2020年4月7日

『ミミズの話』エイミィ・スチュワート・著 今西康子・訳 vol.5490

【教養としてのミミズ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4864100306

非常事態は、普段われわれを支えてくれていたものに気づくチャンス。

当たり前だと思っていたものがじつは当たり前ではないことに気づいた時、われわれは自らを支えてくれていた偉大な存在に気づくのです。

本日ご紹介する一冊は、われわれの地球・土壌を支えてくれている小さいけれど大きいな存在「ミミズ」の物語。

じつはあのダーウィンが生涯最後の研究テーマに選び、1881年に『ミミズと土』を発表した時、ミミズはちょっとした社会的ブームになりました。

※参考:『ミミズと土』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582760562/

以前、BBMでご紹介した『土の文明史』と併せて読むと、土を考えることがいかに人類にとって重要なことなのか、よくわかります。

※参考:『土の文明史』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4806713996/

本書は、庭仕事が好きでミミズLOVERでもある、「ニューヨーク・タイムズ」紙のライターが、ダーウィン以降のミミズ研究の成果を踏まえ、まとめたミミズ考。

さっそく、本書の中から気になったポイントを赤ペンチェックして行きましょう。

—————————-

わたしたちがふだんリンゴの樹だと思っている地上部分は、リンゴの樹全体からみると、かならずしも主要部分ではない

ダーウィンは彼を誹謗する輩について、「これこそ、絶えず繰り返し起こる変化の影響を蓄積し、分析する能力の欠如を示すものである。かつての地質学におけるように、また、最近では進化の原理におけるように、しばしば科学の進歩を遅らせてきたのはそうした能力の欠如なのだ」

また、ミミズの能力に関する彼の結論に異を唱えるフランス人科学者を、「彼は先入観から言っているだけで、観察から述べたのではなかったようだ」とあっさりはねのけている

ダーウィンもうすうす気づいていたことだが、土壌の表層10センチほどは、毎年ミミズの消化管を通過する。そうしたことから、ミミズには、ダーウィンが予想していた以上に、土壌にさまざまな変化を引き起こす力があると考えられるようになっている

ミミズは土壌の組成を変え、水分の吸収・保持能力を高め、栄養分や微生物を増やす。つまり、農耕に適した土地を用意してくれるのである

ダーウィンは自伝にこう綴っている。「私はたいていの人が見逃してしまうようなことにも目を留め、それを注意深く観察するという点ですぐれているように思う」

ミミズがたくさんいる土は、細菌にとってどのような意味をもつのだろうか。ある研究によると、ナイトクローラー1匹の腸管内には50種類もの細菌がすんでいるという。ナイトクローラーの消化管の粘液は、細菌のすばらしい食物源なのである。したがって、細菌によっては、ミミズの体内で繁殖して、糞に出てくるときには最初に口から入ったときよりもはるかに数が増えているものもある

ミミズには種子の好みがあることが観察されており、環境をうまく整えれば、その好みの植物の種子を伝搬する強力な媒介者になるのではないかとも考えられている

交接が完了するまでに数時間かかるが、その間、ミミズは周囲の環境にまったく無頓着になる。ダーウィンもこの点に注目して、「ミミズの性的欲望は光の恐怖をしばらく忘れさせるほど強いものである」と記している。彼はこれを知性の表れだと考えた。ある行動に注意を集中するあまり、それ以外のことに無関心になるという事実から、ダーウィンはミミズには心らしきものが存在するにちがいないと結論を下している

原生自然環境の保全に携わってきた人たちは、ずっと前から、このような場所に外来種を持ち込んではならないことを認識していました。生態系には、越えてはいけない一線が存在します

感染症を撃退するのに、からだに備わった免疫系の力ではなく、抗生剤に頼るようになると、抗生剤の効かない耐性菌が出現してしまい、その新たな菌株と闘うためにますます強力な新薬が必要となる

土壌はそれ自体が作物

ナイル川、インダス川、ユーフラテス川の流域は、ミミズの生息数が桁外れに多かった

肥沃な土壌は変化をもたらす強力な原動力になる

—————————-

もうちょっと社会視点、経済視点でまとめてくれていれば、と思うフシもありますが、ミミズの生態については、詳しくわかります。

個人的には、「土壌はそれ自体が作物」という言葉が刺さりました。

新型コロナウイルスの影響でわかったことは、われわれが利己主義的な行動を取ると、それが全体のシステムを破壊し、自分にも被害が及ぶということ。

このミミズの物語を読むことで、個人を支えてくれるシステム(生態系)に感謝すれば、自ずとこれからの生き方の指針やビジネスのトレンドが見つかるはずです。

ぜひチェックしてみてください。

———————————————–

『ミミズの話』エイミィ・スチュワート・著
今西康子・訳 飛鳥新社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4864100306/

———————————————–
◆目次◆

はじめに
第1章 ダーウィンのミミズ
第2章 謳われざるヒーロー
第3章 大地は動いた
第4章 大地の腸
第5章 目もなく耳もなく
第6章 今、地中にある危機
第7章 侵略者の顔
第8章 巨大ミミズを追いかけて
第9章 生きた農耕機具
第10章 文明の礎として
第11章 生ごみを黄金の土に
第12章 あなたが必要
第13章 高みへと昇るミミズ
おわりに
訳者あとがき

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー