2017年4月22日

『POWERS OF TWO 二人で一人の天才』 ジョシュア・ウルフ・シェンク・著 矢羽野薫・訳 vol.4658

【歴史を作った「二人」たちの物語】
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歴史的偉業は、決まって「二人」で成し遂げられることが多い。

本書はその事実に着目し、「二人」で偉業を成し遂げるための原則を、キューレーター、エッセイストの著者、ジョシュア・ウルフ・シェンクがまとめた一冊です。

ビートルズのジョン・レノンとポール・マッカートニー、アップルのスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアック、放射線の研究で知られるマリーとピエールのキュリー夫妻、作家のC・S・ルイスとJ・R・R・トールキン、ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーなど、有名な「二人」のドラマと事例をもとに、「二人」の関係を発展させていくポイントを論じています。

「邂逅」「融合」「弁証」「距離」「絶頂」「中断」という、ペアが辿るプロセスを各章で詳細に論じており、仕事のパートナーシップはもちろん、あらゆる人間関係を考える基礎になりそうです。

心理学分野を中心に、学術研究の成果も適宜織り込んでおり、パートナーの存在がいかにして創造性を高めるか、その真実が垣間見えた気がしました。

扱っている題材が歴史上の大人物のものであるため、面白くないわけがない。

さっそく、その気になるポイントをチェックしてみましょう。

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2人組は創造をもたらす基本単位だ。社会学者のマイケル・ファレルは、フランスの印象派や精神分析学の基礎を築いた人々など、さまざまな創造的サークルを研究した。そして、グループは共同体意識や目的意識をつくりだし、聴衆がいるという意識を育むが、本当に重要な成果は2人組から生まれることに注目した

自分の人生に不可欠なパートナーと出会い、個人的な関心と社会的な結びつきをつなげる2つめの方法は、社会学者のマイケル・ファレルの言う「磁石の場」に行くことだ。そこには関心や熱意を共有する人々が引き寄せられる

類似点は人間関係のバランスを保ち、相違点は2人を前進させる。全米経済研究所(NBER)はあるレポートで、ベンチャーキャピタリストがパートナーを選ぶ2つの理由に注目した。ひとつは能力。もうひとつは、民族的なバックグラウンドや同じ職場で働いた経験があるなどの類似点だ。その結果、能力が似ていることは投資のパフォーマンスを向上させるが、後者の類似点は「投資が成功する確率を著しく下げる」ことがわかった

多くの偉大なペアは、最初は互いにあまり印象がよくない

人々が交わす大量の書き言葉と話し言葉の分析から、親しい関係ほど、機能語の種類や頻度、文法的な構造が似ることがわかっている

クリエイティブ・ペアは自分たちだけの集団をつくり、互いに放りだされることはないとわかっているから、そのような社会を持たない人々よりはるかに大きなリスクに挑む

ペアの結びつきを象徴する最も強力な言葉は、最も単純でもある。すなわち、「私たち」だ。距離が縮まるにつれて、人称代名詞は単数形が減って複数形が増える

ハリウッドの経験則では、コメディの脚本やプロデュースを手がけるペアには「構成担当」と「ジョーク担当」が必要だ。同じような対比は、古代の陰陽の思想にも重なる。陰の特性は維持、内在、永続であり、収縮して内側に向かい、一体感や同化を表す。対する陽は発生、発散であり、膨張して外側に向かい、分離を表す

夢想家と実務家が出会ったとき、そこに創造性が生まれる

うまく機能しているペアは決まって、良好な関係のカギは、相手に十分な空間を与えることだと言う

「創造のカギは、アイデアを生み出す過程と、評価と詳細化の過程を切り離すことだ」と、心理学者のグレッグ・フィーストは言う

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400ページ近い大著ですが、それがまったく気にならない面白さ。

どんな大きな組織でも基本単位が二人である、という話は、マネジメントの新しい視点として注目されるかもしれません。

日本ではあまり取り上げられることのない天才たちの事例も入っており、教養としても興味深い内容です。

ぜひ読んでみてください。

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『POWERS OF TWO 二人で一人の天才』
ジョシュア・ウルフ・シェンク・著 矢羽野薫・訳 英治出版

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◆目次◆

イントロダクション 1+1=無限
第1部 邂逅
第2部 融合
第3部 弁証
第4部 距離
第5部 絶頂
第6部 中断
エピローグ バートン・フィンク、スタンダード・ホテルにて
謝辞
訳者あとがき
参考文献
原注
人物索引

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