2017年2月27日

『サピエンス全史(上)』ユヴァル・ノア・ハラリ・著 柴田裕之・訳 vol.4604

【今日から2日間紹介】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/430922671X

本日から2日間、話題の書『サピエンス全史(上)(下)』を紹介
していこうと思います。

NHK「クローズアップ現代」で特集されて以来、大ベストセラーとなっている同書。オビには、「ホモ・サピエンスだけがなぜ生き残り、繁栄できたのか?」と、名著『銃・病原菌・鉄』を意識したコピーが書かれています。

※参考:『銃・病原菌・鉄』
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『サピエンス全史』とは、何とも大それたタイトルですが、中身は、名前に負けていません。

なぜわれわれが現在のような文明を築くに至ったのか、社会秩序や行動規範、信念、心がどこから生まれたのか、そのすべてが根本から解き明かされています。

ホモ・サピエンスが直立歩行することにより、子どもが小さく産まれ、それゆえに社会的絆を必要としたこと、火を手なずけることにより、腸が短くなり、脳が大きくなったこと、「認知革命」により、虚構を生み出し、より多くの集団を束ねることができるようになったこと…。

人間が芸能人のスキャンダルに夢中になる理由、宗教や国家やお金が力を持った理由、われわれが今時代の変化に戸惑っている理由などが、この一冊でスッキリ説明されています。

なかでも興味深かったのは、著者が<農業革命は、史上最大の詐欺だった>と述べている点。

なぜなら、富の不平等も、栄養失調も、感染症も、すべて農業革命の結果、起こったものだから。そして、農業革命に伴って起きた人口爆発により、われわれはもう以前の生活には引き返せなくなったのです。

問題を解決しようと思うなら、今よりも大きな視点を手に入れること。

そういう意味で本書は「買い」の一冊です。

さっそく、内容をチェックして行きましょう!

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私たちはつい最近までサバンナの負け組の一員だったため、自分の位置についての恐れと不安でいっぱいで、そのためなおさら残忍で危険な存在となっている。多数の死傷者を出す戦争から生態系の大惨事に至るまで、歴史上の多くの災難は、このあまりに性急な飛躍の産物なのだ

チンパンジーが一日五時間も生の食べ物を噛んでいるのに対して、調理した食物を食べる人間は、たった一時間あれば十分だった。調理をするようになったおかげで、人類は前よりも多くの種類の食物を食べたり、食事にかける時間を減らしたりでき、小さな歯と短い腸で事足りるようになった。調理が始まったことと、人類の腸が短くなったり、脳が大きくなったことの間には直接のつながりがあったと考える学者もいる

火の力は、人体の形状や構造、強さによって制限されてはいなかった。たった一人の女性でも、火打ち石か火起こし棒があれば、わずか数時間のうちに森をそっくり焼き払うことが可能だった

誰が信頼できるかについての確かな情報があれば、小さな集団は大きな集団へと拡張でき、サピエンスは、より緊密でより精緻な種類の協力関係を築き上げられた

ホモ・サピエンスはどうやってこの重大な限界を乗り越え、何万もの住民から成る都市や、何億もの民を支配する帝国を最終的に築いたのだろう? その秘密はおそらく、虚構の登場にある。膨大な数の見知らぬ人どうしも、共通の神話を信じることによって、首尾良く協力できるのだ

農業や工業が始まると、人々は生き延びるためにしだいに他者の技能に頼れるようになり、「愚か者のニッチ」が新たに開けた。凡庸な人も、水の運搬人や製造ラインの労働者として働いて生き延び、凡庸な遺伝子を次の世代に伝えることができたのだ

人類は農業革命によって、手に入る食糧の総量をたしかに増やすことはできたが、食糧の増加は、より良い食生活や、より長い余暇には結びつかなかった。むしろ、人口爆発と飽食のエリート層の誕生につながった

歴史の数少ない鉄則の一つに、贅沢品は必需品となり、新たな義務を生じさせる、というものがある

こうして没収された食糧の余剰が、政治や戦争、芸術、哲学の原動力となった。余剰食糧のおかげで宮殿や砦、記念碑や神殿が建った

記録を粘土板に刻みつけるだけでは、効率的で正確で便利なデータ処理が保証されるわけではないことは明らかだ。そうした処理には、目録のような整理の方法や、コピー機のような複写の方法、コンピューターのアルゴリズムのような、迅速で正確な検索の方法、そしてこれらのツールの使い方を知っている、杓子定規の文献管理責任者が必要とされる

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先日、メキシコシティに行った際、「メキシコ国立人類学博物館」でアステカ文明の展示を見たので、本書の主張を、より実感を持って理解することができました。
http://www.mna.inah.gob.mx

脳が大きいだけなら、ホモ・サピエンス以外にもいたわけですし、優れている優れていないというだけで覇権が決まるなら、アステカ文明は今も続いていたような気がします。

「なぜ、ホモ・サピエンスだけが繁栄したのか?」

本書には、まさにこの答えが書かれているのです。

下巻の目次を見る限り、おそらく面白いのは上巻だと思いますが、明日も引き続き、ご紹介して行こうと思います。

ぜひ、お楽しみに。

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『サピエンス全史(上)』ユヴァル・ノア・ハラリ・著
柴田裕之・訳 河出書房新社

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◆目次◆

第1部 認知革命
第1章 唯一生き延びた人類種
第2章 虚構が協力を可能にした
第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
第4章 史上最も危険な種
第2部 農業革命
第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
第6章 神話による社会の拡大
第7章 書記体系の発明
第8章 想像上のヒエラルキーと差別
第3部 人類の統一
第9章 統一へ向かう世界
第10章 最強の征服者、貨幣
第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン

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