2017年4月23日

『カプフェレ教授のラグジュアリー論』ジャン=ノエル・カプフェレ・著 長沢伸也・監訳 早稲田大学大学院商学研究科長沢研究室・訳 vol.4659

【ラグジュアリービジネスの本格論考】
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ニューヨーク、パリ、ミラノ、シンガポール、東京、上海…。

いまや、世界のどの都市に行っても、ラグジュアリーブランドのショップを見つけることができるようになりました。

中国富裕層の台頭により、ラグジュアリービジネスは成長の一途を辿り、世界中の都市で活況を呈していますが、一方で、問題も抱えています。

生産移転とそれに伴うノウハウ流出の問題、都市の賃料高騰による資金難の問題、インターネット販売によるブランド価値低下の問題、商品ラインナップの拡張によるブランドの希薄化のリスクなど、見れば見るほど、先行きが心配になります。

ちなみに最近オープンした「GINZA SIX」には、フランクミュラーのテーブルウェアに加え、パティスリーまでがありました。

本日ご紹介する一冊は、こうしたブランドの諸問題に、ラグジュアリーブランド研究の第一人者であるジャン=ノエル・カプフェレ氏が言及した一冊。

実名入りであらゆるラグジュアリーブランドが登場し、どこがどううまく行っているのか、どこが問題を抱えているのか、それはどう解決可能なのか、詳しく論じています。

ブランドビジネスの現状と問題を知るために読んでもよし、ブランドビジネスへの投資のヒントにするもよし。

なかなかに読み応えのある一冊です。

さっそく、内容のエッセンスを見て行きましょう。

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ラグジュアリー産業には、他にない特徴がある。それは、成長が問題を引き起こす唯一の産業であるという点である

トップモデルに頼ることはラグジュアリーブランドの弱さの標

いまや、象徴的な力は稀少性ではなく、演出された質的稀少性により創り出される

調査会社のユーロモニター[Euromonitor](2012年)によると、人口の63%が1日1ドル以下で生活するナイジェリアが、フランスに次いで世界で最もシャンパン消費量の成長率が高い国

芸術がそうしたように、ラグジュアリーは価格と機能の相関を失わせなければならない。ハンドバッグは鞄のままであるが、芸術作品として、その価格は完全に機能とは独立していなければならない

生産拠点を移転することは、それまではその国独自のものだったノウハウが流出することを意味し、その結果、付加価値の梃子の破壊につながる。これは偽造品は言うまでもなく、未来の競争を激化させる方法でもある

上昇し続ける賃料と、店舗へ人々を呼び寄せる必要に対しては、巧妙な解決方法があるーーポップアップストア[pop-up stores]である

消費者は模範的ラグジュアリーブランドを使用し、それらの入門価格を確認する

今までに製造されたポルシェ[Porsche]の90%は、いまだに運転され続けている;ルイ・ヴィトンは購入時期にかかわらず、すべての純正のルイ・ヴィトン製品にアフターサービス[after-salesservices]を提供している。フェラーリにも同じことがいえる;マラネッロ[Maranello,訳注:フェラーリ本社所在地]の整備士は製造年にかかわらず、どんな古いフェラーリでも整備をする。これがラグジュアリーに大きな購入後の市場が存在する理由である

すでに、それぞれのラグジュアリーブランドに特定の位置づけやノウハウの類型を結び付けている西洋の顧客とは違い、中国人顧客はブランドを、あらゆる事業や人間関係に欠かせない基本的な贈り物の儀式に名声を加える名前であると認知している。これが、ラグジュアリーブランドへの欲求が中国で生まれた以上、多くの製品ラインでそれを活用することが重要となる理由である

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最近、ビジネス視点からアートに急速に興味を持ってきましたが、どうもこの「アート化」の傾向は、ラグジュアリービジネスでも同じようです。

更新し続けることで利益を生む「ファッション」的ビジネスと、変わらないことで価値を生む「ラグジュアリー」ビジネス。

これらが今後、どのような方向に進むのか、消費者は何をどんな理由で選ぶのか、マーケティング的視点から見てじつに興味深い論考と感じました。

学者の書いた書籍特有のとっつきにくさはありますが、読みやすくはあるので、問題にはならないでしょう。

ぜひ読んでみていただきたい一冊です。

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『カプフェレ教授のラグジュアリー論』ジャン=ノエル・カプフェレ・著
長沢伸也・監訳 早稲田大学大学院商学研究科長沢研究室・訳 同友館

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◆目次◆

第1部 ラグジュアリーはどのように変化しているのか?
第1章 ラグジュアリーの夢を持続させる:挑戦と洞察
第2章 豊富な稀少性:ラグジュアリー成長の鍵
第3章 ラグジュアリーにおける芸術化:職人から芸術家へ
第2部 具体的な問題と課題
第4章 経済危機後のラグジュアリー
    :ブランドロゴは目立たせるべきか?それともなくすべきか?
第5章 なぜラグジュアリーは生産の国外移転をすべきではないのか
    :増え続ける傾向への批判
第6章 インターネットとラグジュアリーの関係
    :導入不足か?不適応か?
第7章 ラグジュアリーに最低価格はあるか
    :ラグジュアリー価格に対する消費者心理の探索的研究
第8章 輝くものすべてがエコではないとは限らない
    :持続可能なラグジュアリーの挑戦
第3部 ラグジュアリーブランドの成長の事業的側面
第9章 すべてのラグジュアリーブランドが同じことをしているわけではない
    :ラグジュアリーブランドの異なるビジネスモデル
第10章 LVMHとブルガリの合意
    :ラグジュアリー市場のどのような変化が一族会社を売却に導くのか
第11章 ラグジュアリーグループの中でラグジュアリーブランドを発展させる
    :希薄化を伴わない相乗作用とは

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