2021年10月20日

『人間愚痴大全』福田智弘・著 vol.5862

【あの偉人にも不遇の時代があった。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4796878602

本日ご紹介する一冊は、歴史的偉人の「愚痴」と、苦難のエピソードをまとめたユニークな大全。

最近、出版界では「大全」や「図鑑」が流行していますが、本書はそのなかでも個性的な一冊です。

著者の福田智弘さんは、歴史・文学関連を中心に執筆活動を行っている方で、本書に登場する人物も文学関係の人物が多く含まれています。

登場するのは、中原中也や石川啄木、ヘミングウェイ、芥川龍之介、樋口一葉、二葉亭四迷、夏目漱石、太宰治など。

政財界からは、渋沢栄一や上杉謙信、伊達政宗、リンカーン、カエサル、徳川慶喜などが登場します。

~20代の愚痴、30代の愚痴、40代の愚痴、50代の愚痴、60代~の愚痴と、世代ごとにまとめられているので、今の自分に合ったものを読むといいでしょう。

本書のオビにもあるように、他人の苦労話を読むと、なぜか「勇気が出てくる」もの。

「あの偉人にもこんなダメダメな時期があったんだ」と、妙な安心感とやる気が湧いてくる、不思議な一冊です。

右ページに偉人たちの「愚痴」、左ページにエピソードと教訓が書かれた見開き2ページのシンプルな構成になっており、読みやすいのが特徴です。

興味のあるところからパラパラめくってみても楽しめると思います。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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詩人・中原中也は、若い頃、同棲していた女性に逃げられたことがある。その女性、長谷川泰子は、ある日突然、中也との愛の巣を捨て別の男の家へと移り住んだのだ。その男とは、中也の友人であり、中也の詩のよき理解者でもあった小林秀雄である。当時小林は23歳、泰子は21歳、中也は18歳の年の暮れであった。

初恋が消えた後、友人にあてた手紙に「周囲は醜い 自己も醜い」と芥川は書いた。人となりではなく、戸籍上の問題で結婚に反対する家人は醜い。しかし、それに抗えない自分もまた醜い、と語ったのだ。(中略)淡い初恋を感じはじめた年に彼は処女作『老年』を、初恋が消えた年には名作『羅生門』を発表している。一皮むけた芥川は、第一創作集『羅生門』のあとがきに、こう記している。「自分は近来ますます自分らしい道を、自分らしく歩くことによってのみ、多少なりとも成長し得る事を感じている」

お金を借りるってことは、悲しみを借りるってことなんだね(ベンジャミン・フランクリン)

実際には、この療養期間は、永井にとって無駄なものではなかった。他にすることのなかった永井は、この時、『真書太閤記』『水滸伝』『西遊記』『三国志演義』『(山東)京伝傑作集』『東海道中膝栗毛』などの文芸作品から英文の書物に至るまで、さまざまなを読み漁った

制作の途中でも、ミケランジェロはなんとか口実をつけて仕事をやめようとした。一度カビが生えてしまい、絵が台無しになったことがある。(中略)結局、4年ほどかけて天井画は完成した。長い間、上を見続けていたので、しばらくは下のほうを見ても、ものがよく見えなかった、ともいっている。しかし、その出来栄えは、世界中の誰もが驚嘆するほどのものだった。これほどの大作を描くのには、愚痴の一つも必要だったのかもしれない

アレクサンドロスが世界を制覇した歳になったのに、自分は何もしていないじゃないか!(カエサル)

脚気がオリザニン(ビタミン)欠乏症だと確信を持った鈴木だったが、世間の目は冷たかった。鈴木が、農芸化学者で、医者ではなかったことが大きい。「糠(から抽出した成分)で脚気が癒るなら、小便を飲んでも癒る」と酷評した医学者もいたという

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偉人たちがどうやって貧困や屈辱に耐えたのか、どうやって不遇の時期を乗り越え、ブレイクスルーの瞬間を迎えたのか、じつに読み応えのある内容です。

人間、生きていれば不幸のひとつやふたつは必ず襲ってくるもの。

どん底にある時、あるいは日常に刺激が足りなくて、明日のエネルギーを仕込みたい時、力になってくれる一冊です。

ぜひ、読んでみてください。

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『人間愚痴大全』福田智弘・著 小学館集英社プロダクション

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◆目次◆

第1章 ~20代の愚痴
第2章 30代の愚痴
第3章 40代の愚痴
第4章 50代の愚痴
第5章 60代~の愚痴

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