2021年3月8日

『経営の正解はすべて社員が知っている』 山室晋也・著 vol.5709

【これは必読。】
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本日ご紹介する一冊は、不人気球団と言われた千葉ロッテマリーンズを、「球団創立以来最多観客数」「創業以来初の単体黒字」に導いた、山室晋也前社長による、注目の経営書。

マリーンズ再生にあたり、どんな指標に着目したのか、何を改善したのか、どうやって社員のモチベーションを上げたのか、詳細が書かれた、良質な経営書です。

球団経営と言うと、つい「弱いから儲からない」と思ってしまいがちですが、現実はちょっと違う。

オビに「弱いのになぜ黒字?」と書かれていることからもわかるように、現実のマリーンズは弱くてもぐんぐん経営を改善し、ファンを増やして行きました。

では一体、何がその経営のポイントとなったのか?

明確な仮説と、的確に定められたKPI、そして社員や関係者、ファンを熱狂させていく仕組み…。

これは、ひさびさに良い経営書に出合いました。

著者は、みずほ銀行で関連会社の社長をやっていた頃、<もう一度、自分の実力で勝負したい。報酬が今より下がってもいい。火中の栗を拾うような大変な仕事でもいい。とにかく自分の実力で勝負できるエキサイティングな仕事がしたいんだ>とくすぶっていたようですが、そこに本当に<『火中の栗』をどうぞ>と紹介してくれる人が現れました。

<どうです? やりがいあるでしょう>と言われて、見せられたマリーンズの財務諸表は、ものの見事に真っ赤っ赤だったそうです。

そのエキサイティングな再生物語を本にしたのだから、これが面白くないわけがありません。

さっそく、本文の中から、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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メンバー一人ひとりにより快適に、よりやりがいを持って働いてもらえるように調整する。そのための第一歩が、全員へのヒアリングです

「仕事を離れた付き合い」に頼らない

「職場における、仕事を離れた付き合い」の場をリーダーが積極的につくると、無用な派閥をつくり出してしまう危険がある

「メンバーが面白がる仕事」をいかに増やせるか

どうしたら一人ひとりの「夢」を叶えられるかをリーダーが真摯に考え、実現できるようにお膳立てをすると、組織は大きく動き出します

縁の下の力持ちこそ、表彰で報いる。すると組織全体が一気に活性化します

「お疲れさま会」で感謝と敬意を伝える

95%の案件は「検討の価値あり」と考える

利害関係者はみな「お客さま」である

磯田さんといえば、「住友銀行中興の祖」とも呼ばれる、伝説の頭取です。就職活動で住友銀行の採用試験を受けに来た私にとっては雲の上のような方が、待合室にひょこっと現れ、私の緊張を和らげるために、気さくにいろいろな話をしてくださったのです。磯田さんの接し方からは、自行の採用試験を受けに来た学生に対する、心の底からの敬意を感じました

ファンが熱いのは素晴らしいことです。ただし球団運営においてよくなかったのは、「熱いファン」に甘え、新たなファンを獲得しようとしてこなかった点です

どのような選手が「愛される」のか。私は過去のプロ野球選手を分析し、2つの要素に集約されることに気づきました。「甲子園のスター」と「地元の星」です

平日は「未来のファン」を生み出す日

球場内の飲食店はシビアに「数字」で評価

「選手と会える、話せる」「地元でのイメージアップ」小さなことかもしれませんが、しかし明確な2つのメリットを提示することで、新たなスポンサーを獲得したり、スポンサー契約の継続を取り付けたりすることがしやすくなりました

「外部に頼まず、自分でやる」「今ある材料で、使えるものは使い倒す」

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優れた経営書に共通するのは、ドラマ性と実用性とのバランスだと思いますが、本書は、まさにその両方を兼ね備えています。

どうしてこんなに人のことを考える経営ができるのか? と不思議に思っていましたが、そこには、著者が慕い続ける、磯田氏の存在があったようです。

著者が、「住友銀行中興の祖」と呼ばれる磯田一郎氏に触れ、変わって行く様子は、ぜひ読んでみていただきたい。

共感力あるリーダーに、人は変われる。そう確信させてくれるはずです。

ドラマあり、心構えあり、実務のヒントあり…。3拍子揃った、経営書のお手本です。

ぜひ読んでみてください。

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『経営の正解はすべて社員が知っている』
山室晋也・著 ポプラ社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/459116800X

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◆目次◆

序 章 ダメ銀行員がなぜ球団社長になったのか
第1章 組織の「内情」を知る
第2章 組織を「導く」
第3章 全方位を「お客さま」と考える
第4章 「経営」の視点を持つ
第5章 数字を読み、利益を生み出す
第6章 「ビジネスモデル」以前に「人間」を磨く

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