2018年2月15日

『ティール組織』フレデリック・ラルー・著 vol.4957

【次の時代の組織モデルは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862762263

本日ご紹介する一冊は、組織論の世界で今、話題の『ティール組織』を解説した、世界的ベストセラー。

原初出版後、12カ国以上に翻訳され、20万部を超えるベストセラーとなっている、注目の書の邦訳版です。

著者のフレデリック・ラルー氏は、マッキンゼーで10年以上にわたり組織変革プロジェクトに携わった後、エグゼクティブ・アドバイザー/コーチ/ファシリテーターとして独立した人物。

2年半に渡り、新しい組織モデルについて世界中の組織を調査し、まとめたのが本書『ティール組織』です。

組織の歴史を概観し、著者がたどり着いた『ティール組織』は、以下の特徴に基づいています。

1.自主経営(セルフ・マネジメント)
2.全体性(ホールネス)
3.存在目的

大組織にあっても、階層やコンセンサスに頼ることなく、仲間との関係性のなかで柔軟に行われるマネジメント、人間の精神的な全体性を受け止める職場(役割だけ期待されるのではなく)、存在目的が先に立つ組織…。

ティール組織についてかいつまんで知りたければ、NewsPicksに素晴らしい解説があるので、それを読むといいと思います。

※参考:10分で分かる、いま話題の未来組織「ティール組織」
https://newspicks.com/news/2821170?ref=education

しかしながら、本書の白眉は、この『ティール組織』を実践している企業の豊富な事例。

ビュートゾルフ、ESBZ、FAVI、ハイリゲンフェルト、ホラクラシー、RHD、サウンズ・トゥルー、サン・ハイドローリックスといった、優良企業ながら日本ではほとんど紹介されることのない企業の例が紹介されており、じつに興味深い。

「知っているのは、モーニング・スターとパタゴニアだけだな」などと思っていたら、モーニング・スターはアメリカにあるトマト専門の加工・運送業者でした(笑)。

本書では、これらの『ティール組織』が、どんなマネジメントをしているのか、どう採用、評価を行っているのか、興味深い事実が学べます。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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トップでも底辺でも、組織はエゴを追い求めるという終わりのない努力をする場になっており、人々は心の奥底に抱いている情熱を十分に発揮できないのだ

企業のトップだけでなく、社員のだれもが意味のある判断をできるようになるべきだ

進化型(ティール)では他人から認められること、成功、富、帰属意識は快楽的な体験であり、エゴを充足させる甘酸っぱい「わな」ととらえられる。そのため、それ以前の段階とは対照的に、優先順位が入れ替わる。良い人生を送るためには他人からの評価や成功、富、帰属意識を求めず、充実した人生を送るよう努める。他人から認められることや成功、富、愛は結果にすぎない

進化型組織のリーダーたちは、理想の職場のあり方として、家族とは別の比喩を使う。実は彼らの多くが、自分の組織を「生命体」や「生物」ととらえている。生命は、進化に向けてあらゆる知恵を働かせながら、底知れぬ美しい生態系を維持している。生態系は、全体性、複雑性、そして高い意識に向けて常に進化し続けている。自然は、自己組織化に向かうあらゆる細胞とあらゆる有機体の欲求につき動かされて、常にどこかで変化している。そこには、命令を出したりレバーを引いたりする中央からの指揮も統制もない

◆ビュートゾルフの自主経営チーム
看護師たちは、ケアサービスを提供するだけでなく、どの患者を何人受け持つかも自分たちで決める。新しい患者の受け入れ、ケアプランの作成、休暇や休日のスケジューリング、業務管理も、さらにはどこにオフィスを借りるのか、そこをどう飾るのかもチームで決める

仕事の満足度を証明する数字がある。従来の(達成型の)介護組織に比べ、ビュートゾルフでは病気を理由とする欠勤率が六〇%低く、離職率は三三%低い

FAVIでは、営業部門も解体された

今回の調査対象となった組織の大半は、何らかの形でAESが「助言プロセス」と呼んでいる方法を実践している。それは実に簡単な仕組みだ。原則として、組織内のだれかがどんな決定を下してもかまわない。ただしその前に、すべての関係者とその問題の専門家に助言を求めなければならないのだ

進化型組織では、役職と職務内容は社員がそれぞれ担っている役割の組み合わせを正しく表していない。固定的な名称では組織内で流動的に変化していく職務内容を説明しきれないからだ。社員たちは、仕事の負荷と自分の好みに従って役割を頻繁に取り換えたり取引したりする

同僚間の話し合いに基づくプロセスと自ら定める給与

CEOが謙虚さや信頼、勇気、思いやり、弱さをさらす、自分らしさといった美徳の手本を示すと、社員たちも同じリスクを取りやすくなる

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結局、この『ティール組織』も、必要なのは、進化型(ティール)の世界観を理解し、受け入れている経営トップと組織のオーナーということで、実践は簡単ではなさそうですが、カネや恐怖で人が動かない時代に、目指すべき組織像を示したという点で意義があります。

読めば、「本来会社ってこうあるべきだよな」と心温まる思いがするのではないでしょうか。

付録、解説を含め500ページを超える大著ですが、レイアウトがゆったりなのと、読ませる文章で、サクサク読み進められました。

ぜひ、読むことをおすすめします。

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『ティール組織』フレデリック・ラルー・著 英治出版

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◆目次◆

第I部 歴史と進化
第1章 変化するパラダイム──過去と現在の組織モデル
第2章 発達段階について
第3章 進化型(ティール)

第II部 進化型組織の構造、慣行、文化
第1章 三つの突破口(ブレイクスルー)と比喩(メタファー)
第2章 自主経営(セルフ・マネジメント)/組織構造
第3章 自主経営(セルフ・マネジメント)/プロセス
第4章 全体性(ホールネス)を取り戻すための努力/一般的な慣行
第5章 全体性(ホールネス)を取り戻すための努力/人事プロセス
第6章 存在目的に耳を傾ける
第7章 共通の文化特性

第III部 進化型(ティール)組織を創造する
第1章 必要条件
第2章 進化型(ティール)組織を立ち上げる
第3章 組織を変革する
第4章 成果
第5章 進化型(ティール)組織と進化型(ティール)社会

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