクロ・アウトプットをトラッキングする必要がある。
・サインアップ数
・有料会員へのアップグレード者数
・ARPU(顧客平均単価)
・顧客解約率
・ARR(年間経常収益)
・MRR(月間経常収益)

ユーザーを快く迎え入れたら、次は、アカウントをできるだけ早くセットアップできるよう支援しよう

プログレスバーは、現在地が出発地点からどれくらいに位置しているか、そして目的地まであとどれくらい残っているかを示したものだ

ある洗車場で、「X個買ったら1個無料」の類のロイヤリティパンチカードを使った洗車キャンペーンの有名な実験がある。ユーザーの半数には最初から穴が2つ開いているパンチカードを10枚渡し、残り半数には穴がまったく空いていないパンチカードを8枚渡して、後日、各グループの進捗を確認した。結果、いずれのグループも特典獲得に必要なパンチは同じであったにもかかわらず、前者のグループの方が後者のグループの倍近くの特典を得ていた

ダミーデータのかわりに、エンプティステートを表示しよう。これによって、セットアップに必要な初期のステップを、プロダクトツアーほど詳細な説明をせずに案内することができる

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業界用語や略語が満載で、もうちょっと読者フレンドリーな訳だと良かったのですが、中身は有用です。

「プロダクトでプロダクトを売る時代」の戦略、マーケティングのヒントが書かれた、注目の一冊です。

ぜひ、読んでみてください。

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『プロダクト・レッド・グロース』ウェス・ブッシュ・著
八木映子・訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン

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◆目次◆

はじめに
監訳によせて
PartI 戦略をデザインしよう
第1章 PLGの重要性が急速に増しているのはなぜ?
第2章 武器を選ぼう──フリートライアル、フリーミアム、デモ、どれが最適?
第3章 海(オーシャン)のコンディションを調べる
    ──あなたのビジネスはレッド・オーシャン? それともブルー・オーシャン?
第4章 オーディエンス──販売戦略はトップダウン型とボトムアップ型のどちらか?
第5章 タイム・トゥ・バリュー──いかに早く価値を示すことができるか?
第6章 MOATフレームワークでPLGモデルを選ぶ
PartII 自社ビジネスの基盤を築こう
第7章 プロダクト主導型ビジネスの基盤を築く
第8章 プロダクトの価値を理解する
第9章 プロダクトの価値を伝える
第10章 価値を提供する
第11章 プロダクト主導型ビジネスにおける最もよくある過ち
PartIII 成長エンジンに火をつけよう
第12章 最適化プロセスを開発する
第13章 ボウリングレーン・フレームワーク
第14章 ユーザーごとの平均収益(ARPU)を上げる
第15章 チャーンビーストをやっつける
第16章 真に成功している企業はなぜプロダクト主導型なのか?
御礼
用語集
参考文献

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