2020年1月17日

『デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか』 西田宗千佳・著 vol.5436

【事例満載。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065179882

本日ご紹介する一冊は、話題のDX(デジタルトランスフォーメーション)を、最新の企業事例とともに解説した一冊。

「はじめに」で著者いわく、<過去と同じ経営判断やビジネスの手法、働き方をしていたのでは、決して新しい顧客=「スマホネイティブ」以後の世代には対応できない。デジタルネットワークを軸にした世界へと変化したのだから、ビジネスのあり方もまた、これにあわせて変わらねばならない>。

「デジタルトランスフォーメーション」とは、そんな時代のキーワードであり、企業にとっては、従来のシステムを刷新する必要性があるということです。

本書では、自らがデジタルトランスフォーメーションに成功したアドビと、アドビのクライアントである大企業の事例をベースに、企業がどうやってデジタルに対応すればいいのか、ポイントと勘所を示しています。

CMS(コンテンツマネジメントシステム)を導入することでコンテンツ総数も工数も減らすことに成功したJAL、「目標の数十分の一しか売り上げがなかった」ところからスタートし、顧客の新たな買物行動を促進し、併売に成功したロハコ、サブスクリプションモデルから、企業への提案までを手掛けているアドビ、新規入会を伸ばした三井住友カード…。

企業事例を読んでいると、自社の現在のマーケティングのどこに問題がありそうか、大体見当がつくと思います。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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JALの例でいえば、国内線を利用する乗客のうち、およそ65パーセントが公式ウェブサイトを経由して航空券を予約し、発券している。公式ウェブサイトをわかりやすく、使いやすいものにすることは、顧客満足度の向上という観点からも、顧客との接触機会を増加させる点においても、きわめて重要な意味をもつ。そのため、航空会社のウェブサイトの内容は、想像を絶する頻度で更新されている

CMSを導入することで、コンテンツをつくる側はウェブサイトの構造について意識する機会が減り、コンテンツの中身をつくることに注力できる

ニーズが高まっているのが、「多言語対応」コンテンツの充実だ。訪日客の増加にともない、JALを利用する海外顧客の人数もどんどん増えている

国内向けのコンテンツについても、課題が残っている部分がまだ存在する。ツアーなどの情報だ。これらの情報は、ホテルや旅行会社など、他企業と連携してコンテンツをつくる必要がある。CMSと連携し、自動化していけば効率は大幅に上がるが、現時点ではまだ、他企業とスムーズに連携するための最適化はできていない

岡本が経営層に世界観を伝えるために用いたのは、コンビニエンスストアを例にとったプレゼンテーション資料だった。コンビニの扱う商品点数はどんどん増えており、求められるスピードも増している。その状況に対応するにはどうすればいいか? コンビニの店内は商材ごとにレイアウトされ、棚が設置されている。棚に置かれた各商品が、JALのウェブサイトでいう「コンテンツ」であり、商品の入れ替えがコンテンツの制作にあたる。ときには棚のレイアウトを変え、陳列する商品の並び方を調節することもある。従来のJALは毎回、棚ごとコンテンツを準備していたようなものだった。不要な作業が多く、最適とはいいがたい

顧客体験価値を高めるための施策は、「コンテンツ」「データ」「デリバリー」の3つの軸に分けられる

「結局、個別検証でやっていくしかない、と思っています。現在のEコマースは、単純なコンバージョンレートが云々、という世界ではなくなってきていますから」(JAL岡本氏)

「扱っていないのに検索されている商品」に注目せよ

ロハコでは現在でも、平均4商品が同時に購入されており、ロハコをひんぱんに使う、ロイヤルティの高い顧客の場合では8~9点購入する例も多いという。こうした「合わせ買い」行動が、ロハコを使う人々の特徴だったのだ

「我々にとってサイトでの滞在時間を伸ばしていくことは、買い忘れを防止することに等しい」(ロハコ成松氏)

通販でこまめにものを買うと、配送もひんぱんになる。日々なにかを買ったとして、毎日それらを受け取ることができるだろうか?

デジタルマーケティングの世界においては、カスタマージャーニーを把握する際にもデータを用い、確証のあるかたちで進めていく

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後半はアドビの宣伝臭がプンプンして、とても読めたものではなかったのですが、事例は確かに面白いので、紹介しました。

JAL、アスクル、三井住友カード、アドビがどうやってデジタル化の波に対応し、機会をモノにしたのか、具体的なケースを知ることは、きっと自社のデジタルトランスフォーメーションのきっかけになると思います。

一方で、広義のデジタルトランスフォーメーションは、この内容だとカバーし切れていないはず。

ドラスティックな変化が起きる時には、予想外のところから敵が現れますから、本書をもってデジタルトランスフォーメーションを理解したつもりにはならない方がいいかもしれませんね。

ただ、顧客の「買い方」が変わってきている今、何をKPIとするのか、どうやって顧客の購買行動を観察・評価・活用すればいいのか、本書が教えてくれる点は多いと思います。

マーケティングの事例集として、ぜひチェックしてみてください。

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『デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか』
西田宗千佳・著 講談社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065179882/

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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B081VBBX5H/

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◆目次◆

第1章 「ビジネスの方向性」はデータが決める
    ──顧客は「なにを」「どう」求めているか
第2章 デジタルトランスフォーメーションとはなにか
    ──「なにを」「どう」デジタル化するか
第3章 「流通のデジタル化」が加速した経営改革
    ──「なにが」「どう」変わったのか
第4章 「顧客の望むこと」はすべて、データが教えてくれる
    ──「なにを」「どう」活用すべきなのか
第5章 デジタルトランスフォーメーションが生み出す「新しい価値」
    ──それはアナログなビジネスでも活かされる

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