2018年8月23日

『VRは脳をどう変えるか?』ジェレミー・ベイレンソン・著 vol.5100

【これからの最有望ビジネス】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163908846

先日訪れた「コンテンツ東京」で、VRを体験し、間違いなくこれは次の最有望ビジネスになる、と確信しました。

ベンチャー・キャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツの投資家、クリス・ディクソンもこう書いています。「新技術のデモを見て、今まさに未来を垣間見ているのだと興奮したことは人生で数えるほどしかない。アップルII、ネットスケープ、グーグル、iPhone、そして最後にオキュラス・リフトだ」

もちろん、これからの有望ビジネスにはAIやIoT、仮想通貨、医療などさまざまな分野がありますが、中小企業が活躍する余地があるかどうか、という視点で言ったら、VRはまさにフロンティアです。

プラットフォームは最終的に一つになるかもしれませんが、コンテンツは必ず必要になるわけで、調べれば調べるほど、エンターテインメントに限らず、あらゆるコンテンツの可能性があることがわかります。

人間の意思決定や消費を促すのは「臨場感」ですが、VRはそれをいとも簡単に生み出すことができる、とんでもないツールです。そういう意味では、販促の手段としても注目されるでしょう。

本日ご紹介する一冊『VRは脳をどう変えるか?』は、この強力なVRにどんな可能性が潜んでいるのか、FacebookやGoogleも教えを請うVR研究の第一人者が指南した一冊。

現実に行われたVR実験の結果や、そこで得られた知見を通し、VRでどんなことが可能なのか、どんなビジネスの可能性があるのか、具体的に示した点が興味深い。

スポーツ選手のトレーニング、リハビリ、病気の改善、PTSDの治療、環境への意識改革など、さまざまな分野でVRが使われ始めている、まさに最先端を紹介しており、じつに興味深い現状を知ることができました。

さっそく、内容のポイントをチェックしてみましょう。

———————————————–

今や彼は地上から三〇フィート(約九メートル)の高さにある、狭い足場の上に立っている。目の前には細い“板”があり、それが橋のように向こう側の足場へと繋がっている。板の長さは一五フィート(約四・五メートル)だ。ザッカーバーグはわずかに腰を落とし、知らず知らずのうちに片手で心臓を押さえた。「確かにこれは、かなり怖いねーー」

圧倒的なVR体験はときに心身に大きな負担を与えることもあり、最も優れた装置を使っていても二〇分程度が上限だ。それ以上続けると眼精疲労や頭痛を引き起こしかねない

VRの世界ではミスをしてもなんの損失も起きないため、OJTに大きな危険がともなうパイロットや外科医、兵士などをリスクなしで一人前に育てられる

交渉、スピーチ、大工、機械の修理、ダンス、スポーツ、楽器の演奏ーー。ほぼどんなスキルでも、VR訓練で向上させることができるのではないだろうか

実験の結果、没入型VRではない(テレビに映るグローバーとやりとりするだけの)環境と比べると、VR環境でグローバーと接した子供は衝動的行動を自分で抑える「抑制機能」が相当低下することが判明した

ザキの考えによれば、我々は共感のスイッチをオンにしたりオフにしたりして切り替えているという。なぜなら共感は自分の感情に負荷を与えかねないからだ。精神的なゆとりを消耗させるのである

数々の研究により、共感力を高める最も優れた方法の一つは「視点交換」であることが明らかになっている。これは世界を他人の視点から見る行為だ

仮想世界でのバーチャル消費は拡大していく

治療の効果は劇的だった。六回のVR治療の後、この若い女性患者に見られた抑うつ症の症状は八三%消え、PTSDの症状は九〇%治まったという

ある目標を達成するには、自分にそれができるという思い込みが不可欠である。前向きな視覚化が治療の大きな助けになることは医学の文献からも明らかだ

同期生が高い集団ほど生産性も高い

———————————————–

先日、ディズニーとピクサーのアニメーションのトップにもお会いしましたが、彼らのような優秀なクリエイターでさえ、まだまだ映画の延長線上にVRを見ているため、イノベーションの可能性は大きく残されています。

はっきり言って、これはチャンスですね。

本書の言葉を用いて言うなら、こういうことになるでしょう。

<マーシャル・マクルーハンの最も重要な洞察の一つをわかりやすく言い換えると、次のようになるーー新しいメディアを利用する際に人々が一番苦労するのは、旧式のメディアに引きずられた思考法から抜け出すことである>

本書を読めば、医療やセラピー、教育、消費、エンターテインメント、自己啓発、宗教など、あらゆる分野に広がるVRの可能性に気づき、今のビジネスを放り出してVRにチャレンジしたくなるに違いありません。

著者の専門が心理学というのも、本書を面白くしている理由の一つです。

ぜひ読んでみてください。

———————————————–

『VRは脳をどう変えるか?』ジェレミー・ベイレンソン・著 文藝春秋

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163908846/

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07G764QKM/

———————————————–

◆目次◆

序 章 なぜフェイスブックはVRに賭けたのか?
第1章 一流はバーチャル空間で練習する
第2章 その没入感は脳を変える
第3章 人類は初めて新たな身体を手に入れる
第4章 消費活動の中心は仮想世界へ
第5章 二〇〇〇人のPTSD患者を救ったVRソフト
第6章 医療の現場が注目する“痛みからの解放”
第7章 アバターは人間関係をいかに変えるか?
第8章 映画とゲームを融合した新世代のエンタテイメント
第9章 バーチャル教室で子供は学ぶ
第10章 優れたVRコンテンツの三条件
謝辞
ソースノート
訳者あとがき

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー