2017年12月21日

『プラチナタウン』楡周平・著 vol.4901

【これは必読。】
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ニューヨークと東京を1年、東京と山口を1年1カ月、二拠点間生活を約2年続け、たくさん旅もして、世界の中の日本、日本の中の都市と地方の格差について、いろいろと感じるようになりました。

「ちょっと地方再生にも関心が出てきましたよ」

そう告げた時、仙台の大物メンターに勧められたのが、本日ご紹介する『プラチナタウン』です。

じつはこの本、伊吹文明・元衆議院議長が石破茂・地方創生大臣に勧めた本らしく、オビにはこんな二人のやり取りが紹介されています。

「石破くん、君、楡周平さんの小説『プラチナタウン』を読んだかい?」
「読んでおりません」
「地方創生大臣なら読まなきゃあダメだよ」

たかが小説というなかれ。

堺屋太一さんの『団塊の世代』のように、小説が現実を予言し、それが的中した例は数多くあるのです。

読んでみて、この『プラチナタウン』もそうだと思わざるを得ませんでした。

主人公は、総合商社・四井商事の部長、山崎鉄郎。ひょんなことから出世コースを外された山崎が、故郷緑原町の町長を引き受けることから、物語は転がり始めます。

150億円もの負債を抱えた地方自治体の再生に、元商社マンが挑む──。

ワクワクしながら読み進めるうちに、この国の本質的な問題点、課題が浮かび上がってきます。

ビジネス、キャリア、生き方のヒントとしても示唆に富んだ内容で、気がついたら赤ペンだらけになっていました。

さっそく、気になったポイントをチェックしてみましょう。

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要は金が出て行くだけで、収益が上がらない公共事業に湯水のように金を使った。その結果残ったのが百五十億もの負債ってわけだ

総合商社が世界中に支社、あるいは駐在員事務所を置いているのは、単に新しい商売を拾うためばかりではない。生の情報をいち早く掴む。それが利益を上げることに直結しているからだ

もう少しすれば団塊の世代が定年を迎えんだろう。あの世代はいろいろな意味で従来の日本人のライフスタイルを変えてきたんだが、その最たるものは核家族化を日本社会に完全に定着させた最初の集団ってとこなんだな。つまり、生まれ育った故郷を離れ都会に職を求める傾向が顕著になったのもあの世代なら、独立した子供と親が離れて暮らすというライフスタイルが定着したのもあの世代なんだよ

山崎、受けろよその話。俺たちゃ世界を相手に切った張ったの商売をしてきたんだ。そこで培ったノウハウを生かせば、赤字に転じた地方の町の財政を建て直すくらいのプランは必ず思いつく。地べたを這いつくばって商売を拾ってくんのが商社マンだろ

町長の仕事は、駄目で元々、少しでもプラスに転じれば町の再生のきっかけとなり、ひいては住民の生活の安定に繋がる。考えてみれば、そちらの方がよほど夢があり、少しは人の役に立てる人生を過ごせるような気がするし、それが貧乏くじを引いたことになるのかどうかは、自分の能力次第というものだ

お前らには、根本的に欠如しているものがある。金を使うことに頭は回っても、金を稼ぐ苦しさ、事業をやることの怖さを知らない。金は黙っていて入ってくるもんじゃねえ。死に物狂いで、命がけで稼いでくるもんだ

これからの時代、言葉は悪いですけど、年寄りは金を生む貴重な財産になるんですよ

真の公共事業とは、一時のカンフル剤であってはならない。恒久的に利益を生み、雇用を確保するものでなければならない

同じ広さ、同じクオリティの物件に住むなら、安いに越したことはねえ。そう考える人間が圧倒的多数を占める時代が来ると思わねえか

名より実を取る方が賢い生き方だと分かっていても、世間体を気にするのが人間だ。乞うて行くより、乞われて行く方が、与えられるチャンスが多いと分かっていても、なかなかそうはできないのも人間である

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主人公が安定した大企業にしがみつくのをやめ、地方創生に挑むあたりが、今の時代を象徴していますが、その文脈で心に刺さったのが、以下の言葉です。

<要はどちらの道に自分の可能性、生き甲斐を見出せるかという問題なのだ>

この言葉は、迷っていた土井に道を示すとともに、今キャリアに悩んでいる多くの読者にとってもこれからの方向性を指し示す言葉になると確信しました。

この国の未来、自分の未来を考える上で、じつに役立つ内容でした。

これはぜひおすすめしたい一冊です。

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『プラチナタウン』楡周平・著 祥伝社

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◆目次◆

第一章
第二章
第三章
第四章
終章
解説 堀田力

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