2019年9月18日

『沢庵 不動智神妙録』池田諭・訳 Vol.5359

【歴史から学ぶ生き方の指針】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/481332391X

本日ご紹介する一冊は、剣豪・柳生但馬守の師であった沢庵の教えをまとめた一冊。

沢庵は、徳川幕府が仏法をその支配下におさめようとした時、その権力と真正面から対決し、仏法の自立性、自主性を守り抜こうとした人物(歴史上、紫衣事件と呼ばれている)。

将軍秀忠の死による大赦が行われ、社会に復帰した沢庵の人気はすごかったようで、「まるで凱旋将軍を迎えるようであった」そうです。

将軍家光の崇敬を受け、用意された地位を固辞し、その後も仏法を求めて放浪する生活を送った沢庵の思想とは何か。

生き方に迷っている現代人に、明確な生き方の指針を与えてくれる思想書です。

自分自身になり切る方法を説いた「不動智神妙録(ふどうちしんみょうろく)」、自己とは何かを究明しようとした「玲瓏集(れいろうしゅう)」、自分と他者との関係を説いた「太阿記(たいあき)」をまとめたもので、これ一冊で沢庵の深い思想を知ることができます。

義>生命>欲という、人生の優先順位を知るだけでも、生き方に迷いがなくなるのではないでしょうか。

1970年に発刊されて以来(当初は徳間書店刊)、ずっと沢庵の教えを伝えてきた、隠れたロングセラーです。

さっそく内容をチェックしてみましょう。

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千手観音だとて、手が千本おありになりますが、もし、弓を持っている一つの手に心がとらわれてしまえば、残りの九百九十九の手は、どれも役にはたちますまい。一つの所に心を止めないからこそ、千本の手が皆、役に立つのです

心の正しくない者が、主人の役に立ったという話は、昔から聞いたことがありません

人の生命ほど惜しんでも惜しみきれぬものはないでしょう。身分の高い者も、賤しい者も、長生きしなければ志を遂げることはできません。億万の財産を投げ捨てても、生き長らえなければなりません。ところが、その生命でさえも義のためには捨てなくてはならぬというのですから、義というものの重みは最大としなければなりません

◆五蘊(ごうん)
色:肉体そのもの
受:肉体が受け、感じる、善いか悪いか、正しいか正しくないか、悲しみか歓びか、苦か楽かなどの感覚
想:願望
行:受と想を自分自身で行うこと
識:悪を悪と知り、善を善と知り、苦を苦と知り、楽を楽と分ける意識

欲による意志を無視して、岩か木のようになっては、どんなこともできません。欲の力をかりて、無欲の義にあてはまることをすることこそ、道なのです

どの家に仕え、どんな主君に仕えても、そのたびに、これがわが主君だと思い、主君を大切に思って仕えるなら、たとえ仕える家は何軒かわっても、主君は初めから終りまで、一人なのと同じことです

春、種子を土に蒔くことを因というのです。植えたからといって、種子は雨、露などの手助けがなければ、芽生え、生長はできません。この、雨や露の助けを縁というのです。春蒔いた種子である因が、雨露の助けである縁によって成長し、秋に実ることを果というのです

舟があっても、風の助けがなければ、舟はやはり目的地に着けないのです。これを因縁和合といいます

自分の知らないことが、この世の中にどれほどたくさんあるでしょうか。知りもしないことだらけなのに、自分の知らないことは、みんなないことだといおうとします

刀を用いて人を殺さずとは、刀を使って人を殺しはしないのですけれども、誰でも、達人の体得している道理を前にしては、自然に身も心もすくんでしまって、死人のようになってしまうので、人を殺さねばならないことなどないのであります

太阿の名剣は誰にでもある

大用、現前すれば規則存せず。先に述べた別伝の法にかなう大用が目の前に現れてくれば、自由自在の働きができるため、規則などないと同じことになる

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現代語に訳した池田諭氏は、広島県生まれの方で、高校教諭、雑誌編集などを経て、文筆活動に入った人物。

本書の原稿は、氏が亡くなる直前にまとめた、いわば遺作です。

丁寧な仕事により、現代人が読んでも読みやすい内容に仕上がっています。

ぜひ読んでみてください。

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『沢庵 不動智神妙録』池田諭・訳 たちばな出版

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/481332391X/

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◆目次◆

沢庵の今日的意味
不動智神妙録
玲瓏集
太阿記

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