2019年4月4日

『誰も農業を知らない』有坪民雄・著 vol.5249

【農業改革の視点】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4562056134

日本再生のためには、各主要産業でイノベーションを起こすことが必須ですが、なかでも重要分野が、農業。

本日ご紹介する一冊は、船井総合研究所を経て、専業農家に転じたという異色の経歴の持ち主が、現場目線の農業改革を語った内容です。

現在、メディアで農業改革が語られる場合、「農業は手厚く保護すべき」派と「市場原理にまかせれば農業は強くなる」派に大きく分かれますが、著者によると、事はそんなに簡単ではありません。

「農業はあまりに多様で、農家や農学者でもその全貌はつかみきれない」のです。

本書のタイトル『誰も農業を知らない』は、農家ですら農業をすべて知っているわけではない、つまり誰も農業のすべてを知らない、という意味からつけられたそうです。

その名の通り、本書では、農業のそれぞれによって異なる事情、何がこれからチャンスと脅威につながるのか、現場目線で詳しく述べています。

読めば、なぜ経済評論家や素人(といっても知識人)が安直に農業を語ってはいけないのか、その理由がよくわかると思います。

もちろん、これから農業で起業したい方、投資したい方は、読んでおくといいでしょう。

投資対象となる企業の情報も、固有名詞入りで紹介されているので、じつに価値ある内容です。

さっそく、内容をチェックして行きましょう。

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近い将来の日本は、生産力不足のために供給が追いつかず、輸入を余儀なくされる農作物が増えてくると思われます

現在進行しつつある第二次農業機械革命には、ふたつの特徴があります。ひとつは自動運転。もうひとつは精密農業です

自動運転は、こうした壁を破ります。たとえばトラクターならひとりが三台のトラクターを引き連れていき、同時に三つの水田を耕すことが可能になります。ひとりでできる作業量が二倍、三倍になるのは間違いありません

収穫作業もロボットがやってくれる時代がすぐそこにやってきています。収穫作業に必要な技術の基本は三つ。農作物を見て、どこにどんな状態の作物があり、収穫すべきかどうかを判断する「マシンビジョン」。収穫物に手を伸ばし、作物を傷つけることなく取り上げ、収穫用のコンテナに入れる「エンドエフェクタ」や「アーム」の設計。そして正確に定められた通りにでこぼこ、ぬかるみのある農地を移動する「ビークルオートメーション」

精密農業に対応したトラクターなら、地面を耕すときに掘り起こした土の肥料分析を瞬時に行い、肥料成分が少ないなら多めに、多めなら少なめに肥料散布したり、肥料散布をそこだけ停止したりが可能

モンサント社がクライメートコーポレーション社を一一億ドルもの巨額なカネを出して買収した

アメリカのカルジーンという会社がここにビジネスチャンスを見出し、トマトの遺伝子組み換え作物を作りました

IoTなどによる農業振興は本当に地域振興につながるのでしょうか。いいえ、むしろ逆に作用するでしょう。(中略)コメ農家の大規模化を進めることは、イコール「農村の過疎化」を進めることになる

二〇一四年、大規模化に対する幻想を持つ人を完膚無きまで叩きのめした事件が発生します。米価の記録的下落です

なぜ無農薬栽培は難易度が高いのでしょうか。農薬以外による病害虫の駆除や除草が、素人が思う以上に効果がないからです

面積あたり売上高で考えると、日本の農家はアメリカよりも六・五倍ほど高い売り上げをあげている計算

農産物の輸入を自由化し、市場原理にまかせれば、日本の消費者は現在よりも安価にコメを買えるようになるのは事実でしょう。しかしその結果、大規模化しているコメの専業農家が退場して、新潟や秋田、そして北海道といったコメどころですら耕作放棄地が激増し、農村が荒廃することを農水省は避けたいのです

脱サラ就農はラーメン店をやるより何倍も有利

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専門的な内容を読みやすくかつ詳しくまとめているのは、さすが元コンサルタント。

今後の農業起業のチャンスは何なのか、テクノロジーが発達することで何が可能になるのか、どの企業に投資すると良いのか、貴重なヒントがたくさん書かれています。

農業に興味のない人でも、読むことをおすすめします。

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『誰も農業を知らない』有坪民雄・著 原書房

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4562056134/

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◆目次◆

第1章 第二次農業機械革命の時代
第2章 無力な農業論が目を曇らせる
第3章 農家も知らない農業の現実
第4章 農業敵視の構造を知る
第5章 新しい血──新規就農・企業参入・移民
第6章 二一世紀の農業プラン

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