2017年5月21日

『マンションは日本人を幸せにするか』榊淳司・著 vol.4687

【買ってはいけないマンションとは?】
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本日ご紹介する一冊は、住宅ジャーナリストとして30年のキャリアを誇る著者が、日本のマンションの課題を論じた一冊。

人口減少、空き家問題と、この国の不動産の未来を懸念する論調はいたるところで目にしますが、本書もまたそのうちのひとつ。

これから買っていいマンション、買ってはいけないマンションという実用的な視点と、そもそもマンションがわれわれ日本人に与えた影響は何かという社会的な視点、両方が入った、読み応えのある論考です。

著者は、本書の25ページで、マンションが日本人の暮らしに与えた影響をこうまとめています。

マンションは、日本人を都会に住まわせた。
マンションは、日本人にマイホームを持たせた。
マンションは、日本人の核家族化を進めた。
マンションは、日本人を少子化に導いた。
マンションは、日本人の資産となり、負債となった。
マンションは、日本人に区分所有という概念を植え付けた
マンションは、日本人に管理組合という強制加入組織を作らせた。
マンションは、日本人に高気密・高断熱な住まいを提供した。
マンションは、日本人にエアコン使用を定着させた。
マンションは、日本人に高層生活を定着させた。

その影響には、良いものも悪いものもあるでしょうが、従来のシステムが行き詰まっている以上、これらを再考する余地は十分にありそうです。

これから住まいはどうあるべきか、何がマンションの問題なのか、何に気を付ければいいのか、ヒントが満載の一冊です。

さっそく、内容をチェックして行きましょう。

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約七〇〇年も前から、日本人にとって住まいづくりは「夏向き」が基本。冬の寒さにはひたすら耐えるしかなかった

イギリスでは、売買される住宅の約八パーセントが中古。アメリカでも約九割。(中略)それに比べて、日本では八割以上が新築

マンションの耐用年数について、一〇年くらい前までは「三〇年から四〇年」と語られていたように思う。今は「五〇年から一〇〇年以上」といわれることが多くなっている。日本人の意識の中にあるマンションの寿命は、確実に延びているのだ

街が輝き続けるには、一本筋が通ったコンセプトや建築家の思想が必要だ、と考えるのは早計だ。そんなものを最初に設定しても、そのうち時代に取り残されて陳腐化する。現に、そういう街はいくつもある。必要なのは、何十年経過しようと人々が住みたくなる魅力である

もし、かつての日本人たちが好んで大家族暮らしをしていたのなら、マンションの大量供給と同時に社会現象ともいうべき核家族化が進行することはなかったはずだ。冷徹に見ると、マンションという住形態を発明する前の日本社会には、住宅が圧倒的に不足していたのだ。そして、核家族化は同時に少子化へとつながっていく。その理由は、核家族がマンションで暮らす場合、小さな子どもの面倒は必ず母親が見なければならなくなったからである

結論からいえば、理事長になれば何でもできる。それが今の区分所有法だ。悪意を持った理事長が現れれば、分譲マンションの管理組合はたちまち私物化される

中長期的に見ても中国人が区分所有権を持つマンションは増え続けるはずだ

郊外の新築マンションは一〇年で半額に

長谷工プロジェクトに限らず、郊外で大規模な新築分譲マンションを建設するというビジネスモデルも、すでに時代の要請に合致していない

民法では、利益相反関係にある両者の代理人になることは「双方代理」として禁止されている。不動産仲介業者による両手仲介は、限りなく双方代理に近い行為である(中略)両手仲介を認めると「囲い込み」行為が行われやすく、売主の利益が損なわれる

賃料はバブル化しない

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本書の一部に、「夕刊フジ」内の著者の連載「本当は教えたくないマンション業界の秘密」をもとに加筆修正した部分があるようですが、基本的には新規で書き下ろしたもののようです。

これからマンション購入を考えている人、売却を考えている人、住まい方を見直そうと思っている人は、ぜひチェックしてみてください。

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『マンションは日本人を幸せにするか』榊淳司・著 集英社

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◆目次◆

第一章 人生のドラマは、いつだって自分が中心だ
第二章 「挑み」をやめた瞬間から老人になる
第三章 人生は不純なものとの闘いだ
第四章 人間は樹に登りそこなった
第五章 創造すること、それは人間の本能的な衝動だ
第六章 ぼくは抵抗する。その決意はますます固い

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