2018年12月12日

『破天荒フェニックス』田中修治・著 vol.5175

【これは傑作。】
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本日ご紹介する一冊は、メガネ業界の「ZARA」を目指し、世界中に11カ国260店舗を展開する「オンデーズ」再生の物語。

著者は、オンデーズ代表取締役社長であり、もともと年商20億円ながら14億円の負債を抱え、もはや風前の灯火だった同社を、個人資産を投げ売って救済した、田中修治氏です。

本書によると著者は、成功した経営者のご子息らしいですが、それにしてもこの大胆極まりない経営戦略には舌を巻きます。

ファイナンス担当の奥野氏と一緒に、何度も資金ショートの危機に晒されながら、次々と大胆な手を打っていく。

結果として、債務超過だった同社を、シンガポール、台湾で成功させ、財務の正常化を実現したのだから、見事としか言いようがありません。

ノンフィクション仕立ての本で、普通に読むだけでも感動できる作品ですが、実用面で見ても3つ、大きな学びが得られると思います。

1.事業を信じることの大切さ
2.『論語と算盤』を駆使し、大胆に事を進めることの大切さ
3.人間の心の機微を理解することの大切さ

ビジネスノンフィクションの花は何と言っても「起業」と「再生」ですが、本書は再生モノのツボを良く押さえた、優れた読み物だと思います。

さっそく、いくつかポイントをチェックしてみましょう。

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このお婆ちゃんとの出会いを通じて、僕はとても大切なことに気付かされた。(メガネを掛けないと、目は見えない。目が見えないということは、時に人からかけがえのない大切なものを奪ってしまうこともある。自分たちは視力という、人々の生活に欠かせない、とても重要なものを扱う仕事をしているのだ)

タクシーに揺られながら、流れ行くシンガポールの幻想的な夜景を眺めていると、亡くなった父親に言われた言葉が頭にふとよぎった。(男なら荒れる海を超えていけ。そして自分を試してみろ。広い大海原で思うがままに舵をとれ。迷子になればまた港に帰ってくればいい。若いうちにしかできないことをやらなきゃダメだ)

恐れを振り払って一歩を踏み出すことで、このハリボテの砦を本物の砦に変える。それしか自分たちに生き残る道はない。次の2店舗を続けて成功させることができれば、確実に「OWNDAYS」は次のステージへと駆け上がることができるはずだ。

「アフリカに『早く行きたいなら一人で行け。遠くへ行きたいならみんなで行け』という諺があります。『OWNDAYS』は遠くへ行けるポテンシャルを持った事業だと僕は強く感じています。僕は目先のお金云々より、とりあえず今は遠くへ行ける可能性に懸けたいと思っています。みなさんと一緒に『OWNDAYS』を世界的なブランドに育てていきたいと考えています。よろしくお願いします」海山は、代々続く建設会社の跡取りだ。何もわざわざ、その立場を投げ捨ててまで、債務超過で資金繰りに苦しむオンデーズの役員に参画するメリットなど、常識から見れば何もない。しかし、海山は自らオンデーズの経営陣に加わることを望んでいた。

このシンガポール4店舗目となるネックス店は、海山と溝口の宣言通り、綺麗な放物線を描いて場外へ消えていく程の特大ホームランとなった

「お金を産まない本社」にお金を掛けるのが間違いなのではなく、「お金を産めない本社」を作ってしまうことが問題の本質なのだ。

「まあいいよ。出店は進める。今ここで、この勢いは絶対に止めたくない。そもそも別に、中小企業の社長を安定的に続けたくてオンデーズの社長をやってるわけじゃないし、世界一を目指せないのなら、社長なんてやってる意味がない。だから成長のペースは絶対に止めない。まあいいさ。資金繰りが回らなければ、その時は、その時でまた考えれば」

「やっぱり百聞は一見に如かずだ。これは見に来ないと絶対に解らない。決算書なんかじゃ伝わりきらないオンデーズさんの持っている勢いと、とんでもない可能性が、改めてよく解りましたよ。なんとしてでも一日も早く銀行取引を正常化させてバックアップする必要がある。これを手掛けなきゃ私もバンカーとして生きている意味がない。日本に戻ったら、すぐにもう一度、強く本部に掛け合いますよ!」福丸部長はそう言うと奥野さんの手をガッチリと掴んだ。

船長と航海士が代わっただけでは、ボロボロの船は何も変わらない。
変われるものは唯一「乗組員」だけだった。

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個人的に、起業には3つの「後悔」があると思っています。それは、

1.起業しないことの後悔
2.起業したことによる失敗への後悔
3.成功しても、さらなる成長を求めなかったことによる後悔

の3つです。

どんなに金銭的にうまく行った人であっても、本書を読めば、「もっと自分にはできることがある」と奮い立たされること、うけあいです。

挑戦することの素晴らしさと感動を教えてくれる、じつに読み応えある一冊です。

ぜひ、読んでみてください。

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『破天荒フェニックス』田中修治・著 幻冬舎

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◆目次◆

第1話 トラックのハンドルを握るのは誰だ!?
第2話 新社長は救世主なるか?
第3話 目指すはメガネ界の「ZARA」
第4話 突きつけられた「死刑宣告」
第5話 全国店舗視察ツアー
第6話 スローガンに不満爆発
第7話 「利益は百難隠す」を信じて
第8話 絶対にコケられない新店舗
第9話 血みどろの買収劇
第10話 悪意は悪意をよぶ

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