2020年10月9日

『あるものでまかなう生活』井出留美・著 vol.5614

【新たな経済のスタンダード】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532323606

本日ご紹介する一冊は、新たな経済のスタンダードとなり得る思想『あるものでまかなう生活』を紹介した、注目の一冊。

著者は、ケロッグの広報室長を経て、現在、食品ロス問題ジャーナリストとして活躍する井出留美さんです。

井出さんは、食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018を受賞した、今最も注目の社会活動家の一人です。

「あるものでまかなう」の「あるもの」とは、これまでは捨てていた食べ物や、眠らせていたモノのこと。

この「あるもの」を活用することで、私たちの生活に劇的な変化が訪れるかもしれない。そんな気にさせてくれる内容です。

著者は、本書の前半部分で、こう述べています。

<「あるものでまかなう」は、コロナ時代の新たなスタンダードとなる生き方です。それは、眠っていた古いものに新たな命を吹き込み、創意工夫を生み出し、暮らしを楽しむ要です>

経済合理性を追求し、すべてを専門家に任せ、アウトソースした結果、われわれの生活からは創意工夫が失われ、モノや資源を大切にする精神が蝕まれていきました。

その結果、労働が無価値あるいは邪悪なものとなり、働き手は疲弊し、消費者も生産者側の論理に巻き込まれ、まだ使えるモノを廃棄するようになりました。過度に専門化が進んだため、創意工夫で再
利用・再生することもできないままに、です。

しかし今、「エシカル消費」という言葉が話題になっているように、消費者の側には大きな心の変化が訪れています。

長く使うものは慎重に選ぶ、捨てるものはなるべく買わない、必要以上に買わない、環境負荷の高いものは買わない、などの変化です。

この変化に適応できない企業は今後、苦しい状況に陥るでしょう。

人々はエシカルじゃないものは買わなくなるからです。

この『あるものでまかなう生活』は、これからの生活と消費、さらには企業活動に求められる変化を、統計・実例とともに述べた一冊。

次なる時代の経済原理を見極めるために、ぜひ読んでおきたい内容です。

さっそく、本文の中から気になったポイントを赤ペンチェックして行きましょう。

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『サーキュラー・エコノミー』で挙げられた、企業ができる6つのこと
1.長持ちする製品の製造
2.リファービッシュ(中古品を新品のような状態に復元する)
3.引き取り/下取り/買い取りによる再販
4.アップグレード(新たな機能や特性を追加する)
5.リフィル(製品本体より先に消費される機能の置き換え)
6.修理

仮にペットボトル飲料のメーカーが、スーパーに「2030年12月15日」の賞味期限の製品を納入したとしましょう。翌日、同じスーパーに「2030年12月14日」の賞味期限のものを持っていくと、「昨日持ってきたものより1日古い」ために、納品を拒否されるのです

最大手のコンビニが長年唱えてきたのは「食品ロスより販売機会ロス(のほうが重要)」。適量つくって売ることを目指すと、欠品を起こし、せっかくの売り上げを失ってしまう(販売機会ロス)。だからたくさん用意して、余れば捨てたほうがいいという考え方

いつも講演で話すのが「食品ロス削減は働き方改革」ということです。つくった食べ物のうち、3分の1を捨ててしまうのなら、最初からつくらなければ、働く時間も資源もコストもその分、無駄にならなかったし、働く人だってラクなはずでした

ヨーロッパには『バイイング・フロム・アルチザン』という言葉がある。アルチザン(職人)からものを買え、ということ

三重県の水産業者、有限会社友栄水産は、春先に需要が高まる真鯛を扱っていましたが、飲食店が休業となり、1万2000匹が行き場を失うことに。そこで、同社の橋本純代表は、消費者とオンラインでつながり、会話をしながら魚をさばいてもらう「オンライン捌き教室」を企画しました。この取り組みが評判を呼び、個人客に向けてのインターネット販売で、4月には1日100匹ペースの注文が入った

歩いて行ける範囲で暮らす

多くの自治体では、生ごみ、つまり食品ごみがごみ全体の40%を占めます。ごみを減らすことは、イコール、食品ロスを減らすことでもあるのです

普段、私たちが使っている紙の90%以上は木が主原料(ワールドウォッチ研究所、2004年)。大量の紙の消費で木の生産が追いつかず、木が消失しています(中略)一方、バナナは新しい果実を育てるために古い茎を切りますが、切った茎は1年で再生し、新しいバナナが育ちます。つまり、木と比べて再生スピードが速いのです。しかも世界各地(125カ国)で栽培されています。私もこのことを知ってから、名刺で使う紙をバナナペーパーに変えました

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未来の消費を予言する本はたくさんありますが、本書は、エシカルな取り組みをしている小さな有名企業や個人の取り組みを紹介した点が秀逸。(土井の古民家オフィスも紹介されています)

さすがはジャーナリスト。取材が綿密で、好感が持てました。

コロナの影響で国内回帰が進んでいる今、新たな経済の方向性を見極めるヒントとして、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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『あるものでまかなう生活』井出留美・著 日本経済新聞出版

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532323606/

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B08KRXH3TY/

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◆目次◆

第1章 「あるのにつくる・売る・買う」のはなぜ?
第2章 これからは「あるものでまかなう」食
第3章 これからは「あるものでまかなう」暮らし
終 章 あるものでまかなう生き方・働き方

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