2019年3月29日

『ビッグ・クエスチョン』スティーヴン・ホーキング・著 青木薫・訳 vol.5245

【故・ホーキング博士から、未来へのメッセージ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140817739

本日ご紹介する一冊は、2018年3月に惜しまれながら亡くなった、スティーヴン・ホーキング博士の遺稿を、遺族や研究仲間、スティーヴン・ホーキング財団がまとめて編集したもの。

ホーキング博士は、折あるごとに、その時々の「ビッグ・クエスチョン」について、人々から意見を求められていましたが、それに対する答えを、講演、インタビュー、エッセイという形でアーカイブしていたようです。

本書はそのアーカイブを使用して作ったもので、ホーキング博士が亡くなった時には未完成。

いわばサグラダ・ファミリアのような形で作られ、この度完成したということです。

難解な氏の書籍とは思えないほど、わかりやすくまとめられており、宇宙好きには物足りないかもしれませんが、一般の方が氏の思想に触れるには、良いきっかけになる本だと思います。

中身のメインは宇宙の話ですが、ところどころに、人類の未来へのメッセージが込められており、そこだけ読んでも楽しめると思います。

科学教育の大切さ、ビッグ・クエスチョンを持つことの大切さ、教師の大切さ、リーダーの大切さ…。

著者の言葉に触れると、今の日本の政治や教育に何が欠けているのか、よくわかります。

さっそく、ポイントをチェックして行きましょう。

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人はいつの時代も、ビッグ・クエスチョンに対する答えを求めてきた。私たちはどこから来たのだろうか? 宇宙はどのように始まったのだろうか? 宇宙には、どんな意味と設計が隠れているのだろうか? 宇宙には私たちのほかにも誰かいるのだろうか?

両親は私を、いったん興味を持ったことにはとことん食らいつき、父親と同じように科学が私たちに投げかける多くの問いを調べ、答えを出そうとする人間になるように育ててくれた

宇宙時代になって私たちが目を開かされたことのひとつは、宇宙スケールで見た人間の位置づけだ。宇宙から地球を見るとき、私たちはひとつの全体に見える。私たちはひとつに結ばれていて、個々ばらばらに存在しているのではないことを目の当たりにするのだ

私は、グローバルなコミュニティが直面する重要課題に対して、いますぐ行動を起こすように求める人たちの声に、自分の声を重ねたい。私がいなくなってからも、その行動が前進することを、そして権力を持つ人たちが、創造性と勇気とリーダーシップを示してくれることを願っている

余命の期待値がいったんゼロまで下がったことで、新たな一日一日は思いがけない贈りものとなり、そのとき手にしているものすべてがありがたく感じられるようになった。命あるかぎり、希望はあるものだ

人はみな、未来に向かってともに旅するタイムトラベラーだ。私たちが向かう未来を、誰もが行きたいと思うような未来にするために、力を合わせようではないか

紀元前三〇〇年頃に、アリスタルコスという哲学者が、天体が欠けて見える「食」という現象、とくに月食に興味を持った。彼は、月食はほんとうに神々によって引き起こされているのだろうかと疑問を持つだけの勇気があった

信仰を持つ人を怒らせたいわけではないけれど、科学は、神という創造者を持ち出すよりも説得力のある説明をすることができると私は考えている

人間に対して遺伝子工学を応用することを禁じる法律が、おそらくは通過することになるだろう。だが、たとえば記憶容量や病気への耐性、寿命といった特徴を改良したいという誘惑に抵抗できない人たちは、きっといるにちがいない。もしもそうして改良された超人類が出現すれば、超人類たちとそれに太刀打ちできない未改良の人間との関係が、大きな政治問題になるだろう。改良されていない人間は、おそらくは死に絶えるか、あるいは軽んじられる存在になるだろう。その一方で、自己設計により、どんどん速いペースで自らを改良する者たち同士のあいだで競争が起きるだろう

私たちの未来は、増大するテクノロジーの力と、それを利用する知恵との競争だ。知恵が確実に勝つようにしようではないか

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サイエンス書を訳させたらピカイチの青木薫さんの翻訳で、最後まで一気に読むことができました。

既に世界100万部超、40カ国で刊行決定といいますから、さすがはホーキング博士ですね。

教師やリーダー、親。これから科学教育を推進したいすべての人に、ぜひチェックしていただきたい内容です。

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『ビッグ・クエスチョン』スティーヴン・ホーキング・著
青木薫・訳 NHK出版

<Amazon.co.jpで購入する>
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◆目次◆

はじめに エディ・レッドメイン
なぜビッグ・クエスチョンを問うべきなのか?
1.神は存在するのか?
2.宇宙はどのように始まったのか?
3.宇宙には人間のほかにも知的生命が存在するのか?
4.未来を予言することはできるのか?
5.ブラックホールの内部には何があるのか?
6.タイムトラベルは可能なのか?
7.人間は地球で生きていくべきなのか?
8.宇宙に植民地を建設するべきなのか?
9.人工知能は人間より賢くなるのか?
10.より良い未来のために何ができるのか?
あとがき ルーシー・ホーキング
謝辞
解説 スティーヴン・ホーキングの思い出とともに キップ・S・ソーン
訳者あとがき

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