2020年11月12日

『LIFE SPAN 老いなき世界』 デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント・著 梶山あゆみ・訳 vol.5637

【不老不死の可能性と社会の未来】
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本日ご紹介する一冊は、老化の原因と若返りの方法に関する研究で知られる、ハーバード大学医学大学院遺伝学教授、デビッド・A・シンクレア氏による注目の論考。

最先端科学とテクノロジーにより解明された、老化のメカニズムと、最新の健康法がまとめられた、世界的ベストセラーです。

著者が注目するのは、人間の最大寿命を伸ばすこと、そして健康寿命を伸ばすこと。

本書の最初の方で、著者はこんなことを述べています。

<平均寿命が上昇を続ける一方で、最大寿命のほうはそうなっていない。記録をひもとけば、100歳に達した人はいるし、それより何年か長く生きた人もいた。だが、110歳に届く人はごくわずかしかおらず、115歳を迎える人となると限りなくゼロに近い。地球にはこれまで1000億人以上が暮らしてきたが、120歳を超えたと表立って認められているのは過去に1人しかいない>

そう、平均寿命が改善したのは乳幼児のうちに命を落とす人が減ったから。

でも、人間が理論上生きられる最大の年齢まで人が健康に生きられるかというと、残念ながらまだそうではないのです。

本書を読めば、なぜ老化が進行するのか、どうすればそれを食い止められるのか、基本的なメカニズムが理解でき、老化に抗う方法論を知ることになるでしょう。

おそらく本書を読んだ後で、喫煙したいと思う人、肉をたらふく食べたことをSNSで投稿する人は、大幅に減るに違いありません。

自らの命を守るために、そして長寿実現によりやってくる社会の変化、ビジネスチャンスを感じ取るために、ぜひ読んでおきたい一冊です。

さっそく、本文の中から気になった部分を赤ペンチェックして行きましょう。

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健康なまま120歳まで生きられる時代へ

回路は「遺伝子A」から始まる。遺伝子Aはいわば監督者であり、環境の厳しいときにスイッチが入って細胞の分裂を停止させる役目をもつ。(中略)この回路にはもう1つ「遺伝子B」が関わっている。遺伝子Bからつくられるタンパク質は「抑制」の機能をもっている。何を抑制するかといえば、環境が好ましいときに遺伝子Aが働かないようにするのだ。つまり細胞が増殖できるようになる。いい換えれば、自分の子孫が生き延びる確率の高いときだけに、細胞が自らの複製をつくれるようにするのである

カークウッドの理論で行くと、なぜネズミは3年しか生きないのに、鳥のなかには100歳にまで達するものがいるのかがわかる。また、グリーンアノールというトカゲの一種は、今こうしているあいだにも寿命がさらに長くなるような進化を遂げつつあるのだが、その理由もこの理論で見事に説明できる。グリーンアノールは数十年前から日本の小笠原諸島にすみついていて、この島には天敵がいないのだ

自分のゲノム解析をしてもらったことがあるなら、既知のFOXO3変異体をもっているかどうかを確認してみるといい。たとえば、rs2764264という位置の塩基が「T」ではなく「C」になっている配列は、長寿との相関が高いと指摘されている

タバコの煙にはベンゾ[a]ピレンという化学物質が含まれている。これがDNAのグアニンに結合して二重らせんが2本とも切れ、遺伝子変異を引き起こす。それを修復するプロセスがさらにエピゲノムと代謝の変化をもたらすために、がん細胞が増殖する

厳しい食事制限をすると、生涯にわたる効果が得られる

頻繁に運動をする人ほど、テロメアが長かった

長寿遺伝子を働かせるには、快適とはいえない温度に身をさらすのも1つの有効な手段

ブドウにしろほかの植物にしろ、ストレスにさらされているものほどレスベラトロールを多量に生成する

パーソナル・バイオセンサーの時代へ

◆著者が実践していること ※一部紹介
・NMN1グラム、レスベラトロール1グラム、およびメトホルミン1グラムを毎朝摂取する
・タバコは吸わない。電子レンジにかけたプラスチックや、過度な紫外線や、レントゲンやCTスキャンを避けるようにしている
・日中と就寝時は、涼しい場所にいるようにする
・健康寿命を延ばすうえで最適の範囲内にBMIを保つことを目指している。私の場合はそれが23~25である

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「ナショナリズム的な主張は高齢者の心に響きやすい」「長生きをしているだけで、金持ちはもっと金持ちになっていくのである」など、長寿社会の悪影響も述べられていますが、基本論調は前向きで、人類が「老化」を克服したらどうなるか、明るい見通しを述べています。

現在、老化のメカニズムがどこまで解明されているのか、どうすれば克服できるのか、興味深い話がてんこ盛りで、500ページ弱の厚さにも関わらず、一気に読んでしまいました。

ぜひ読んでみてください。

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『LIFE SPAN 老いなき世界』
デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント・著
梶山あゆみ・訳 東洋経済新報社

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◆目次◆

はじめに いつまでも若々しくありたいという願い
第1部 私たちは何を知っているのか(過去)
第1章 老化の唯一の原因ーー原書のサバイバル回路
第2章 弾き方を忘れたピアニスト
第3章 万人を蝕む見えざる病気
第2部 私たちは何を学びつつあるのか(現在)
第4章 あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法
第5章 老化を治療する薬
第6章 若く健康な未来への躍進
第7章 医療におけるイノベーション
第3章 私たちはどこへ行くのか(未来)
第8章 未来の世界はこうなる
第9章 私たちが築くべき未来
おわりに 世界を変える勇気をもとう 

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