2017年6月14日

『東芝解体 電機メーカーが消える日』大西康之・著 vol.4711

【日本の電機はどうなる?】
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本日の一冊は、『稲盛和夫最後の闘い』『ファースト・ペンギン』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』『ロケット・ササキ』などの話題書を著書に持つ、ジャーナリスト大西康之氏による電機メーカーの取材モノ。

日本の電機メーカーの歴史、利権構造とそれがなぜ崩れたのか、マクロの分析を加えつつ、各電機メーカーの「今」と「これから」を分析しています。

詳細に取り上げられているのは、東芝、NEC、シャープ、ソニー、パナソニック、日立製作所、三菱電機、富士通の8社。

それぞれ業績悪化に至った原因や内部のゴタゴタ、関係者の証言まで、よく調べて書かれています。

オビ裏に<本書は名著『失敗の本質』の総合電機版である>と書かれていますが、まさに言い得て妙。

大戦に敗れ、経済発展を遂げたはずの日本は、ここでもまた過ちを犯してしまったのです。

各メーカーが今後、どこに向かうのか、著者が集めた証拠をもとに私見を述べており、投資家にとっては良いヒントになると思います。

さっそく、ポイントをチェックして行きましょう。

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なぜ日本の電機大手は、半導体や家電や携帯電話でトップの座から転がり落ちてしまったのだろうか。一言で言えば、それらの事業が各社にとって、絶対に負けられない「本業」ではなかったからである

電電ファミリーと電力ファミリー。戦後の日本の電機産業を支えてきた、この二つの産業ピラミッドが瓦解したことが、「電機全滅」の最大の原因

サムスンは日本勢不在の新興国のテレビ市場を着々と攻略していった。「地域専門家制度」で世界の60カ国700都市に社員を送り込み、1年間かけて各地の文化やトレンド、ニーズの理解と人脈の構築をさせた

永守とテリー──共通の危機感を抱く二人の創業者が、シャープという企業を触媒に手を組もうとしているのだとしたら……。仮に手を組んだとして、二人はどこに向かうのだろう(中略)現時点で、もっとも可能性が高いのは電気自動車(EV)ではないか

テレビやパソコンといった、かつての主力事業を分社化したソニーは、これまでとまったく違う企業に変貌しようとしている。「商品を売ったら終わり」のメーカーから、利用者へのサービスを通じて継続的に収益をあげる「リカーリングビジネス」を主軸に据えようとしているのだ

消費者目線に立つ野中の下で三洋電機は次々とヒット商品を生み出していく。エネループの次に当たったのは洗濯物をオゾンで洗う洗濯機。生米からパンが焼けるホームベーカリーの「ゴパン」は小麦アレルギーの子供を抱える主婦の支持を集めた

持続可能な社会を考えた時、「安価無尽蔵」を掲げる水道哲学は時代遅れと言わざるを得ない。「環境の会社」に変貌するためにも、松下電器は三洋電機を飲み込む必要があった。しかし松下電器には「我々が本家、三洋は分家」という強烈なプライドがあるから、幸之助の水道哲学を捨てて「シンク・ガイアに乗り換えました」とは口が裂けても言えない。そこで松下電器は、飲み込んだ三洋電機の痕跡を執拗なまでに消そうとした

三菱電機の強さを一言で言い表すとこうなる。構造改革とは、「勝てない事業から撤退し、勝てる分野にヒト・モノ・カネを集中すること」だ。当たり前の経営だが、三菱電機以外の電機大手はどこも、その「当たり前」ができなかった

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書き口は極めてジャーナリスティックであり、また投資家目線の議論だと思いますが、経営者目線で見ても「他山の石」となる内容で、身が引き締まる思いがしました。

「GoodはGreatの敵である」と言いますが、ひょっとしたら、
「Goodはdisasterの友」なのかもしれません。

今後の日本の電機メーカーの業績をうらなう上で、ぜひチェックしておきたい一冊です。

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『東芝解体 電機メーカーが消える日』大西康之・著 講談社

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◆目次◆

序章 日本の電機が負け続ける「本当の理由」
1.東芝 「電力ファミリーの正妻」は解体へ
2.NEC 「電電ファミリーの長兄」も墜落寸前
3.シャープ 台湾・ホンハイ傘下で再浮上
4.ソニー 平井改革の正念場
5.パナソニック 立ちすくむ巨人
6.日立製作所 エリート野武士集団の死角
7.三菱電機 実は構造改革の優等生?
8.富士通 コンピューターの雄も今は昔

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