2017年1月20日

『書く力』池上彰、竹内政明・著 vol.4566

【読売新聞「編集手帳」竹内政明氏と池上彰氏の夢の対談】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/402273700X

本のタイトルの中には、「著者が実力者でなければ絶対に売れない」ものが存在します。

たとえば、宅急便の祖、小倉昌男さんの『経営学』。

これがもし土井英司『経営学』であれば、売れるはずがありません。

同様に、稲盛和夫さんの『生き方』。

これも、土井英司『生き方』では売れません。

なぜなら、タイトルが王道であればあるほど、シンプルであればあるほど、「書き手は誰か」が強力に問われるからです。

本日ご紹介する本のタイトルは、ズバリ『書く力』。

書き手は、ジャーナリスト池上彰さんと、読売新聞「編集手帳」の著者、竹内政明さんです。

あの池上彰さんをして<読売新聞の一面を下から読ませる男>と言わしめるほどの文章の名手、竹内政明さん。

そのコラム「編集手帳」は、土井も熱烈なファンの一人です。

その竹内さんと池上さんの文章術対談が、面白くないわけがない。

読者がもし、少しでも文章を書く仕事に携わっているなら、今すぐ買って読んでいただきたい、読み応えある内容です。

書き出しでグッと掴み、まさかの結論に持ち込む。誰もが身に付けたい技術ですが、本書ではその技術が書き手本人の言葉で解説されています。

実際の「編集手帳」の文章をベースに解説しているので、単なる原則論で終わることなく、理解が深まることと思います。

さっそく、気になるポイントを見て行きましょう。

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「正しいことを言うときは少しひかえめにするほうがいい 正しいことを言うときは相手を傷つけやすいものだと気付いているほうがいい」(吉野弘)

竹内さんのコラムを拝読していると、「え、この話はどこに行くんだろう?」と思わせておいて、「なるほど、そこにたどり着きましたか」とストンと落ちる文章展開が多いですね(池上)

生半可な知識しか持ち合わせていないテーマでは、いくら「構成」に工夫を凝らしても、面白く仕上がるはずがない。テーマと自分をつなぐ「ブリッジ」が必ずあるはずです。まずはそれを見つけます(竹内)

小学生の頃に読んだときは、単純に「自分の国の言葉が失われるなんて、とても悲しいことだ」と思っていたんです。ただ、大人になって、歴史の勉強をしてからあらためて読んでみると、印象が変わったんです。というのも、実はドーデが作品の舞台にしたアルザス・ロレーヌ地方というのは、もともとドイツ語圏だったんですね。それをフランスが占領して、フランス語の授業を押し付けていたわけです。だから、「フランス語の授業はこれで最後だ」ということを悲しい話とするのは、あくまでフランス側の視点に過ぎないということなんです。これを知ったときには、あの小学校時代の感動はなんだったのかと愕然としました。こういう話は、歴史の解説をするときの「部品」になるんです(池上)

「すごく悪いことをした犯人の弁護士になったら、自分はどうするか」という思考実験をすることがあります。やってみるとわかるのですが、中途半端な悪人ではなくて、狂信者集団の“尊師”のようなとんでもない人物のほうが、ためになる。むずかしい弁護ほど、やりがいがあるでしょう。情状酌量の余地など無いところを、「いや、彼にもこういう事情があったんじゃないか」とあれこれ想像してみるわけです。これを続けていると、だんだん物事の捉え方に奥行きが出てくるようになる(竹内)

「おしぼり式」は短編小説の手法ですが、コラムやエッセーでも有効です。メインストーリーを書き終えたところで、ほんのすこしだけ蛇足を入れる。それが余韻を生んで、これまで書いてきた話が読者の心にいっそう沁みるようになる(竹内)

「表現で驚かすな。事実で驚かせ」と昔言われたような気もするけれど、淡々とファクトを綴るだけで、そのファクトがずしんと読者に響くのが本当はいいんでしょうね(竹内)

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お二人がどんな文章をお手本にし、普段どんなことを考えてどんなことをネタにストックしているのか。

秘密がどんどん明かされていく、じつに楽しい読み物です。

「書き出し」と「締めくくり」をつなぐ竹内さんの技法、池上さんが実践しているという「おしぼり式」の技術など、興味深いテクニックがいくつも紹介されていました。

ビジネスをしていると、ちょっとしたエッセイやコラムを書く機会があると思いますが、本書はそんな時に役立つ一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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『書く力』池上彰、竹内政明・著 朝日新聞出版

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◆目次◆

第一章 構成の秘密──「ブリッジ」の作り方
第二章 本当に伝わる「表現」とは
第三章 名文でリズムを学ぶ
第四章 悪文退治

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