2019年10月11日

『イノベーターズ2』ウォルター・アイザックソン・著 井口耕二・訳 vol.5375

【続編】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065147387

本日ご紹介する一冊は、アメリカで話題となった、ウォルター・アイザックソン『The Innovators』の待望の邦訳。

アイザックソンはあのスティーブ・ジョブズの公式本を手掛けた、当代一のノンフィクションの名手です。

※参考:『スティーブ・ジョブズ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062180731/

『The Innovators』は、そのアイザックソンが、20世紀のデジタル革命史をまとめた、超話題作。

本日ご紹介するのは、その続編です。

上巻は、詩人バイロンの娘として生まれ、数学と詩のはざまでコンピュータの夢を見た伯爵夫人エイダ・ラブレスのストーリーから始まり、コンピュータ、プログラミング、トランジスタ、マイクロチップ、ビデオゲーム、インターネットを作ったイノベーターたちを紹介しました。

この下巻では、「ホールアースカタログ」を作り、カウンターカルチャーとサイバーカルチャーの結びつきを促進したスチュアート・ブランド、マウスを発明したダグラス・エンゲルバート、パーソナルコンピュータの父アラン・ケイ、ビル・ゲイツとポール・アレン、世界初の表計算プログラム「ビジカルク」を考案したダン・ブリックリン、フリー思想を広めたリチャード・ストールマン、リーナス・トーバルズ、AOLの3人、ワールドワイドウェブ(WWW)を作ったティム・バーナーズ=リー、ブラウザ「モザイク」を作ったマーク・アンドリーセン、アップル創業者の2人、グーグルの2人…。

パーソナルコンピュータ、ソフトウェア、今日のインターネットを作ったイノベーターたちの話が展開され、最後には、未来の「イノベーターズ」がどこから生まれるのか、示唆しています。

さっそく、内容をチェックして行きましょう。

———————————————–

創刊号の1ページ目に、ブランドはこう書いている。「自分だけの個人的な力の世界が生まれようとしている──個人がみずからを教育する力、みずからのインスピレーションを発見する力、みずからの環境を形成する力、そして、興味を示してくれる人、だれとでも冒険的体験を共有する力の世界だ。このプロセスに資するツールを探し、世の中に普及させる──それがホールアースカタログの使命である」

ふと思い出したのが、高校のとき夢中になった機械的な器具、プラニメーターだ。図形の外周をなぞるとその面積が計算できる。この器具には、縦にひとつ横にひとつホイールがあり、それぞれの方向に移動した距離が得られる。「ふたつのホイールを思いついたら、残りはとても簡単だった。だから、学会を抜けてスケッチを描いた」そうエンゲルバートは回想している。机の上でデバイスを動かすと、ふたつのホイールがそれぞれの方向に回転して電圧が上下する。この電圧をコンピュータのスクリーンに送れば、カーソルを上下左右に動かすことができる

「未来を予言する最善の方法は、みずからそれを創り出すことだ」
(アラン・ケイ)

「ソフトウェアがハードウェアをしのぐ」これこそ、ゲイツとアレンがコンピュータ革命にもたらしたものの核心だと、アレンはのちに語っている

フォン・マイスターは極端な例だった。ノイスやゲイツ、ジョブズと違って会社を育てようとはせず、とにかく立ち上げて成り行きを見守る。失敗を恐れるのではなく、失敗から活力を得るタイプだ。彼のような人々がいたから、失敗を許すことがインターネット時代の特徴になっていったと言える

「創造的な場を作りたかった。みんながいっしょに遊べる砂場のような場所をね」(バーナーズ=リー)

そもそもウェブがめざしたもの、その設計の本質は、共有とコラボレーションの推進にあった

未来を手にするのは、コンピュータともっともうまくパートナーを組み、協力し合える人間

「最高のリーダーは、エンジニアリングとプロダクトデザインをだれよりもよく理解しているものです」(ラリー・ペイジ)

人間の創造性には、価値観、意志、審美眼、感情、個の意識、道徳観念といったものが欠かせない。いずれも、芸術と人文科学が我々に教えてくれるものだ

やがては、科学技術と芸術の相互作用がまったく新しい形の表現と新しい形態のメディアとして実を結ぶのだろう。そうしたイノベーションを生み出すのは、美とエンジニアリングを、人間性とテクノロジーを、そして詩とプロセッサーを結び付けることのできる人物だ。人文科学と自然科学の交差点でなにかをなし遂げられるクリエーター、両方の美に気づかせてくれる新鮮な驚きの感覚(センス・オブ・ワンダー)を忘れない自由人と言ってもいい

———————————————–

世阿弥が『風姿花伝』で述べたように、「面白い」には「珍しい」が必要。そういう意味では、いかにアイザックソンといえど、さんざん出版され、広く知られているこの時代のデジタル革命史をまとめるのは難しかったのかもしれません。

前半は、インターネットバブル期に出版された類書とそんなには変わらなかった、というのが正直な印象です。

ただ、この続編は後半からが面白い。

1、2巻通してイノベーションにおけるコラボレーションの必要性を訴えてきたアイザックソンは、2巻で未来のコラボレーション、つまり人工知能と人間のコラボレーションについて語っています。

そして最終的には、エイダ・ラブレスの後継者、つまり未来のイノベーションを主導する人物像と教育に言及するのです。

この第2巻は、未来のイノベーターを育てたい教師や親、組織にこそ読んで欲しい内容です。

ぜひ、チェックしてみてください。

———————————————–

『イノベーターズ2』ウォルター・アイザックソン・著
井口耕二・訳 講談社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065147387/

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07YKRLN6N/

———————————————–

◆目次◆

第8章 パーソナルコンピュータ
第9章 ソフトウェア
第10章 オンライン
第11章 ウェブ登場
第12章 エイダよ、永遠に

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー