2021年7月29日

『スタンフォード大学の共感の授業』 ジャミール・ザキ・著 vol.5806

【共感は磨けるか?】
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本日ご紹介する一冊は、スタンフォード大学の心理学准教授、ジャミール・ザキ氏による、「共感」の授業。

自身、両親の離婚を経験し、辛い幼少期を送ったという著者が、人間がいかにして困難を乗り越え、強くなれるか、他人に優しくなれるのかを示した、興味深い論考です。

共感力の約30%は遺伝で決定しているし、寛容な性格かどうかも、ほぼ60%が遺伝で決まるけれど、それでも人は大きく変わることができる。

本書には、共感力を巡る研究成果と、どうすれば共感力を伸ばせるか、ヒントが書かれています。

ビジネスパーソンにとって、とくに気をつけたいのは、<人はたとえ負の感情であっても、「使える」気持ちのほうへ傾くことがある>と説いた心理学者マヤ・タミルの研究。

<たとえば、敵対的な交渉の場に出るときには、自分を奮い立たせるために、怒りに満ちた歌をあえて聴く>などという行動を人間は取ってしまうわけで、それが自分や社会に与える負の影響は計り知れません。

他にも、共感を妨げるさまざまな落とし穴について書かれており、良い人生を送りたい人、他者に対する優しさや寛容さを保ちたい人は、読んでおくといいでしょう。

「分断」「不寛容」の時代だからこそ、読みたい一冊です。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックしてみます。

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時代が進み世界が発展するうちに、やさしさの行使は難しくなっていく。人類は2007年に決定的な一線を越えた。史上初めて、都市に住む人間の数が、郊外に住む人間の数よりも多くなったのだ

共感の回復は、国家を立て直すために絶対に欠かせないものだとオバマは主張した。哲学者のジェレミー・リフキンは、さらに殺伐とした言葉で、こう書いている。「われわれがグローバルな共感を抱けるようになれば、文明の崩壊は回避され、地球は救われるだろう。問題は『はたして間に合うのか』という点だ

自分が誰かに苦痛を与える側になっているとき、人の共感力は薄れていく

他人に痛みを負わせた本人が、自己防衛のために相手を非難したり、非人間的に扱ったりすることを、「道徳不活性化」(モラル・ディスエンゲージメント)という

政治的暴力や天災の被害者は、そうでない人と比べて、ホームレスや、高齢者や、恵まれない境遇にある子どもの支援活動に自主的に加わる確率がとびぬけて高い

自分の時間やお金が関係してくると、共感は負担になり、人はかたくなに共感を避ける

競争ではモチベーションも生産性も上がらない

「よそ者」の誰かを具体的に見知っていれば、人は相手に憎しみを抱きにくい

文学という「薬」をいくらか摂取するだけで、共感の力は育つ

ゼロ・トレランス方式は、戦士精神の教育バージョンだ。秩序維持を目的として作られた規範のはずなのに、結果的に憎悪感情を生み出している

生前のノーベルは大手の兵器製造会社を経営し、多数の爆発物の特許をとり、ダイナマイトも発明した。彼は1888年に兄リュドビクを亡くしている。伝えられている筋によると、このときアルフレッドが死んだという誤報が流れ、フランスの新聞が訃報を掲載した。記事の見出しはLe Marchand de la Mort Est Mort「死の商人、死す」だ。ノーベルは、死んだらこんな言われようをすると知ってショックを受け、ひそかに財産の大半──現在の金額で言えばおよそ2億5000万ドル──を遺贈する決断をしたという。こうしてノーベル賞が設立され、アルフレッド・ノーベルが後世に残す遺産(レガシー)は決定的に変わった

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土井も若い頃は共感力が欠如した人間でしたが、40歳を過ぎてから、他者へ共感することの大切さをしみじみ感じています(ある程度は変われたと思います)。

人間は、周りが豊かだったり幸せだったりすると、自分も満足する生き物。

余裕を失い、「優しさ」「寛容さ」が失われている今だからこそ、価値のある一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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『スタンフォード大学の共感の授業』
ジャミール・ザキ・著
上原裕美子・訳 ダイヤモンド社

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◆目次◆

日本の読者へ 「ともに」試練に立ち向かうために
プロローグ 共感とやさしさをめぐる探求の旅へ
第1章 共感は「本能」か
第2章 僕らは共感を「選択」している
第3章 敵に「接触」する
第4章 「物語」を摂取する
第5章 「共感疲れ」を回避する
第6章 共感は「流行」する
第7章 テクノロジーで「善意」の循環を
エピローグ 未来に心を寄せ、「共感」を選び取ろう

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